白夜城ブログ

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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

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29 バレンタイン トキ視点

 バレンタインが近いので、ハルカちゃんは部活でチョコを作り始めた。
 他所の部活の子まで混じっているのはご愛敬。
 男どもがチョコ臭につられてふらふらとやって来ては去っていくのがなかなか愉快。
 まあ僕も部活さぼって覗きに来ているけど。
 ただ、気になるのはハルカちゃんが作る生チョコトリュフの量。材料が他の子と量が違うの。ボール一杯分ぐらい出来そう。
「橘川先輩、それ誰にあげるんですかぁ? クラスにでも配るんですか?」
 後輩の子がハルカちゃんが作るそれを見て首をかしげた。ハルカちゃんを慕っている子で、とっても可愛い。
「自分で喰うに決まってるじゃん」
 きっぱりと言い切ると、後輩がテーブルに突っ伏す。
「残りは母さんに売りつける。手作りチョコとして知り合いに配られる」
「橘川先輩、売りつけるためにそんな……って、売りつけるためにトリュフ!?」
 板状にするよりも、丸めるだけだから手軽に大量生産できる。型もいらないし、多少形が悪くてもまったく問題ない。
「トキ先輩とかには別に用意しないんですか?」
「なんであんなモテる男に今更私がんなもの作らなきゃいけないの?」
 ハルカちゃん、真顔でおっしゃいました。
 確かに、いつもついでにくれるだけだけど、無しなんて、無しなんてっ!
「ハルカちゃん、ひどいぃい」
 僕が出ていくと、ハルカちゃんはつめたーい目を向けてくる。
「てっきり僕にもくれるんだと思って家庭科室の前に座り込んでウキウキしてたのに」
 楽しみにしていたのにあんまりだ。
「は? 今更欲しいの? あんた、たくさんもらうじゃん。去年もらいすぎて人にあげたんでしょ」
「手作りがいいのぉ」
「手作りもあったじゃない」
「後腐れなく安心して食べられる手作りがいいのぉ。好意があると、何が入ってるかわかんないんだよ!  ナチュラルに、悪気無く汚い事する子がいるから!」
 頭の緩い子の好意って、怖いのだ。馬鹿には色々と種類があって、勉強の出来ではなく、常識の面での馬鹿は手に負えない。そして、そっちの方面での馬鹿というのは、意外に多い。開けたらビックリ、これがてめぇの気持ちなのっ!? って、ビックリできるブツが入っているの。もう、作っているところを知っている子以外の手作り品は食べられない。
「あんた部活どうしたの?」
「雨降ってるから廊下で練習。でも抜けて来ちゃった。いい匂いなんだもん。美味しそう」
 作業を続けるハルカちゃんの肩に顎を乗せてじっと見る。ハルカちゃんは驚くほど料理が得意というわけではないけど、普通に美味しい物を作る。お隣さんの料理のせいで、ハルカちゃんは不味い物恐怖症らしいから、最低限のことは出来るようにしているらしい。
「一つあげるからさっさと戻れ」
 目の前に差し出されたのでかぶりつく。普通に美味しい。
「一つだけ?」
「そんなにあげたらなくなるでしょ。残ったら私が食べるんだから」
「残るんなら、僕にくれたっていいじゃなぁい」
「あ、そういえばおばさんって生チョコ好きだったっけ」
「母さんにはあげる気なんだ……」
 なぜか僕の母さんとハルカちゃんは仲がいい。一緒に買い物に行ったりと、まるで親子のようである。たまに悔しい。
「あんたには予定なかったのに今あげたでしょ、今まさに! おばさんはお世話になってるから感謝の気持ち」
「ハルカちゃんつれない。義理ですって書いてあってもいいから当日にも欲しいのに」
「ウザい。あんたみたいにモテる男がモテない女にたかるなっ! 彼女いるでしょ。あの高慢ちきはどうしたの」
「だいぶ前に別れたもん。付き合い始めたら自分の趣味を押しつけてくるんだもん。だから今は一人なのぉ。さみしーのぉ」
「付き合う前からんなこと悟れ! 態度で分かるでしょ、あの人を見下したような生意気な態度で!」
 男なんてアクセサリーみたいな子だったから、その通りなんだけどさ。
「いい機会だから、バレンタインで新しいのを見繕えばいいでしょ。いちいち私にたかるな。何が悲しゅうてもっと素直になれとか知らない男に言われなきゃならないんだ」
「な、何のこと?」
「知らない。ただ、トキのことをそろそろ受け入れろとか、なんかラブコメ脳に汚染されたこと言われた」
 ハルカちゃんは人の顔を覚えないから、きっと僕の知っている人なんだろうけど、なんだそれは。
「そこまで欲しいと言うなら、義理とかお情けとかほどこしとかって書いたラッピングにして、おーほほほほっとか高笑いしながら床に叩き付けて欲しかったら拾いなさいとか言うけど」
「ごめんなさい」
 そこまで嫌がられると傷つく。
 ハルカちゃんが僕に……というか、どの男に対しても気がないのは十分過ぎるほど理解しているけど、そこまで嫌がられると傷つく。
 原因がラブコメ脳な誰かってのにむかついた。



「って具合に、すごく拒否られて以来、ハルカちゃんの手作り品ってもらってないのよねぇ。母さんがもらった物を食べたり使ったりはするけど」
 トキさんはメレンゲを泡立てながら言う。
 トキさんはたまにうちに来て菓子作りを手伝うので、いつからかと聞いたらこんな話が始まった。バレンタインの喧嘩が原因だとは思わなかった。
「そこからはまっていったと」
「そうなの。ハルカちゃんつれないから、こうして関わりをこっちから持たないとって思ってたんだけど、思ったよりも楽しくって」
「それが原因でかろうじて男らしかった一人称もかわったんですか」
「違うわよ。高校卒業して、専門学校に行ってからよぉ。高校の内はちょっとなよなよしてるだけだったわ」
 この会話はハルカさんにも聞こえているだろうに、無視して自分の作業を続けている。
 二人の関係は、本当によく分からない。友達なのか、ただの恋人未満か、ただの知り合いか。
 本当に、分からない。


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2008/02/14   推定家族   9コメント 1     [編集]

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-44   管理人のみ閲覧できます   2008/03/23   [編集]     _

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