白夜城ブログ

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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

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 聖良達はレンファに呼び出されて、エンザ商会グリーディア支部の応接室にいた。革張りのソファなどではなく、木の椅子とテーブルだ。椅子にはクッションが置いてあるため、尻が痛くなる事はない。聖良のクッションだけ三つも重なっている事が、少しだけ聖良の気にさわったが、喚く程の事ではない。
 レンファと向き合いながら、聖良はココアっぽい何かを飲んだ。レンファの隣では、既に懐柔されたフレアが、女の子のようにカップを持ってココアを飲んでいる。
「ああ、懐かしい」
「何ですか、これ」
「たぶんチョコレートと同じ原料の物です。脂肪分と分離すると、ココアの元になる固まりと、ココアバターになるんです」
 アディスに問われ、聖良は思い出しながら答えた。
「よくご存じですね」
 レンファが上機嫌で言う。
 聖良は不気味な物を感じた。最初は竜血草についての商談だと思っていたが、それとはまた違う何かがあると直感した。
「単刀直入に聞きますけど、何の用なんですか?」
「いやいや、大した事じゃないんですよ。ああ、お菓子もどうぞ」
 レンファはニコニコニコニコ笑いながら、菓子をすすめた。
「イーリンからセーラさんの故郷については色々と聞きましてね。誰にでも動かせる馬よりも早く走る乗り物や、竜よりも早く空を飛ぶ乗り物など……そう、エンジンとかいうものの原理を知らないかと思いまして」
 それを聞いて聖良は驚いた。
「そんなもの、なんで私が知ってると思ったんですか?」
 知るはずがないし、普通は知らないはずである。
「いや、イーリンが日本人なら知っているのではないかと」
「そんなの分かるのは、もっと専門の人です。私はただの学生だったので分かりません。普通の学問とは、魔術ぐらい離れています」
 そのとたん、レンファは肩を落とす。エンジンがガソリンを使って中で何をしているかなど、聖良には想像もつかない。もっと原始的な機械なら分かるが、エンジンは高校生には難易度が高すぎる。
「…………あ、ガソリンエンジンでなくてもいいのか……」
 聖良が口にすると、レンファが顔を上げた。
「なんですか」
 聖良は答えようとして、ちらりとアディスを見た。彼は首を傾げる。
「ちょっと相談してきて良いですか?」
「どうぞどうぞ」
 レンファは快く見送った。拒否して何も話してもらえないよりは、協力的になって少しでも話してもらえる方が良いという判断だ。
 聖良はアディスを廊下に連れて出た。彼は不思議そうに聖良を見下ろしている。
「あの、うっかり口を滑らせそうになったんですけど、不味いですかね。技術革新が起こりそうなんですけど」
「どんな革新ですか?」
「えっと、織物を自動化できる装置とか作れる原理です」
「素晴らしいじゃないですか。魔導具でやったらメンテとか大変ですよ」
「それで職を失う人とかたくさん出てきますし、たぶんそのうちもっと技術が進んで、魔法みたいな事が出来るようになります」
「いいんじゃないですか」
 気楽に言うアディスを見て、聖良は頭を掻く。
「戦争とかの規模が世界規模になったり」
「セーラの世界のようになると」
「はい」
 アディスは首を傾げた。
「話を聞く限り、とても便利そうでいいと思いますけど。その頃には私も人間の生活は捨ててるんで、まさしく人事ですし」
 聖良は眉間にしわを寄せる。
「不老長寿を狙って、竜を兵器で追い詰めるような事とか」
「……でも、そのうち勝手に開発されるのではないですか。セーラは大衆が受ける基本的な教育を受けている途中だったんですよね。素人が手を出せるそういう技術、つまりは原理は専門外の学生レベルって事ですよね。ほっておいてもいつか誰かが開発してしまう物です。
 例えば魔術です。
 国外でも、魔術は地下でそこそこ発達してますからね。目的を持って研究すれば、粗悪でも、時間は掛かっても、いつかは辿り着くでしょう。魔術と違って潰されませんからね。
 エンザはそれが出来ると知ってしまったからには、そのうちどうにかしてしまいます。夢物語でない知っているのですから」
 聖良は腕を組んで考えた。彼等は飛行船を作ってしまったのだから、可能性はある。
「だったら、最初から介入して恩を売っておけば良いんですよ。それに、楽しそうじゃないですか。悪魔の気持ちが少し理解できます。わくわくしますよ」
「……そういえば、そんなのもいましたね」
 瞬間移動できる彼等を殺す方法など、聖良の知る兵器をもってしても考えつかなかったのだ。人間がどれほど暴走しても、魔物の力を持つ神殿が止めるはずだ。ウルという、自分の支配下だけは絶対に手を出させない神子も存在する。
「もちろんタダで情報は売りませんけどね」
「どうするんですか?」
「とはいっても、今必要な物はないので、後で困った事があったら、吹っかけましょう。今は恩を売っておけば良いんですよ」
 アディスは笑いながら部屋に戻り、聖良も続いた。レンファはエンザ風の椅子に座ったまま、アディスを見上げた。
「話はまとまりましたか?」
「はい。あとは報酬ですね」
「話の内容によります。もちろん、内容によっては相応の支払いはします。私達は商人。価値のある情報には、それだけの対価をお支払いします。お得意様に対してケチな商人は、いい商売など出来はしませんからね」
 アディスは頷いた。
 聖良はため息一つついた。
「蒸気ですよ」
「は?」
 アディス含めて、素っ頓狂な声を出した。



スチームエンジンで調べたら出てきて、説明が分かりやすかったです。
蒸気機関の音は、むやみやたらと胸が踊ります。


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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
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盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

2010/08/12   下書き   834コメント 3     [編集]

Comment

 

とーこ6305     2010/08/12   [編集]     _

最初のスチームエンジンは、石炭を掘って出てくる水をくみ出すために作られたらしい。石炭を掘るのに、石炭を半分ぐらい使って。

異世界召喚物で今のところは見た事無いから、扱っている人が少ないみたいだけど、なんでだろう。

文美6308     2010/08/13   [編集]     _

現代人がエネルギーといって思い浮かべるのが電気で、そうなるとコイルを使った発電が真っ先に思い浮かぶからではないでしょうか。コイルだったら小学生でも作れたりしますからね。

チェシャ猫6309     2010/08/13   [編集]     _

とーこさん、はじめまして。いつも楽しく読ませて頂いています。

>異世界では
大型の部品を加工する技術がなかったり、そもそも金属、加熱用の資源が乏しかったりとか色々パターンがありますね。
でも、そもそも現状から目標への路程をきっちり計算できる人物は召喚術なんかに手を出さないという巨大なジレンマが(汗)


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