白夜城ブログ

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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

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 夕食後の勉強も終えて真琴さんが帰ると、ハルカさんは迷わず化粧を落としに風呂場に向かった。
 暫くするとさっぱりした様子のハルカさんが、二階のシアタールームで扇風機に当たる。健康器具で運動していた俺は、中断してタオルで汗を拭った。
「そーいやハルト、どうだった?」
 どうとは、勉強の事か。
「すごくいい先生だよ。先生としては」
「先生としては?」
 ハルカさんが首を傾げる。駄目だ、この人はたぶん言いたい事を察してくれない。
「でも、なんか……ハルカさんに向ける目が……」
「目が?」
「…………本気で分からない?」
 俺は弟だと思っているからってのもあるけど、あの人は赤の他人だ。気付いて欲しい。
「…………うぅん」
 ハルカさんは唸ってグラスに入れた麦茶を飲む。
「そういえば」
「そういえば?」
「なんか、中学の頃に告白されたらしい」
 …………えっと。
「らしい?」
「トキが覚えてるかって」
「え、忘れてたの?」
「トキの初恋騒動で忘れてたけど、色々あって、殴ったってのは覚えてる」
「色々?」
「色々」
「…………理解できない」
 殴るハルカさんもハルカさんだし、振られても、殴られても、あんな風に好意を持っている真琴さんも。
「色々あったんだよ。色々と。よく覚えてないけど。トキに聞いたら詳しい事分かる……はず」
 俺は部屋に戻って携帯を弄る。
 十コール待ったが出ないので諦めて切ると、とたんに着メロが鳴る。トキさんだ。
「トキさん?」
『なぁにハルト君。今日は三人で夕食だったんだって?』
「…………あ、真琴さんと話してたんだ」
 そりゃ友達だもんな。
「ハルカさんから聞いたんだけど、真琴さんってハルカさんの事好きだったの?」
『真琴の初恋の相手よ。玉砕しまくったけど』
「しまくった?」
『一度目の告白は、複雑な事情による勘違いから、殴られてクズ呼ばわりされて振られたでしょ』
「…………い、一度目?」
 そこまで言われて、なぜ頑張れるんだ。俺ならさすがに心が折れる。泣いてばあちゃんに慰められただろう。ハルカさんは、慰めてくれそうにもないけど。
『二度目は誤解が解けてというか、すっかり忘れられてて、映画に誘ったら断られたの。真琴が誘ったのが、恋愛映画だったから。ハルカちゃんがそんなもの見るはずないのにねぇ』
『う、うるさいなっ』
 って、いるのか。この話題を本人の前でしてるのか。
『三回目は、付き合っていって言ったら、どこをどう解釈したのか、私を捜して欲しいと思い込んで、トキならそこにいたよってスルーされちゃったの! 可哀相でしょ』
「そこまで来ると笑い話だね」
 しかも本人忘れてるとか。
 真奈美さんが真琴さんを慰めている音声が聞こえる。
「そっかぁ……ハルカさんには『付き合ってください』が通じないのか……」
『さすがにもう大人なんだから通じるわよ……きっと、ねぇ』
「通じても、思いは通じないと思うけど」
『そうよねぇ。男女の関係って面倒くさいもの。ハルカちゃんが耐えられるとはとても思えないわ』
 俺の場合、家の中という交流場所がある。一緒に食料品を買いに行くというデートが出来る。同居している特権だ。もしも付き合ったりしたら、それにちょっとアレコレ増えるだけだ。そう面倒臭くはないだろう、きっと。
 逆に言うと、今している事以外を執拗に求めたら、鬱陶しがられるという事だ。メールの返事が無くても催促しないとか、本人が嫌そうにしたらしつこく誘わないとか。
 それを理解していなければ、デートなど夢のまた夢だ。
 俺ならハルカさんが行きたがる場所、見たがる映画の好みも分かる。
『ふふ、安心した?』
「え……」
『大好きなお姉ちゃんが取られなくて』
 くふふと笑うトキさん。
 トキさんから見ても、俺って弟?
 複雑な心境だ。
『にしても、ほんとハルト君は母方の家系が色濃く出てるわねぇ。真琴が褒めてたわよ。美少年で頭が良いなんて、ホント妬けちゃうわぁ』
「トキさんだって格好いいし、センスが良いじゃないですか」
『まあ、何も持たない人も世の中にはいるし、贅沢な悩みよねぇ』
「そうそう」
 しっかりと大人として生活しているトキさんが羨ましい。
『ま、ハルト君も勉強がんばりなさい』
「それは頑張るよ。成績落としたらハルカさん気にしそうだし」
『じゃあ、私はこれから飲むから!』
 また飲むのか……。
 大人って酒飲むの好きだな。俺はたぶんハルカさんと同じで、ビールとか苦手で、チューハイや梅酒とか甘いのしか飲めないと思う。大人になったら味覚が変わるのかも知れないけど。昔は食べられなかったピーマンも、最近は食べられるようになったし。
「じゃあ、おやすみなさい」
 携帯を切ると、ため息が漏れた。
 泥沼だ。
 断る理由を探して見つけられない八方美人な自分のせいで、泥沼だ。
 なにせ、それだけ叩き潰されても折れない雑草のように強靱な恋心。いつかハルカさんが折れないかと、すごく心配だ。
 ああ、早く大学に入りたい。


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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
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2010/08/03   推定家族   826コメント 2     [編集]

Comment

 

とーこ6276     2010/08/03   [編集]     _

一番の障害は、ライバルじゃなくてハルカの物臭。
今の若い人は、恋人と一緒にいても、外に出るよりも家の中で過ごす方が好きらしいですから、今風ですね。

重虎6277     2010/08/04   [編集]     _

まさかそんなにアタックしてたとは・・・(笑)
報われなさすぎて笑えます( ´∀`)
個人的にハルト応援してるので面白く玉砕してくれればいいな(*´д`*)


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