白夜城ブログ

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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

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背徳の王の番外編再録です。

1

 廊下を歩いていたら、姉と仲の良い執事に呼び止められた。確かロバスとかいう悪魔だ。私のご主人様で命の恩人のウル様が、悪魔なんてエロエロなことしか考えてないから、二人きりになっちゃいけませんって言っていたのを思い出して、人のいる場所へと逃げる。
「こらこら、なぜ声をかけただけで血相変えて逃げるんですか。私は変質者とは違いますよ」
「ウル様が」
「リファ、ウル様の冗談をすべて真に受けちゃいけませんよ。小さな子供じゃないんですから。
 この屋敷内に関しては、君を襲う不届き者はいないから安心しなさい」
「でも、ウル様は……」
「ウル様に死ねと言われるようなことはしませんよ。死ねと言われれば死ななければならなくなりますからね。君とは違い、こちらは絶対服従の身です」
 彼はとてもハンサムな顔を、心がとろけそうな甘い笑みを浮かべる。
 こういう男が胡散臭いのだと、姉が言っていた。言うからには、きっと好みの顔なのだろう。でも悪魔だ。人間の私達とは、違う存在。
「あの、どんなご用ですか? 用があるから呼び止めたんですよね?」
 この屋敷の住人達は、人の姿をしていても人でない場合もあり、変わり者が多く他人にはあまり話しかけない。自分は自分、他人は他人。関心があるのはウル様のことだけという徹底ぶり。私もウル様大好きだからその一人なのだろう。だから私は他のヒトの事はあまりよく知らないが、彼のことだけは少し知っている。彼は悪魔のくせに普通に執事らしいこともしている。文句を言いながら他人の世話をして、胡散臭いがとても面倒見も良い。気になり始めたら徹底的に関わるタイプだと、姉が言っていた。この前は銀食器のくすみが気になり、一日中磨いていたらしい。
 つまり本性はエロエロな悪魔でも、普段はそれを忘れているぐらいものすごくこの生活にとけ込んでいる……のかな?
「ちょっとお願いがあるんですよ。なに、難しい事じゃありません」
 彼はニコニコと笑いながら言う。笑顔を見ていると、警戒心が少し薄れて何だろうと思った。たらしって、やっぱりすごいんだ。
「今日は天気が良いでしょう。ぜひウル様を誘って散歩にでも出かけて下さい」
「はぁ……」
 散歩ならよくする。屋敷からはあまり出ないけど。ウル様は命を狙われてるんだって。ウル様が殺されるはずないけど、面倒くさいから外出は控えてる。
「で、汗をかいてきて下さい」
「はぁ……?」
 ウル様、そういうのあんまり好きじゃなさそうな気がするのだけど……。
 悩んでいると、廊下の角からお姉ちゃんが姿を現してこっちに近づいてくるのが見えた。
「で、お風呂の準備をしておきますから、ぜひごいっっ!?」
 ロバスさんは側頭部を殴られて壁にもたれかかる。その横をウル様のステッキを持ち、柄の少しとがったところを命中させたばかりの姉がすり抜けた。
「な……なぜステッキを」
 ロバスさんは当たり所が悪くて血が滲んでいる側頭部を押さえて言う。悪魔の血も赤いのだ。青いんだと思っていたからびっくりした。
「ウル様にロバスさんの頭を、これでフルスイングしてきなさいとのご命令を受けたんです」
「ウル様……いつの間にか予知能力でも身につけられたのでしょうか?」
「私に聞かないでください」
 そういう生物がいてもおかしくはない。いつも飄々と危ない道は避けているから。ウル様は頭がいいから、竜などという力の強い魔物も、身内を探ったりする特殊能力型の魔物もバランスよく持っている。だからそれに予知できる魔物が加わってもおかしくない。
 配下の質は主の質だと、ウル様はよく言っている。配下のバランスが悪ければ、主のバランスも悪いのだ。
 力だけに頼らないのがとってもウル様らしい。
「ロバスさん。何を考えてるのか知りませんが、どうしてうちの子とウル様とお風呂に入らなきゃならなんですか」
「お二人はまだ日が浅いから気にならないんでしょうが、私達はもう何年も気になり続けてるんですよ」
「何をです」
「ウル様の性別ですよ。縦に伸びただけで、小さなころとほとんど変わっていません。もう待てど暮らせどどっちつかずで、皆痺れを切らしてしまいそうなんですよ。ごつくなるとか、声が低くなるとか、胸が張るとか、変化があってもいいでしように」
 確かに、ウル様は一緒にいても男の子のようにも女の子のようにも感じる。はじめの内は悩んだが、今ではどうでもいいと思うようになった。
「男だったらどう責任取ってくれるつもりだったんですか」
「一緒に風呂に入っただけで獣になるのなら、もう私達はあの方の性別を把握してますよ。私が本気で口説いてもなびかない以上、本当にまだ性に興味がないのですよ。悪魔にはそういう欲望を増幅させる力がありますから、性別の違いとかに関係なく、どれだけガードが堅くても多少は目覚めるものなんです。というわけで、いまさらリファと風呂に入ろうが、目覚めるような方ではありません」
 魅力がないって言われているみたいでちょっと腹が立つけど、ウル様ならなんとなく納得できる。
 ウル様にそういうのはまだ似合わない。だって、まだまだ小さな子供みたいに無邪気だから。
「性別が知りたいだけなら、ばあやさんやじいやさんに聞けばいいんじゃないですか? ばあやさんは小さなころから一緒にいて、母親らしいことをしてくれた母親は彼女だって、ウル様がおっしゃったわ」
「あの人間達は結託して、ウル様の姿に合わせてお嬢様お坊ちゃまを使い分ける人達ですよ。あの甘さがウル様を作った要因の一つなんです。答えが毎日ウル様の格好に合わせているんです。ウル様の側に居続けられる人間を甘く見てはいけません。あれは悪魔にも匹敵する大狸どもです」
 悪魔にここまで言わせるなど、あのばあやさん達がそこまですごい人だとは思ってもいなかった。見習わなければならないのだろう。
「…………私は、女の子だと願っています」
「そりゃあ、私だって女の子の方が良いですよ。私は女の子の方が好きですから。
 でも、それを信じていざこの目で確かめて違ったら、ショックじゃないですか」
 悪魔というのは、よく分からないことにこだわる。長生きしているのだからもっと大ざっぱで良いだろうに、人間よりも細かいなんておかしなの。
「ロバスさん、そんなどうでもいいことのために、妹を巻き込まないでください」
「どうでもよくありませんよ」
「リファ、ウル様と一緒に涼しいところで休んでなさい」
 私はお姉ちゃんの言葉に従って、危険なロバスさんから離れて、ウル様の元へと向かった。
 後ろから口論が聞こえたが、仲が悪い喧嘩には見えなかったので、心配することはないんだと思う。あとでウル様に言って、どうすればいいのか指示を出してもらおう。

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2008/03/15   おまけ   98コメント 5     [編集]

Comment

 

迷い仔猫27     2008/03/15   [編集]     _

ひょっとして両性具有とか、それとも無性のどっちかってことはありませんか?
・・・私は無性のほうを押しますけど。

迷い仔猫28     2008/03/15   [編集]     _

詐騎士の23を読んできました。
そこでNEXTをクリックして次のページに行こうとすると22に戻ってしまいました。

一応、参考までに。

とーこ30     2008/03/15   [編集]     _

男女性中間のどれにしようかなぁと、それぞれの場合を考えてるんですが、どれも捨てがたいので保留です。
リンクは直しておきました。ありがとうございます。

uri32     2008/03/16   [編集]     _

ウル様なら男女、はたまた両性でも何でもいけそうですね。
敢えて謎のままにしておくのもアリな気もしますが・・w

-33     2008/03/16   [編集]     _

リファの一人称の部分に1ヶ所ウルと呼び捨てにしているところがあります。
たくましい子ですねw


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