白夜城ブログ

68


 やって来た男は、背が高かった。なんかゴツかった。マッチョだ。茶髪に髭だ。何かのスポーツをやってるんだろうか。
「ひ、久しぶり。相変わらず……だな」
 見上げる私に「真琴」が手を上げてあいさつする。
「…………いたっけ、こんな人」
 私の記憶の中の真琴は、トキが好きそうな女顔の可愛い少年だったような気がする。それ以外の真琴だったら、私は知らない。
「すっかりムサくなっちゃっただけで、昔は超美少年だった真琴よ」
「む、ムサいって……」
 真琴がむっとしてトキを睨んだ。
「マッチョも嫌いじゃないけどねぇ、その髭とか最悪。ハルカちゃんからも言ってやってよ」
「え、いいの? じゃあ…………茶髪と髭の組み合わせはキモイ」
 あ、顔が引きつった。やっぱり他人にここまで言うのはアレだったか。
「き……橘川は相変わらずだなぁ……髭、嫌いなんだ」
「ううん。似合わない髭が嫌い。ダンディで似合ってれば好き。でもその髭は……なんかチャラくて子供の教育に悪そうに見える」
「……剃ってきます」
 真琴は肩を落として言った。
 赤の他人のスタイルに面と向かって文句を言ってしまった。こういうのはハルトに見習わないようにと忠告する程度で良いのに。
「言ったでしょ、嫌いな子は嫌いよ、そういうの。頭もお尻もかる~い子は好きそうだけど」
「う、うるさいなっ」
「今すぐ剃ってあげたいぐらいだわ。まあ、立ち話も何だから、あがってちょうだい」
 トキが勝手に話を進める。
「まるで自分ちみたいに言うな」
「勝手知ったる幼馴染みの家よ」
 わたしでもそんな事しないぞ、おい。まあいいけどさ。
 私達は宴会をしていた居間に戻った。
「こんばんは。いらっしゃいませ」
 ハルナが丁寧に挨拶した。
「こんばんは。可愛い子だね。橘川の妹?」
「イトコのハルナ。そこのが勉強教えてもらいたいイトコのハルト」
「ああ、あのストーカーの……」
 ハルトの顔が引きつった。当時はマスコミも暇だったらしく、テレビでたくさんやってたからなぁ。
「久しぶりだなぁ。まあ飲めよ」
「お久し振りです、常盤さん。俺原付なんで、酒はちょっと」
 真琴はすまなそうに手を合わせて断った。
「俺だって車だけど飲んでるぞ」
「いや、そりゃ不味いでしょう」
「泊まってくからいいんだよ」
「とまっ……」
 真琴が顔を顰めて私を見た。
「お酒が抜けるまで、この居間で雑魚寝だけどね」
「ああ、そっか」
 真琴は安堵したのか、息をついた。
 トキの好きだった男というのは覚えているけど、それ以外はあんまり覚えていない。あの頃は嫌な事があったから、忘れるように心がけているのだ。しっかりと効果が出ているのは良い事だが、関係ない事も忘れているらしい。
 まあいいや。
「で、何飲む? 泡盛と料理用に買ってる日本酒と梅酒とチューハイしかないけど」
「泡盛?」
「お土産なの」
「トキ達も飲んでるのか。じゃあ俺ももらおうかな」
 私は残りが少なくなった水差しを手にして、浄水器の水を注ぎ、新しいグラスを食器棚から取り出してテーブルに戻る。真琴は緊張しているのか、正座をして肩身を狭くしていた。ゴツイ見た目に反して、小心者で礼儀正しいようだ。
「説明先にしたら? 酔っぱらったら二度手間になるし」
「そ、そうだな」
 トキに促されて、真琴は慌てて荷物をあさった。
 この人は、なんでこんなに緊張してるんだろう。まあ、他人に家は緊張するだけかもしれないし、仕事の事では緊張するだけかも知れない。どうでもいい。


backmenunext

誤字の報告はこのフォームからお願いします


魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

2010/07/21   推定家族   814コメント 8     [編集]

Comment

 

-6195     2010/07/21   [編集]     _

緊張してるって事は、まだ気が有るのかな
ハルト大変だ~

-6196     2010/07/21   [編集]     _

「まあいいや」と「どうでもいい」のオンパレードですね笑
さすがハルカさん!

-6197     2010/07/21   [編集]     _

不憫な男よ・・・

-6198     2010/07/22   [編集]     _

あの頃のままの美青年を期待してたけどそんな甘くないか…

-6199     2010/07/22   [編集]     _

びしょうねん、歳月たてば、むさい男(ひと)…

-6200     2010/07/22   [編集]     _

ライバルになるのか、同士になるのか。楽しみですね!

-6202     2010/07/22   [編集]     _

時というのは無情ですね。

社怪人6213   時の過ぎゆくままに   2010/07/23   [編集]     _

時の過ぎゆくままに 紅顔の美少年は 茶髪の髭青年へと……

時は無情なりw


Pass:   非公開:    

.

最新記事のRSS

.

更新履歴 カテゴリ コメント

.

.

拍手

.

リンク

.



.

.

.