白夜城ブログ

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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

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「ねぇ知ってる? 異次元女」
「異次元女ぁ?」
「なんかぁ、悪い事をした人を異次元に連れ去っちゃうんだって」
「でどうなるの?」
「異次元女に聞かれた事を誓うと元に戻してくれるの。誓わないと殺されちゃうんだって」
「その誓いを破ったら?」
「今度はすごく苦しい殺され方をするんだって」
「ふぅん。私の聞いた話とは違うなぁ」
「へぇどんな?」
「私が聞いたのは──向こう側」






 私は徒歩で帰路についていた。
 学校指定の手提げをリュックのように背負い、黄昏時の街を歩く。ちょうど進む方向に沈み行く夕日があり、まぶしさに目を細めて手をかざした。この調子だと、家に着く頃には日没しているだろう。
 公園の前を歩きながら、石を蹴り、大きなあくびをしてため息をついた。友人の愚痴に付き合ううちに、かなり時間が過ぎていた。目尻に涙がたまる。
 友達には好きな人がいるらしい。その好きな人には彼女がおり、そいとがムカツクのだそうだ。
 好いた惚れたは他人の心の問題なのに、相手が別の女を好きになってムカツクとか言うような性格の女を、好きになる男は見る目がないと思うから、その彼は正しいのだろう。言わないけど。
 そんな彼氏に愛される彼女は見た目も可愛くて気の利く子だ。相手の子がモテるからって嫉妬するあんたに勝ち目はないと言いたいという事以外は、私には心底どうでもいい事だけど、それは大人気ないってもんだ。だから私は理解を示す振りをして頷いていた。それが女同士の人付き合いの方法だ。
 嫉妬するほど自分が醜くなる、そんなような事を聞いた事があったけど、あの子を見ててあれは本当だったんだと実感した。
 まあ幸いなのは、その可愛い彼女さんが苛められるようなタマじゃないって事だね。女の子に対しても気の利く子だし、先輩にも可愛がられているから、イジメた方がイジメられる事になるだろう。だから私はけっこう他人事して、聞き流す事が出来た。人間ってのは自分よりも強い相手には正面からは逆らわない。だからこうして愚痴るだけだ。アドバイスなんて本気で求めていない。ただ愚痴りたいだけなのである。なのに親身になって聞かないとキレる。よくいる典型的な扱いにくい女だ。話の内容がくだらなくて、とにかくうんざりした。
 思い出すだけでうんざりしてしまうので必死に楽しい事を考えていると、カンカンと音が響いた。走れば間に合いそうなほど先で、踏切警報機が鳴り始めた。走ろうか悩んだが、結局一歩前に踏み出すと、遮断機が下り始めたから諦めた。走っても数分早く家に着くだけ。疲れるだけ。
 線路の前にある、神社から伸びる枝が作った木陰の中で足を止めた。進行方向表示器には、両方向のランプが付いていた。ここは駅が近いから、運が悪いと三本待たなくてはならなくなる。三本目が来るまでには車が数台分通る時間があるのだから、一度開けてくれればいいのにと思うが、仕方がない。
 退屈なので何とはなしに神社の方を見た。何を祀っているのかも知らない、無人の神社だ。まあ、氏神様だろう。ちなみに、ちょっと木の根が道路にはみ出し気味で、トラックが通りにくいからと切ろうとしたら事故が起こって、伐採が中止になったという曰く付きの神社らしい。
 もちろんただの噂だ。たまにおばあさんが掃除をしている。
 真っ暗なときに横を通るのは怖いけど、まだなんとか明るいからそれほど怖くない。
 一台目の電車が通り過ぎ、私は前を見る。誰かが線路の向こうに待っていた。二台目の電車が通り過ぎる。
 近くの電灯が、切れかけているのかジリジリと鳴っていた。
 向かいにいるのは男の子だった。学ランを着て、私と同じように学校の鞄を背負っている。誰かが忘れ物をして、学校に戻ろうとしているかのも知れない。
 カンカンと警告音が鳴り続ける。電車はあと一台。その一台が視界の端に映るほど迫った。
 私はもうすぐだと思い鞄を背負い直し、前を見た。
 男の子も同じようにしていた。
 私は一歩前に出て、日陰の中から出る。
 男の子も一歩前に出て、日陰から出た。
 日陰。
 男の子の横には、木がある。
 そして神社があった。
 本来そこにあるべきはコンビニで、木なんて無いはずなのに……。
 
 え?

 男の子も驚いたように目を見開く。
 私は驚いて目をこする。
 もう一度前を見るが、今度は電車のせいで向こう側が見えない。
 ガタンガタンと電車が通る。胸の下、鳩尾辺りがぞわぞわとし、嫌な感覚が広がり、背中に汗をかき、足が棒になったように動かない。肩に置いた手も動かない。金縛りではないが、身体が竦んで動かない。
 そして電車が通り過ぎた時には、神社はなく、そこにあるべきコンビニがあり、確かに正面にいたはずの学ランの男の子もいなくなって、代わりに背広を着たサラリーマンがそこにいた。

 え?

 私は、夢でも見ていたんだろうか。
 遮断機が上がり、サラリーマンが顔も上げずに私の横を通り過ぎる。
 黄昏時、逢魔時。
 私は……狐にでも化かされたのだろうか。地元の昔話では、そういうのがあったはずだ。そう考えて、小さく笑う。ぼーっとしすぎて立ったまま夢でも見ていたんだろう。友達の長くて解決策もなくて、ただ言いたい放題の愚痴を聞いて、うんざりして眠くなっていたのだ。
 私は誤魔化すように小走りになって、踏切を渡った。太陽はビルに隠れてもう見えない。辺りは暗く、早く帰らないといけない。うちの母さんは心配性だから。
 右手を見て、確かにコンビニがあるのを確認する。いつもの光景だった。だから私は恐怖を打ち消すように、大丈夫と自分に言い聞かせて、走る速度を落とし、いつものペースに戻した。
 大丈夫。
 白昼夢という言葉があるのだから、きっとぼーっとして見間違えただけだから。


 
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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

2011/01/19   向こう側   947コメント 5     [編集]

Comment

 

とーこ7119     2011/01/19   [編集]     _

ホラーを目指して、一欠片も怖くないけどジャンル的にはホラーっぽい何かを書きました
全5話の予定で、半分ぐらいは書けている。

7120   魔女の弟子は・・・   2011/01/20   [編集]     _

感想ではなくてごめんなさい。
最近魔女の弟子の更新が寂しいですが、
魔女の弟子もお願いします。
ヴェノムやハウル達に会いたいです~

K7121     2011/01/20   [編集]     _

面白そう!続きが楽しみです。
真夜中に読んだのでそこはかとなく怖かったです…

からす7122     2011/01/20   [編集]     _

友達が嫉妬してる女の子は学生時代のハルカさん・・・?
そう思ってしまったら思考がそこから動かなくなってしまいましたorz

とーこ7123     2011/01/20   [編集]     _

弟子はたまに数行進めてるんですが、発表できるほどの量がないんですよね。最低、その話が終わってから投稿したいんで。

あれはハルカではありません。
この話は、他のどの話ともリンクすることはありません。
怖くなくても、ジャンル的にはやっぱりホラーなので、出したら可哀相です。


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