白夜城ブログ

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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

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 聖良は日の微調整をしながら、明かり取りの窓から、よく晴れた空を見た。
「最近温かくなってきましたねぇ」
「そうねぇ」
 温かくなって少し温度が下がったコタツに入るフレアが頷く。聖良は鍋の上に置いた器の氷が溶けたので、水が入った器を持ってフレアの元へ歩いた。
「氷のストックが無くなってしまったので、これを凍らせてください」
 自分でも出来たが、メモ用紙を取り出さなければならないので面倒臭いのだ。
「いいけど、何作ってるの?」
「え、化粧水です」
「自分で作ってるの?」
「そうですよ」
「変な作り方ね」
「私の生まれた所では、割とポピュラーですけど」
 聖良は弱火にかけた鍋の前に戻ると、ひっくり返して置かれた鍋の蓋に、氷の入った器を乗せる。
「煮てるの?」
「蒸留してるんです。氷は、蓋を冷やすためです。
 ほら、冬って、冷たい窓とか壁とか、水滴がつくじゃないですか。冷やすと空気中の湿気でも水になるんです。鍋の蓋の取っ手あたりを冷やして、下に置いた器で受けて止めると、中にたまったのが精油とハーブウォーターです」
「へぇ、そんな風に作るの。なんのハーブ?」
「竜血草です」
「…………ひょっとして、世界一高級な化粧水じゃない?」
 聖良は首を傾げた。山ほど生えるわけではないが、珍しい草ではないため、何に使っても惜しくないのだ。
「精油は日持ちするから、どこかに売ってもらいましょうか。たくさんいらないですし」
 日持ちする物ではないため、度々作るうちに、余り使わない精油は余ったのだ。
「でもセーラはそんなものつけなくても、肌荒れなんてしないんじゃないの? 脅威の回復力があるし」
「それが、手荒れとかするんですよ、乾燥とか。今のところ、あかぎれにはなりませんでしたけど」
「いまいち分からない身体ねぇ」
 聖良はコタツに戻ると、コタツの熱で溶かしたミツロウに別のオイル類と精油と前回作った竜血草水を混ぜた。
 都会から離れているため、消耗品は作れる物はすべて自作しなければならないのが田舎暮らしの面倒な所だった。
「超高級クリームできました」
「やーん、試させて試させて」
「はいはい」
 匙についたクリームをフレアの手に乗せる。まだ温かいので、とろけて肌を滑り落ちる。
「これが最高級の美容クリームなのね」
「おかげでカランの肌もすっかり綺麗です」
 子供らしいすべすべの肌だ。まだ手は少し荒れて固いが、次第に手の甲もすべすべで柔らかくなるはずだった。
「そういえば、アディス達は何をしているの? 待てども姿を見せないけど」
「狩りに出ています。私は危ないからお留守番です」
「一人で?」
「いえ、裏でハノさんが窯を作っています。焼き物をしたり、炭焼きをしたり、用途は色々だそうです」
 フレアはしばし無言で家の裏がある方向の壁を凝視した。
「…………あの人達、いつまでここにいるつもりなのかしら」
「さぁ。いられるだけいるんでは? 神殿もミラさんは怖いから、近くにいて欲しくないと思ってるみたいですし。来年の冬も泊まる気満々ですし」
 聖良は出来上がったクリームを小分けし、コタツから出て床下の保冷庫にしまった。コタツ虫になっていたフレアも、抜けだして保冷庫の中を見る。
「色々入ってるのね」
「はい。化粧水以外にも、開封したお酒とか、干物とか。お外に出しておくと、食べられちゃいますし」
 フレアは白い瓶を引っ張り出して匂いを嗅ぐ。
「それはヨーグルトです」
「あら、そうなの」
「ヨーグルトはお通じと美容に良いんです」
「そうなの?」
 フレアは女装が趣味なだけあり、美容に対する関心は高かった。
「出来上がった化粧水、少し持って帰りますか?」
「え、いいの?」
「どうせ必要なのは手間とアディスのダシだけですし」
「ダシ……確かにそうだけど……」
 聖良は鍋を外から眺め、時間を見てから魔導具のコンロを操作して火を止めた。
 蓋を開けてミトンで器を取り出す。
「いい香りねぇ」
「だから私もハーブだと思い込んで、クッキーに入れて普通に食べてたんですよ」
 上澄みをすくい、指ほどの大きさの小さな瓶に移し替える。残りを別の小さめの瓶に入れた。化粧水はちょうど瓶二本分だ。入れると日持ちするようになるオイルと保湿剤を混ぜて、精油と化粧水をフレアに手渡す。
「ちゃんと保冷してくださいね」
「ありがとう。レンファの奴に自慢してやろっと、ふふふ」
 楽しそうに身をよじるフレアを見て、聖良は頷こうとしてはっと我に返る。
「フレアさん……レンファさんの事、そんなに好きなんですか?」
「からかうのが好きなのよ。私が一番好きなのはセーラだから安心して頂戴」
「そうですかそうですか」
「あーん、つれない」
「好かれる理由が分かっていると、何を言われても虚しいもんですよ」
「ロリコンと一緒にしないで。私は本気よ」
 そう言って、ぎゅっと拳を作り、聖良よりもずれた所を見るフレア。
 聖良はふっとため息をついた。
「そういう事は冗談でも、せめて目を合わせられるようになってから言ってください。おませな事を言っても、ぜんぜん様になりませんよ」
 聖良は顔を寄せて、フレアの頬に触れる。その間、彼は必死で目を逸らしていた。
「エリオット君はそろそろ本気でこの病気を治した方が良いですよ」
「だってぇ……」
「そんなんじゃ、お兄さんみたいになりますよ」
「…………」
 フレアの顔から表情が消えた。
 聖良はそれを見て額に手を当てる。
「そんな……」
「だってそうじゃないですか」
「う……眼鏡をかけずに暗かったらアップでも平気なのに」
「…………」
 聖良はため息をついた。

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2010/08/06   下書き   827コメント 3     [編集]

Comment

 

とーこ6279     2010/08/06   [編集]     _

本当は前回の話の続きを書こうと思ってたんですが、どうやってもまとまらなかったので、アレで終わりという事で次の話に移ります。

愛華6280   青色キター   2010/08/06   [編集]     _

とーこさんの作品は満遍なく好きな私ですが、特に青色が好きな私大喜びです!
遂に、フレアさんバージョンのエリオットくんを『おませ』扱いにしちゃったよやはり、聖良最強(笑)
アディスを出汁扱いにも吹きましたが!

ノクシャス6282     2010/08/06   [編集]     _

いつまでもいるつもりなハノ君達にも吹きましたが。まあ、エリオット君はゆっくり治せばいいけれど、頑張って治すというのも一興か。


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