白夜城ブログ

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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

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 ということで、私は登校すると証拠の一部を手にして鈴木グループの所に向かった。
「鈴木さん、いいかな」
 私が声をかけるも、みんな無視して会話を続けた。
「ねぇ、大切な話だよ」
 無視。
「理解してないみたいだから言うけど、前に録音した音声流すよ。いいよね?」
 無視……仕切れなくて、ちらりとこちらを見た。
「止めないって事は、承諾って事だね」
 さすがに鈴木さんが顔を顰めて何かを言おうとした。ま、聞こえる声で言ったのに、無視したこいつが悪い。すぐに察してれば、人気のない所まで移動してやったのにさ。
「いくよ」
 本当に仕方がないので、ボリュームをうんと上げてから、壊されてもいい古い携帯オーディオプレーヤーのスイッチを押す。
『ざまあみろ橘川、死ねっ、あははははっ』
 と不気味な笑い声とジョキジョキ音が教室中に鳴り響いた。
 音が止むと、次にすぐ別の音が出る
『児玉君、ほんとあの女ムカツクの。ちょっとからかいたいんだけどさぁ、協力してくれない?』
『協力? するよ。何でも言って』
『簡単よ。ちょっと告白ごっこしてみようよ。どんな反応するか楽しみじゃない?』
『あいつでも浮かれたりするのかなぁ』
『あはははっ』
 と、少なくとも問題の二人と、他に最低でも二人の女子生徒が一緒に悪巧みをする音声が響く。
 教室がどよめき、多くの生徒が顔を見合わせた。その表情にはいくつか種類があるけれど。
「う、うそよ、そんなの」
 鈴木は私の手からプレイヤーを奪い取り、中身を取り出してテープを引き出した。
「それ、コピーだから無駄。他人の物を壊すのは犯罪。罪を重ねてどうすんの」
「ま……まさかずっと盗聴……」
「盗聴じゃないよ。自分の身を守るため、自分の鞄にいっつもボイスレコーダーとか入れてただけ。盗聴ってのは、他人の家に侵入して盗聴器を取り付けたりする事。これはただの録音。合法」
 じゃないと、ドライブレコーダーも盗撮になっちゃうよ。
 私はにんまり笑って、クラスを見回した。やばい事をしてた事があるのか、何人か青ざめている。ぶっちゃけ、何かされた時の前後ぐらいしか記録してないから、ビビる必要はないんだけどねぇ。鈴木の犯罪に荷担してなきゃさ。
「私さぁ、児玉に胸ぐら掴まれたんだよねぇ。思いっきり股間蹴り上げて逃げたけど、最近は本気で身の危険感じるから、やめないなら告訴するって決めたから」
「こ、告訴!?」
「うん。告訴。被害届を出すんじゃなくて告訴。
 前にもちゃんと笑ってた所を文章化して渡して証拠はあるって示したのに、反省するどころか悪化したから、それしかないよね」
 私は取り巻き連中に笑みを向ける。彼女たちの顔から血の気が引いていく。
 録音されて警察沙汰ってのが、彼女たちにとってはよほど刺激的だったのか、立っていた子が腰を抜かして倒れた。
「わ、私は未成年だから、この程度の事で警察が動くはずないでしょ」
 鈴木が声を震わせて言った。
「あんた四月とか五月生まれでしょ。刑事で罪が問えないのは13歳まで。
 少なくとも、体操服をジョキジョキとか、物を盗むとかは完璧刑事事件だから。うちの父さんの会社に、こういう事に強い弁護士がいるんだって。うち、成金だからお金はあるし、費用とか気にならないからさぁ。
 それにあんた、証拠がこれだけだと思ってるの?」
 鈴木の表情が凍り付いた。
 ビビってるヒビってる。
 っていうか、自分でヤバイと思うならそんな事するなよ。私の知らないやばい事もやってたりして。
「あ、あんただって、人の机にっ」
「何の事? 私は何かされる度に苦情は言ったけど、バカじゃないから危害なんて加えてないよ。あんた人に恨み買いまくってる自覚無いの? ひょっとして常識どころか、想像力もないの?」
 彼女の方に証拠なんて無いはずだ。ダンボールももう処分されているし、そもそも百均で買った手袋して実行した。なかに入れた蛇の玩具は別の店で買った。防犯カメラの映像も、一週間程度しか記録されていない。
 つまり犯人なんてこいつにはどうやっても特定できないのだ。
 詰めの甘い女。
「今までせっせと貯めた証拠引っさげて、徹底的に闘う事になるかも知れない。このクラス全体に関わる事になるかも知れないから、みんなに宣言しておくよ。あ、脅しじゃないから。こういう風に言って訴えないと、脅迫になるんだって。だからやめなかったら告訴する。私の知らない人からでも、身の危険を感じるような事をされたら告訴する。さっきみたいに誰かを使う前例があるから。
 あ、今ごろ、鈴木の親の所にうちの母さんが行ってるよ。あんた反省しないタイプだし、握りつぶされないよう、父親の所にね」
 私はそれだけ言うと、震える鈴木と取り巻きを放置して、自分の席に着いた。
 私は今正しく『腫れ物』だろう。小気味よい。
 人の善意を信じるのはやめた。
 性善説は優しいが、性悪説をこれからは信じよう。
 私はもう少し悪意に敏感にならなくてはならないようだ。ま、悪意をぶつけてくる馬鹿者はいなくなると思うけど。


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2010/06/24   推定家族   789コメント 8     [編集]

Comment

 

れん6028   かっこいい。   2010/06/24   [編集]     _

素直にかっこいい~と思いました。
こんな友達が身近にいたら楽しかったろうな。

ヤマメ6029     2010/06/24   [編集]     _

人をおとしめたいのならもう少し考えて策を練るべきだね。
そんなんだから仕返しされるんですよ

-6030     2010/06/24   [編集]     _

すげぇ……
私もこうやってはっきり言ってみたいです。

Rinka6031   ハルカさん強い!   2010/06/25   [編集]     _

 ハルカさん流石!泣き寝入りしないところが一番素敵です。
 ただ・・・ハルカさん。「性善説=世の中の人は基本善人」「性悪説=世の中の人は基本悪人」ではないですよ(私の知識は創○伝二巻の受けうり程度ですが、ウィキでも、性善説も性悪説も「努力して徳の高い良い人間になりましょう」と書いてあります。性悪説がとなえられたころ悪という概念自体がなく、この場合の悪とは無秩序、混沌という意味で「法や秩序を整えよう」みたいな感じだったとのことです)。

-6032     2010/06/25   [編集]     _

小気味いい~!こっちもすっきりした!

社怪人6033   やるのなら……   2010/06/25   [編集]     _

やりかえされることを考えてやらなければ……

覚悟が足りないねw

マナ6034     2010/06/25   [編集]     _

……ハルカさんはハルカさんってことですね。うん、強い。

-6035     2010/06/25   [編集]     _

絶対泣き寝入りしない根性が素晴しい!

鈴木さんは 人を呪わば穴二つ ということを学ぶべき。
要はそんなことしなければいいのです。

気に入らない人は貶めてもいいなんて、自分勝手で恐ろしい思い込みから抜け出せたらいいですね。

学びのきっかけにもなるから、やっぱり泣き寝入りはダメだと思う。
でもなかなかここまで気が強くはなれないよね…


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