白夜城ブログ

63


「本当に大丈夫?」
「うん、へーき」
 私がハルトの悲鳴で目を覚ますと、私が見たのは足だった。
 彼はベッドから落ちて頭を打っていたのだ。
 私が悪かったのは重々分かっている。でも怖かったんだもん。怖かったんだもんっ! 本物の幽霊はマジで勘弁して欲しい。
「ごめんねー。私、昔からよく弟の布団に潜り込んでたんだ」
「……ハルカさん、俺は弟じゃないんだから、もうダメだよ」
「うん」
 ハルトが冷たい。いつもは甘えてくるクセに、なんか突き放されている。
 いや、悪いのは自分なんだけど、自分も寂しがり屋なクセに、こちらがベタベタすると突き放されるのはちょっと腑に落ちない。
 うちの弟でもこのぐらいの歳になってベタベタしたらキレたから、仕方がないんだろうけど。男の子って変な所で複雑だから。
 悪いのは私だし我慢我慢。
「じゃ、着替えてくる」
「あの……海は?」
「嫌だ。行くなら一人で行ってこい。私はロビーでコーヒー飲んでる」
「だよねー」
 ほんと悪いけど、無理。海怖い。ビーチ怖い。魚怖い。マジ怖い。
 バスルームでさっと着替えて出てくると、ハルトがベッドの上でごろごろと寝返りを打って遊んでいた。
 化粧するための荷物をあさると、ハルトが身を起こした。
「ねぇ、ハルカさん。なんでそんなに恐がりなのにホラー好きなの?」
「フィクションは良いの」
 本物は求めていない。くんなボケ。アホ。カス。死ね。成仏しやがれ。
「しばらくホラー見るのはよしたら?」
 …………。
「うん」
 そうしよう。うん、そうしよう。
 帰ってもハルナ……いないんだよな。思い出して怖い時、逃げる先がハルトしかない。ハルトは嫌がるだろうから、物音に怯えて狭い部屋の中で丸まっていなければならない。
「あーあ、ハルナんち泊まりに行こうかな」
「迷惑だからやめなって。ハルナちゃんちマンションなんだろ」
 うん、客室とかない、普通のマンションだ。
「ハルカさん、よく一人暮らししてたよね。二年ぐらいは一人だったんだよね?」
「うん。夜とかたまに眠れない日とかあった。ホラーゲームやった時とか」
「それでも手を出すのが信じられないよ」
 うん、私の反応を思い出すと恥ずかしいほど過剰だ。ホラーなんて見るなと言いたい気持ちも分かる。
「あんな狭い所で寝ているのも、広い所だといろいろと目をやる場所があって怖いからというのもある」
「…………一人で怖かったんだね」
 そうだよ。私はビビリなんだよ。ビビリなのに心霊特集見てしまうんだよ。その夜は思い出して眠れなくてもまた繰り返すんだよ。とくに実話系の心霊特集がダメなのに好きなんだよ。
「しょうがないか。で、これからどこ行く? どこなら行きたい?」
「海以外なら。琉球村とか、植物園もあったと思うよ。今日のホテルに向かいつつ、寄れる観光名所に寄ってこうか。明日は市場に行く予定だけど」
「うん」
 海以外にも沖縄には良い所がいっぱいある。前回、雨が降っていたからろくな観光をしていないから、もう一度行くのもいいだろう。
「んじゃ、化粧するからちょっと待っててね」
「うん」
 鏡に向かう私を、じぃぃっと見つめてくるハルト。
 なんでも、女が化粧をして変わっていく様が面白いらしい。
 変な子だ。


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2010/07/05   推定家族   799コメント 4     [編集]

Comment

 

-6095     2010/07/05   [編集]     _

珍しくハルカさんが可愛い!

い~じ~えいと6096     2010/07/06   [編集]     _

某いじめっ子達は心霊系で攻めればよかったのか…

Rinka6097     2010/07/06   [編集]     _

ハルト君、ハルカさんの念願の水着は見れないけれど、一緒のベッドで寝れたんだからプラマイで考えればプラスだよ、きっと!

アイダ6098     2010/07/06   [編集]     _

怖いもの見たさって大変ですね。後で絶対後悔するのに心霊特集とか見ちゃうんだから


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