白夜城ブログ

5



 マデリオがナルシストで不純な熱血に目覚め、ナルシストを目指して特訓を始めたのを見て、聖良は腕を組んだ。
「あれで良いのか……」
「いいんじゃないの? 男の子って、格好いいからって理由があった方が、頑張れるもの」
「まあ、女好きにならなきゃいいんですけど」
 聖良は肩をすくめた。
 アーネスは自分の悪さを隠さないキャラだ。アディスのように猫を被らない分、影響を与えやすい可能性がある。
 二人が盛り上がっていたその時だった。
「モリィ、何かいる、気をつけて」
 唐突にカランが言って、聖良に駈け寄ってきた。
「何か? 賊が侵入したのかっ」
 アスベレーグが警戒して槍を構えた。彼はカランがウルが目をかけている配下だと知っているため、子供の言葉でも信じて神経に警戒する。
 突然の事で頭が付いていかない聖良は、下手に動いて怪我をしないように、身長に身をすくめた。
「あははははっ、人間に見つかったよ兄さん」
 男の悪い越えが響いた。聞き覚えのある声で、フレアが青ざめて頭を抱えた。
 男が木々の間から突然現れた。フレアによく似た、灰色の美男子。その後に、二人の美女が続いて出てくる。
 悪魔のセシウスと魔女達だった。
「やあ、麗しいお嬢さん達。始めまして」
 彼はエスカへと手を伸ばす。しかしその手が届く前に、聖良は反射的にその手に手刀を入れて叩き落として、エスカを下がらせて前に立ち塞がる。
「これは気の強いお嬢さんだね」
 目を合わせて、何もされないとは限らない。洗脳されたりする可能性もあるのだ。これ以上、ややこしい人間関係を作ってはいけない。
 そう思っても、相手は悪魔であり、彼等を追い返す手段がない。マデリオとアディスが大人になっていれば可能だが、二人はまだ子供だ。ミラがいれば話は違うが、ここにいるのは子供のカラン。
「ちょっと、いきなり何なのよっ!」
 フレアが髪を振り乱して叫んだ。
「物珍しい集団がいるから、見に来ただけだ。そう警戒せずとも、取って食いやしないよ」
 再度伸ばされた手を、聖良は再び叩き落とす。
「初対面なのに嫌われてしまった。一体、何を吹き込んだんだ?」
 セシウスはフレアに視線を移して、責めるように目を細めた。
「雰囲気で危険人物が分かるんでしょ。伯父様、見ていないで出ていらして!」
 フレアがキャンキャンと空に吼えると、セシウスとよく似た男と少女が、忽然と姿を表した。ルシウスとその魔女のヘレナだ。
「もう、伯父様、何の用なの?」
「いや、面白い事をしていると思って。半悪魔が悪魔を育てるのに参加するなど、前代未聞だ。あんまりにも面白そうだから、見に来たんだ。ああ、他の連中には内緒にしているから安心しろ」
 フレアはルシウスを見上げて、唇を尖らせた。
「だいたい、報告はどうした? 僕は聞いた覚えはないぞ」
 ルシウスはフレアの前に立ち、額を軽く突いた。
「国外の事だもの。国内の大きな事件を報告しろとは言われているけど、違うじゃない」
「いつからこんな生意気になったんだか」
 兄と妹のような、一見長閑な会話だ。
 その隙に、聖良はさらにエスカを下がらせる。アディスがまるで全身の毛を逆立てる猫のように警戒している。
「んー、面白そうな人間が揃っているね。見ていた限り、かなり有能な魔術師みたいだけど、誰だい」
「そっちの黒いのはアーネスよ。青の箱庭のアーネス。魔術系の秘密結社の中で一番勢力の大きな所のボス」
「へぇ、それは大物が外に出ているものだ」
 セシウスはアディスにも興味が出たらしく、楽しげに笑いながら彼を見つめた。
「そんな大物が国から出てくるなんて、面白いなぁ」
 アディスは腕を組んで睨むように視線を返す。
「悪魔には関係のない事」
「見てるだけ見てるだけ」
「子供は知らない人に見られるのを嫌います。同族ならなおさら。これは私と堕落のウルとの契約。邪魔をするなら、アレも敵に回すと知りなさい」
 アディスがそう宣言したとたん、二人の悪魔は目を輝かせた。
「ウルが? それはますます面白そうだね、兄さん」
「これは目が放せないな」
 二人の子供のような反応に、頭を抱えるアディス。
「そんな事言っちゃ逆効果よ。この人達、退屈しのぎのためなら命をかけるわよ。無駄に生きてるから。その点は伯父様もいっしょ!」
「厄介な親類ですね。一人ならともかく、二人もいるとは」
 アディスは舌打ちして、二人を見比べた。
「まるで一人ならどうにかなるような言いぐさだな」
「言葉の綾ですよ」
 アディスの言葉に反応したのはルシウスだった。彼は楽しげに笑い、アディスに足を向けた。
「ヘレナ、こいつらが何をしているか予想は付くか?」
「ウルと協力している事から考えれば、神殿対策でしょう。彼等の共通の敵になりうるのはそれぐらいです。そのために、神子に支配されているその悪魔を教育しているのでしょう」
「だな。さすがは俺のヘレナだ。いい子だ」
 ルシウスはクスクスと笑った。
「だが人間に悪魔が育てられるか、疑問ではあるな。少し試してみるか」
 楽しげに、ルシウスはそう言った。

誤字の報告はこのフォームからお願いします


魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

2011/01/11   下書き   943コメント 4     [編集]

Comment

 

しったら7092     2011/01/12   [編集]     _

あちゃー、セシウスとルシウスが出てきちゃいましたか…
すぐに気付くとはさすがカラン(^-^)

-7093     2011/01/12   [編集]     _

 ダメな男が来ちゃった……
マデリオもダメ男化してしまうのかな?

-7095   思わず   2011/01/12   [編集]     _

ミラさん早く来てーと叫んでしまいました。
ミラさんとお母さんが来れば悪魔二人でも何とかしてくれる。

G.G.7102     2011/01/13   [編集]     _

こいつら撃退するのは、力とかよりダメさをあげつらって精神的ダメージを与える方が効果的なような気がする


Pass:   非公開:    

.

最新記事のRSS

.

更新履歴 カテゴリ コメント

.

.

拍手

.

リンク

.



.

.

.