白夜城ブログ

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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

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 複雑な心境だった。
 テストの採点をした後、解説を受けた。簡単な問題が大半だったが、後半から難しい問題になって、間違えたところがけっこうある。英語がけっこうヤバイ。英会話だけなら、暇を持て余しているからなんとなく勉強しているハルカさんの方が上だったりする。
 真琴さんは教え方の上手い人だった。ちょっと悔しい。だってこの人、初めからハルカさんを見る目が違った。イヤらしい目で見てたなら、はっきりと嫌悪感を向けられるけど、好意ではあるが憧れに近い視線で、どうにも責められない。
 俺とそんなに変わらないから、何も言えない。
 でもハルカさんと同じ歳で、実家は金持ち、逞しくて頼りがいがありそうな大人の男だ。普通に考えたら、俺なんて相手にならないだろう。
 幸いなのが、ハルカさんはマッチョは別に好きでも嫌いでもないという、つまり魅力だと思ってないって事だ。
 ハルカさんは好きな体型というものはないけど、デブは好きではないらしい。デブとハゲなら、デブの方が嫌だという。デブは好きでデブでいるだけだが、ハゲはどんなに努力をしても報われにくいからだそうだ。好きでデブな人はいないと思うけど、努力でどうにかなることだからな。
「ハルト君は飲み込みが早いなぁ。手が掛からなくて楽だよ」
「手が掛かる生徒さんもいるんですか?」
「まあ……一から説明してようやく理解出来た事を、週が開けたらすっかり忘れてる子とか、多いよ。泣けるね」
 家庭教師ってのも大変だ。ハルカさんならすぐに諦めそうだ。教える側も、教えられる側も。
「あ、ハルト君と同じ学校の子も教えてるんだよ」
「誰?」
「田中恭平って知ってる?」
「あー、俺の友達。そういえば家庭教師を頼んでるって言ってたなぁ」
 世の中は狭い。いつも集まって勉強したり、遊んだりしている友人だ。後でメールしてみよう。
「ところで、あ、あのさ、ハルト君。つかぬ事を聞くけど……」
 真琴さんは指をすりあわせて、恥ずかしそうに顔を逸らした。
「橘川ってさ、か、彼氏とかいるの?」
 …………ズバリ、聞いてきた。
「え……知らない」
「そ、そうだよな。変な事聞いてごめんな」
 いないはずだけど、いつも一緒にいるわけではないから、いないとは言い切れないから嘘ではない。
 しかしこれではっきりした。
 この人はハルカさんを狙っている。でもそんな理由で家庭教師を断るのも何だし、ハルカさんが誘惑に負けるとも思えないし。告白しても玉砕する様が容易に想像できるから、断りにくいしハルカさんに心配をかけないためにも家庭教師は続けてもらいたいが、やっぱり不安だ……。
 しばし沈黙が続き、階段を登るきしみ足音が聞こえた。
「ねぇ、夕飯出来たけど」
 階段の下の方から、ハルカさんの声が聞こえた。
「はーい」
 予定していた時間を五分過ぎている。
 ハルカさんは時間にはきっちりしているタイプだから、きっちりと合わせて作ったのだろう。
 階段を下りると、芳ばしいニンニクの匂いがして、俺の腹が鳴った。
 リビングのテーブルには、唐揚げと、山盛りのチャーハンと、サラダが置いてある。台所では、ハルカさんがフライパンをひっくり返し、羽根付き餃子が皿に盛られた。
 タンクトップにカーゴパンツと、いつもよりは露出の少ない格好で、化粧をして、可愛いエプロンを身につけている。他人の目を気にしてなのだろうけど……。
「わー、ウマそう。家で弁当以外の中華なんて久しぶり」
「チャーハンも作らなかったの?」
「…………炊飯器を一年ぐらい使ってないかも。一人暮らしで自炊だと、逆に高つくから、弁当とパンが中心で」
 ハルカさんが真琴さんを呆れたように見た。
「それでも生きていられる便利な世の中って事か……」
 ハルカさんは餃子を載せた丸皿をテーブルに置く。
 あとは漬け物や佃煮を並べ、エプロンを棚に置くと、ハルカさんはカーペットを敷いた床に座る。
「この餃子、手作り?」
「ああ、トキのお母さんと一緒に作ったの」
「へぇ、おばさんと仲いいんだ」
「うん。トキよりは仲いいよ。よくお料理教えてもらうし」
 トキさんよりも真奈美さんとの方が親しいという意味なのか、実の親子であるトキさんより自分の方が真奈美さんと仲がいいという意味なのか。
 どっちもありそうで、日本語は難しい。
「じゃあ、あいつんちも今ごろは餃子か」
「だね」
 ハルカさん、そんな家庭的な所見せなくていいのに。見せなくていいのに! なんで今日に限ってそんな手の込んだ事を。もっと手抜き料理でいいのにさ。
 なんで男心をくすぐるような事を……。
「こっちが普通ので、こっちがシソ入りね」
 手作り餃子はとても二種類とも美味しい。
 ちらりと真琴さんを見ると、幸せを噛みしめるようにして食べていた。
 一人で桃色オーラを放っている気がする。



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2010/07/31   推定家族   823コメント 4     [編集]

Comment

 

-6264     2010/08/01   [編集]     _

真琴さんが純真すぎて笑った
なんだこの男、ピュアハートってレベルじゃねえ(笑

マナ6265     2010/08/01   [編集]     _

ライ……バ……ル……? ものっそい微妙…………
けど、ハルトの敵愾心(?)は可愛い。

-6267     2010/08/01   [編集]     _

ハルト可愛すぎます(笑

-6269   管理人のみ閲覧できます   2010/08/01   [編集]     _

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