白夜城ブログ

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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

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「知ってる? この前失踪した子、『向こう側の少女』に取り込まれちゃったんだって」
「なにそれぇ。ただの家出でしょ? どっかでウリでもやってんじゃない?」
「『向こう側の少女』の話をしたら、青ざめてたんだって。きっと万引きとかしたんだよ。ほら、あそこって家に問題があったじゃん。だから本当は……ってさ」
「ははっ、こっわ~。手足を切られるんだっけ?」
「あたしが聞いたのは、ミイラにされて、並べられるって」
「どこにだよ」
 笑い声が教室に響く。話を聞いていた別の女子生徒が、面白がって身を乗り出した。
「っていうか、あの話、バリエーション多いよね。私が最初に聞いたのはちょっと違うよ」
「へぇ、どんなん?」
「あのねぇ──」







 リップを塗り直すと私は一人、トイレの鏡を覗いて呟いた。
「うん、今日も私は可愛い」
 自分に言い聞かせる。可愛い可愛いと言い続けてくれる人がいれば、女の子は可愛くなれるものだ。それが自分でも。
「うん、可愛い可愛い」
 二つに結んだストレートの黒髪に乱れがない事を確認し、笑みを浮かべる。
 ぶすっとしているよりも、笑っていた方がいいに決まっている。
 もちろんぶすっとしていても、私は可愛いんだけど。
 私はトイレから出て廊下を小走りする。角を曲がると、昇降口で外を見ながら立つ背の高い後ろ姿を見つけ、靴箱からローファー出し、足に引っかけてその背に向かった。
「おまたせっ。遅くなってごめんね」
「そんなに待ってないよ」
 お決まりの台詞を口にして彼が笑い、私も笑う。
 彼はとても格好いい、最近出来た私の自慢の彼氏だ。頭が良くて、性格も良い。運動部じゃないのに、スポーツだってかなりできる。
 ローファーのかかとを指で足にはめながら、はきかけの片足でケンケンをして彼の元へと辿り着く。ふらふらしていると、彼が支えてくれた。
「大丈夫? 焦らなくても良いよ」
「えへへ、少しでも早く恭介君の側に行きたくて」
 そう言うと、恭介君は照れて顔を背けた。私がローファーをちゃんと履いたのを見ると、手をつないで歩き出す。
 人前で手をつなぐのがまだちょっと恥ずかしいみたい。恭介君は奥ゆかしい日本男児だから。
 背も高くて、背筋もピンと伸びてて、細身だけどちょっと逞しい。髪もさらっさらで染めなくても真っ黒で、流行のアイドル系ではないけど、大人びた雰囲気の格好いい男の子だ。彼のお父さんも、ロマンスグレーのしぶいオジサマで、恭介君も将来はきっとあんな風になるんだろう。今が可愛い男の子って、将来ちょっと……って感じになる可能性も高いからね。
 恭介君は私の理想。大人っぽくて真面目な恭介君は、かなり人気だから競争率も高い。
「どうしたんだ、ニヤニヤして」
「んー、毎日見ても、恭平君は素敵だなぁって。そういえば、背伸びた?」
「そう?」
「伸びたよー、私が縮んでなければね。私も身長欲しいなぁ」
「女の子はそれぐらいの方が可愛いよ」
「うーん、でも、恭介君のお姉さんみたいなスタイルは憧れるなぁ」
「姉貴と似た子と付き合ってたら……気色悪いだろ」
「それもそっかぁ」
 恭介君がちょっと嫌そうに顔を顰めた。そっか。恭介君はそういうの気にするんだ。
「あ、そうだ。今日ちょっと寄らないと行けない場所があるから、途中から一人で帰ってくれないかな」
「えぇ、寂しぃ」
「ごめんな、親戚がそこの病院に入院したらしくてさ、タオルとか差し入れなきゃならないんだ。俺が一番近い所にイルからさ」
「そっかぁ。大変だね。病気?」
「いや、事故で骨折」
「大変だねぇ」
 私達はしばらく話ながら歩いた。駅が近づくと、恭介君は途中の量販店で足を止める。
「私も一緒にお買い物しようか?」
「男物の下着とかあるからいいよ。最近は物騒だし、早く帰った方が良いよ」
 男の人の下着を買うのに付き合うのも、確かにねぇ……。
「うん。じゃあね」
「ばいばい」
 私達は手を振って別れた。
 短い距離だったけど、一緒にいられて幸せだった。週末になれば、この駅で待ち合わせしてデートをする。
 改札口を通り、階段を上って駅のプラットホームに立つ。
 夕日が眩しい。もうすぐ日が暮れそうだ。
 アルバイトには間に合う。
 携帯を取り出して時間を確認すると、電車はあと三分で到着する時間だった。ちょうど良い時間だった。
 携帯を折りたたんでポケットに戻した時、突然肩を叩かれた。
「ねぇ、君」
 振り返ると、知らない男の子が笑顔で立っていた。この駅で学ランって事は、同じ学校かな。この駅を使うのは、ブレザーの私立校とうちの高校だけだ。
 恭介君ほどではないけど、けっこう格好いいかも。いたかな、こんな男子。何年生だろう。
「捕まえた、あんたは俺の物だ、くくくっ」
 可愛いと思った笑顔を歪め、突然気色の悪い声で笑った。
「な、何っ? やだ、離してっ、誰か、この人痴漢ですっ」
 私は周りに助けを求めたが、どういう事か、周りの人達はちらりともこちらを見ない。
「なんでっ、ちょっと、助けてよっ!」
 同じ学校の男子だっているのに、無視して談笑している。普通助けるでしょ。サラリーマンだっているじゃん。なんで、ひどいっ!
「助けなんて来るかよ、クソアマ。せいぜい足掻くんだな、くひゃははははははっ」
 肩を掴んでいた男子は、私から離れて笑いながら駅から出て行く。
 笑い声が遠くなり、聞こえなくなると、私は肩を押さえた。
「何あれ、キモっ! 電波系? だからみんな関わり合いにならないの?」
 私がこんな反応をしても、みんなこちらを見ない。
 え……?
 おかしい。
「何? ねぇ、ちょっとあんた達、何か言いなさいよっ!」
 私が叫んでも、どういうわけか誰もこちらを見ず、声をかけられた事にすら気付かないかのように、無視をした。


 
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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

2011/02/16   向こう側   977コメント 2     [編集]

Comment

 

takk7350     2011/02/17   [編集]     _

感染系の怪奇かあ。なんかMissingに似てるような。あっちは神隠し系統だけど。あれ?これも一種の神隠し?

とーこ7352     2011/02/17   [編集]     _

Missingはよく知りませんけど、これは神隠し系です。感染はしてませんね。


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