白夜城ブログ

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
誤字の報告はこのフォームからお願いします


魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

--/--/--   スポンサー広告     [編集]

1

「でねぇ、エイダに一番可能性があって腕の良い職人を紹介してもらったの」
 フレアの話を聞いて、アディスは自分の爪を研ぎながら、ふぅんと頷いた。
「で、どうなったんです。頷いたんですか?」
「うん。純粋な職人さん、飛行船に乗せてもらえると知ったらすっかり浮かれて、旅立っていったよ」
「今ごろ、さぞ喜んでいるでしょうねぇ」
 言いながら、アディスは部屋の隅の敷物の上でガリガリと爪を削る。竜の爪研ぎ用の石は硬く荒い。爪がかむずむずして仕方がないと言ったら、ラゼスが持ってきてくれたのだ。大きくなっている証拠だという。
 そんなアディスの隣では、セーラがふくふくとした、なごみ系の猫のヌイグルミを抱いて、丸干しした小魚を囓る。
「セーラ、何食べてるの?」
「目刺し。よく骨折するから、カルシウムを取らないと」
 そう聞いてフレアが目を細めた。
「……それって骨折に良いの?」
「骨が丈夫になるんです。女の人は歳を取ると、骨がスカスカになりやすいそうだから、気をつけないといけないんですよ」
「へぇ、クレア大丈夫かしら?」
「お酒が好きな人は色々と気をつけないと。美容のために果物や野菜も大切です」
「ようはバランスでしょ」
「そうですね」
 言いながら、セーラは三本目の目刺しを食べる。その様子を見てフレアも手を伸ばし、頭をねじ切ってからかじり付いた。
「塩味なのね」
「よくアルコールのおつまみに食べられます」
「ああ、それはいいわ。ワインに合いそう」
「メザシとワインですか……」
 セーラは食べかけのメザシを眺めて眉間にしわを寄せた。
「セーラはお酒飲まないものね」
「はい」
 セーラは少しでも身長が伸びるようにと、食べる物には気を使っていた。
 十八歳では、もうこれ以上伸びる事はないと、分かっていながらの行動だ。彼女は夏になるまでには十九歳になる。
「兄さんも早くお酒が飲める歳になるといいわね」
「酒はいいですよ。一人で飲むなんてつまらない。セーラが飲めるようになったら飲みます」
「ふぅん」
 セーラがメザシを食べ終えると、児童書を取り出した。彼女はついに絵本からは卒業したのだ。片言だが、日常会話なら困らないほど上達している。発音は相変わらず呪いの言葉のようで、意思疎通に困らないといった程度だが、言葉使いそのものは、絵本を読み続けたからセーラらしい丁寧な言葉遣いだった。
「ところでいつものミラ達は? 夜に三人ともいないのは珍しいわね」
 フレアは静かな室内を見回す。カランは部屋の隅で本を読んでいるが、ユイ達の姿はないのだ。
「聖都に戻りましたよ」
「え、もう? 上の方は雪深いんじゃない?」
 フレアは目を丸くした。
「そろそろ一度戻らないとうるさそうだからって、ラゼスさんに送ってもらったんです。またすぐに来るんじゃないですか。神殿も扱いに困っているでしょうから、定期連絡に戻る時以外は、人を襲わない場所にいてくれるのはありがたいでしょう。ミラさんが必要な事態なんて、それこそ竜や大物悪魔との喧嘩だし」
「恐ろしい事態ね……」
 想像の中では、この世の終わりという光景だけが展開する。
「ユイ君の魂がすり減りそうな事態です」
「早くマデリオが育って、逃げ込む先が出来ればいいわね」
 ミラと素質だけなら大物悪魔のマデリオがセットでいれば、神殿でも手を出せない魔境になる。第二のウル体制の出来上がりだ。
「そろそろ一回、様子を見に行きますか」
「そうねぇ、頃合いねぇ。ところで人化は上手くできるようになったの?」
「一朝一夕に行きますか。翼がなくなれば尻尾が出たりと大変なんですよ」
 それをセーラが喜ぶのだ。
 隠れて練習をしていても、ユイがいたときはミラに発見されて、ろくな練習も出来なかったため、進むはずがない。
「三日後に行きましょう。家に戻ったエルフのご一家にも声をかけないと行けませんし、色々と準備もありますし、土産を買わないと子供達が拗ねてしまいます」
「何が良いかしら」
「うちの国らしい玩具でも買っていきましょう。いっそカランと同じでも良いかもしれません」
 カランが顔を上げた。
 何も買ってもらえずとも、店に行きたいのだ。自分の趣味の者が売っている店なら、見ているだけで幸せになれる。
「カラン、ついでにパーツでも買いましょうか。夏になったら風をおこす道具があったら快適ですよ。暴走しやすいから調整が今まで作った物よりも難しいですが」
 カランは指をくわえて暫く考え、無言で、しかし目を輝かせて頷いた。



誤字の報告はこのフォームからお願いします


魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

2010/11/28   下書き   911コメント 4     [編集]

Comment

 

れい6835     2010/11/28   [編集]     _

やった。久しぶりの青色だ。
アディスの爪とぎ姿はネコが体いっぱいで研いでる感じ?それとも、女性が形を整えるように研ぐ感じ?
気障なアディスだと、女性型だけど、視覚的なら身体いっぱいを望む!!!

カラン、子供らしく可愛くなってきましたねえ。

とーこ6836     2010/11/28   [編集]     _

竜の姿で、猫のようにガリガリ研いでいます。

Takk6839     2010/11/28   [編集]     _

セーラの骨折っていくら骨を丈夫にしてもどうしようもないのでは?原因が原因だけに。むしろありえない程のエンカウント率をどうにかした方が

からす6840     2010/11/28   [編集]     _

うん、気休めって必要だよね。
セーラ並の強靭な精神力でもなんでもいいからすがっときたい、って時あるよね(^-^;
メザシも禁酒も、あんま効果はないんだろうけど・・・


Pass:   非公開:    

.

最新記事のRSS

.

更新履歴 カテゴリ コメント

.

.

拍手

.

リンク

.



.

.

.

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。