白夜城ブログ

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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

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 レンファはいつものように、魔術師見習いのまだ可愛らしい子供達に頼んで、エリオットを連れてきてもらった。
 エリオットは寝起きらしく、眠そうにあくびをした。髪も適当に結んで、前髪が跳ねていた。身なりを気にするフレアの時ではありえない姿だが、今はごく普通の少年である。
「もぅ、徹夜明けなのに何なんだよ」
 彼は不服そうに眼鏡の下から指を差し込み目をこすり、唇を尖らせる。
「徹夜?」
「これでも仕事だから、いろいろと提出しなきゃならないんだよ。じゃないと給料もらえない」
「何を提出するんですか?」
「月に一度の研究結果」
「どんな研究をしているんですか?」
「自分の研究を部外者に話す馬鹿なんていないでしょ」
 そう言われてレンファは納得した。
「で、なぁに?」
 レンファはアーネスに言われた事を説明した。すると彼は子供がたむろするこの図書室に待つように言って、部屋を出て行った。
 レンファは椅子に座って、見つめてくる子供達に笑みを返す。
 彼等の中には未来の権力者がいるかも知れないため、ファシャに命じて菓子の袋を出させた。
 塩気のきいた焼き菓子で、子供達は飛びついた。
 将来はエリートでも、まだ食べ物で釣られてくれる子供の可愛らし事といったらない。
「エリオット兄ちゃんはねぇ、いつもギリギリになって提出するの」
「日記みたいなんだって」
「感想文ですらないって」
 何も聞かずとも、面白がった子供達が教えてくれる。
「エリオット兄ちゃんは、いつも人の研究に手を貸してるんだよ。魔力だけは強いから」
「よくあの性格で人に力を貸せますね」
「目を合わせられないだけで、対人恐怖症じゃないから平気なんだって。いるだけでいいしさ」
「なるほど」
 多少の人見知りはするが、知り合いであれば気さくに話をする少年だ。同僚に力を貸すぐらいなら問題なくできるようである。
「最近ねぇ、出来ないのににらめっこしたがるの。きっと好きな人が出来たんだよ」
 レンファは思わず吹き出しそうになった。子供の勘は侮りがたいものだった。
「実は私も睨めっこに付き合わされたよ」
「お兄さんも? うちの兄がお世話になりました」
 子供だが、彼等はしっかりしている。
 彼等はアディスを慕っていて、滅多に顔を見せなくなってから、寂しい思いをしているようだった。それでもアディスは仕事をしているらしく、提出物は持ってくるという。
「ねぇねぇ、レンファさん何か面白い話ねーの?」
「こら、目上の人に対して失礼でしょ」
 少年が頬杖を突いて言い、女の子に後頭部を殴られる。どこの国にもある、微笑ましい光景だ。殴ったのが立派な杖でなければ。
「いいんですか、杖で人を殴って」
「大丈夫。杖はほとんど護身用だよ」
「初心者か大魔法を使う時か護身用なの」
「仕込み杖とか持ってる人もいるから、レンファさん強盗には気をつけてね。お金持ちそうに見えるから」
 レンファは自分の服装を見る。この国で買った、多少素材のいい普通のデザインの服だ。外国人が珍しいから、そう見えるのだ。
 レンファが護衛がいるから大丈夫だと言おうとしたとき、彼の背後に立っていたファシャが口を開いた。
「大丈夫ですよ。この人はこんなに小さいから、馬鹿にされないように身体だけは鍛えてますからね」
「ファシャ……」
 レンファが睨み上げると、彼は素知らぬ顔で図書室の出口を見た。タイミングの良い事に、エリオットが戻ってきた。
「レンファ、エイダが会うって。こっち」
 エリオットに手招きされて、レンファはぐっと堪えて立ち上がる。言い争いをして待たせるわけにはいかない。
 大人らしく笑顔で受け流し、子供達に手を振った。
「お話をしてくれてありがとうね」
「ばいばーい。また来てね」
「菓子持ってさ」
 レンファはもちろんだと頷きながら、子供達に別れを告げて部屋を出た。

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2010/08/29   下書き   845コメント 1     [編集]

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