白夜城ブログ

2  砂場、というものは知っていた。だが遊んだことはなかった。だって汚れるから。汚れると怒られるから。疲れるとすぐに倒れるし。
 最近、少し丈夫になった気がする。
 地上よりも魔力の流れが多く、密度が高い。おそらく魔力の高い生物ばかりが閉鎖的な空間で過ごしているためだろう。だからとても過ごしやすいのだ。
 ドレスの袖をまくり、スカートをしばって動きやすくしてもらう。今日は紺色の服を着ているから多少汚れても落ちないことはないらしい。もちろん、汚れないようにしなければならないが、砂の上に立つととっても嬉しくて飛び込みたくなる。
「お城に触ってもいい?」
「壊さないでね」
「壊さないです」
 そっと触ると意外と固いような気がした。なだらかになっているので、凹ませてはいけないと手を引く。眺めると、トンネルの向こうに女の子の顔が見え、きゃっと言って立ち上がる。とっても可愛い。
「ひ、姫様、今度は別のお城作りましょ」
「うん」
 女の子に誘われて、ノイリは立ち上がって横に移動する。スコップを渡され、砂で山を作る。なんだかドキドキする。
「マルタ、お山が出来ました」
「やま?」
 ノイリは一瞬きょとんとして、地下にはノイリの想像する山がないのだと気付く。山、という表現はあるはずなので、語源を忘れているか、別の物になっているのかどちらかだろう。
「地上の山はこんなふうなんです。これの大きくて木が一面に生えたのがいっぱい連なるの」
「木が生えてるんだ」
「数え切れないぐらい生えてます。春になると山菜とかが出て、秋になると木の実やキノコが落ちてるんです」
「どれぐらい大きいの? お城ぐらい?」
「もっともっともっと大きいの。私が住んでいたところからでも千メートル級の山が見えました」
「せんめーとるって、どれぐらい?」
「一キロです。それよりももっともっと大きい山もたくさんあってとってもきれいで大迫力です。天井がないですから、上に制限がないんです」
「地上ってすげぇなぁ」
「地下もすごいですよ。維持するには技術がいりますから。上はただ自然にそういう風になってるだけですし。でも、景色はいいですよ。空には遮る物がないですから、開放感があります。
 私はここの方が過ごしやすいですけど」
 ここにはエンダーもいてとっても幸せだ。
「どうして? お空を自由に飛べないよ。鳥は自由に空を飛べないとダメなんだってじっちゃんが言ってたよ?」
「私は元々空を飛べないんです。皮と骨だけにならないと、重くってとても……。
 だからここは私にとっては住みよい環境なんです。地上にいた頃はこんな風に遊んでいると、すぐに疲れて休憩してました」
 だから鳥の気持ちなど分からない。
 でもニワトリの気持ちなら分かる。意地悪な子には、ニワトリ女と言って赤い花を頭につけられたりした。にぶいとかとろいとか言われた。でも、みんないい子だった。好きだった。
 死んでしまって、どうなったかすら分からなくて、とても悲しい。
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2007/08/12   窖のお城   83コメント 0     [編集]

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