白夜城ブログ

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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

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 白昼夢の余韻を振り払うため、私は首を横にぶんぶんと振って、両手で頬を叩いた。
 みんなが染めているから染めた、ギリギリ「地毛です」で通る焦げ茶色の髪もぼさぼさになったので、手櫛で元に戻して再び足を進めた。
 いつもの帰路だ。いつもの道だ。
 何も心配はない。怖い事はない。ぼうっとしていただけ。
 そう自分に言い聞かせながら歩いていると、前から自転車がやって来た。地元でも評判が悪い私立高校の制服を着た、いかにも悪さをしている雰囲気の、金髪のだらしない格好をした男子だ。歩道の隅を歩いているのに、いかにも傍若無人な片手運転で、わざわざ私にぶつかるコースを、少し蛇行しながらまっすぐ走ってくる。
「ちょっ」
 本当にぶつかりそうになり、私は慌てて車道側に飛び退いた。
「あっぶな」
 あの人は本当に避ける気がなかった。避ける気があったら、横に飛び退いた私とぶつかっていただろうから、この場合はそれで助かったのだけど、なんて奴だろう。女の子に突撃してくるとか、最低、最悪。
 でも怖そうだから、それを口にはしなかった。
 それにしても、振り向くとかそういうのもないって……なんか女として自信を無くすわ。
 私は振り向きもしないクソ野郎をちらちら気にしながら再び歩き出す。
「あー、ついてない。今日は腹立つ事ばっか。厄日だ」
 そう言ってから、忘れていた踏切の記憶が戻った。せっかく忘れていたのに、私ってなんて馬鹿。ああ、私の馬鹿。最悪だ。ああ、腹が立つ。腹が立ちすぎて、次第に生きててごめんなさいって気持ちになってきた。
「ううぅ……」
 唸っているうちに私は家にたどり着いた。我が家のドアに手を描けると、少しほっとした。
「ただいまー」
 ドアを開けて、ローファーを脱いだ。玄関にはスリッパもあるが、誰も使わない。これは来客用でしかない。
 玄関まで芳ばしい香りが漂っている。今日はカレーだ。カレー大好き。
「あれぇ、誰か帰ってきた?」
 リビングのドアが開き、母さんが顔を出す。
「ただいまって言ったよ」
 私が言うと、母さんはきょとんとして辺りを見回し、リビングに戻った。
 変な母さん。
 まあいいや。とりあえず着替えてこようっと。
 階段を上り、一番奥にある自分の部屋のドアを開けた。

「へ?」

 声が重なった。
 私と、彼の声だ。
 知らない男の子が、部屋の中にいた。
 知らないというのは、語弊がある。一度だけ見た。そう、あの時の、存在しないはずの神社の横に立っていた子。踏切の向こう側の子。
「なんでっ」
 私は声を荒げて叫んだ。彼は私の部屋で目を見開いている。
 私の……部屋?
「なんで……」
 ここは私の部屋だ。だけど私の部屋じゃない。彼が座る私のベッドの上には、ピンクのチェックのカバーが付いた布団があったはずなのに、青いチェックのカバーの布団があった。タンスの上にはヌイグルミがあったはずなのに、プラモ置き場になっている。私の机には、可愛い小物があったはずなのに、ペットボトルのオマケに付いているボトルキャップが並んでいる。
 私は窓に手を置いた。部屋からは電灯と自販機が見えた。間違いなく、私の部屋。
「ひっ」
 男の子が息を飲み、身を引いた。私の部屋をこんなにしたのに、何を考えているんだ。
「あ、あんた、何なの!? 何のつもりでこんな事っ!」
 私は窓を叩いて問い質すと、男の子の肩が跳ね上がった。
「か、母さんっ!」
 怒りに顔を歪める私の前を通り、男の子は部屋を飛び出て一階に駆け下りていった。
 一体、なんなの。

 
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2011/01/21   向こう側   950コメント 0     [編集]

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