白夜城ブログ

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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

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 男の子が出かけると、私は自分の部屋に入った。
 少し散らかった部屋だが、足の踏み場はある。ベッドに腰掛け身体を抱いて丸くなる。
 怖い。何も考えたくない。死んでしまいたい。いなくなりたい。苦しい。

 でも死ぬのは怖い。

 私はどうすれば良いんだろう。
 外に出るのは怖い。ここにいると少しだけ安心できる。でも家の中にいるのは怖い。とても怖くて、悲しい。
 知らない臭いのシーツが憎らしい。
 私は身を起こしてテレビをつけて音量を絞る。テレビに映るのは、間違いなく私の知るタレントとアナウンサーが司会をしている朝のニュース番組。どの番組も私が知っている番組名とタレント達が出ている。
 違うのは私だけ。
 テレビを消す。
「うぅぅうぅぅぅう」
 低く唸って丸くなる。ベッドに額をこすりつけて、ひたすら唸る。
「っそうだ」
 私は突然思い立ち、立ち上がって、自分のカバンの中から百均で買った鏡を取りだした。私の姿が映った。映った!
「やった!」
 と立ち上がり喜んだ直後、鏡の中にだけ映るなんて、心霊現象じゃないかと肩を落とす。私なら悲鳴を上げて逃げる。そんなのがいる家は引っ越したい。ダメだ。脅しすぎたら引っ越してしまう。
 私は何気なく窓の前に立った。外は普通。ジョギングする人や、犬の散歩をする人や、通勤通学する人がいる。
 みんな私みたいな悩みはない。気楽で、暢気だ。
「え?」
 私は顔をしかめた。
 おかしい。何かが違う。いつもここに立ったら、そう、ガラス窓に私の姿が映るはずだ。でも映らない。
 鏡……鏡は!?
 この部屋にはない。一階に降りて、洗面台の前に立つ。
 映らない。
「どうしてっ」
 違いがあるとすれば、あれは私の鏡。私が持っていた鏡。
「…………そんな」
 私のカバンはみんなから見えていなかった。だから私の鏡は見えないのだろう。私の鏡だから私が映る。
 力なく二階に戻り、ベッドに横たわる。
 考えたくない。頭が真っ白で、考えようとすると辛くて嫌だ。
 動悸が激しい。眠たくない。怖い。
「ううっ」
 丸まって、布団を頭から被る。
「ううぅっ」
 枕を抱えて殴った。もういやだ。もう、もう……
「うわぁあああああっ」
 布団をはね除け、枕を壁に叩き付ける。
「うううっうううっ」
 涙で濡れる顔をシーツに押しつける。
「戻らなきゃ……」
 戻らなきゃ戻らなきゃ戻らなきゃ。
 こうなったのだから、戻る方法もあるはず。こうなった理由を探さなきゃ。戻る方法を探さなきゃ。
 どうやって?
 わかんない、わかんないわかんないわかんないわかんないわかんないわかんないっ!
「線路……」
 そう、線路。神社。
 何をしたか分からないけど、無関係ではないだろう。神社の祠を見に行こう。お供え物を持って、神社に。
 でも外に出るのは怖い。怖いけど、何もしなかったら手遅れになるとか、そういうことがあるかもしれない。何もしなければ帰れない。何処に帰るのか、そんな事分からないけど。
 とにかく、元に戻りたい。
 胸の下を押さえて立ち上がる。
 神社に行かなければ。
 そう思うと、急に焦りが募った。早くしないと。早く確かめないと!
 床に転がしたままの学生鞄を手に取り、玄関へと走った。
 ドアが音を鳴らさないように、そっと開けて、そっと閉めた。行こう行こうと逸る気持ちを抑えて、自分の持っている鍵を玄関の鍵穴に差した。回る。ロックできた。
 なのに、どうしてっ……。
 ここは私の家。間違いなく、私の家だと確信して、声を殺して走った。

 
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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
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2011/02/06   向こう側   964コメント 1     [編集]

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