白夜城ブログ

12

 男友達の良さを、この人形師に教える方法を聖良はない知恵を絞った考えた。
 考えた結果、無理だと悟った。
「人の考えを変えるのは難しいですね」
「そうだな」
「私と貴方は永遠に平行線でしょう」
「そうか」
 聖良は目を背け、人形師は聖良を見つめる。しばしの時が流れ、人形師が目を逸らした。
「……誰かが外で騒いでいる」
 呟きを耳にすると、聖良は振り返ってドアを見た。
「アーネスですか」
「おそらくそうだろう。早かったな」
 聖良はほっと息をついた。
「ご主人様。フレア様がお呼びです」
 聖良の広報にいる人形が、人形師に話しかけた。
「そうか」
 人形師は目を伏せ、聖良は首を傾げた。
「お人形さん、どうしてそんな事分かるんですか?」
「人形同士はつながっている。ペミアはその中でも中継点だ。情報を集めている」
「ペミア……っていうんですか、妹さん」
「そうだ」
 聖良の後ろに残っているのは、フレアが気にしていた、人形師によく似た人形だ。美しく、無機質で、冷たく、心がない。
「私には、あんな物を作る貴方が理解できません。動物だってなんだって、生きていない人形よりは慰めになります」
「動物など見ていてもつまらない」
「そんな事ないですよ。犬とか忠実で癒されますし、猫とか見てると楽しいですよ」
「すぐ死ぬ生き物は好かない」
「死んでしまうけど増やせば寂しくないですよ」
「……竜ならいいな」
「それはダメです。それ以外の長命な魔物にしてください」
「基本的に悪魔と竜以外は、それほど寿命は長くない」
「エルフとかは?」
「生きてせいぜい400年。200年も過ぎればババアだ」
「そーですかそーですか」
 聖良はため息をついた。
 男、歳を取る女、動物、すべてダメでは打つ手がない。
「ご主人様、フレア様が参りました」
「通せ」
 聖良はほっと息をついた。
 少しでも早く生きた人間らしい友人達の顔を見るため、立ち上がって出口に向かう。
 ドアの前に立つと、外から勝手に開き、聖良は廊下に出た。
「セーラ」
 竜のアディスの声につられて視線を向ければ、アディスの姿はなく、その部下二人と一緒にいた連れた連れ達と、ディの背中に白い子供が一人いた。
「げっ」
 子供はアディスの声を喉から洩らして、ディの背中に隠れる。
「今、すごく可愛いのがいませんでした」
 何がいたと言われれば、可愛い子だった。
「長ですよー。ちっこくならないと道を通れないから、頑張ってこんな姿になって迎えに来たんだぜ」
 ディが背を向け、子供の姿のアディスを見せた。
 身体の至る所は竜の皮膚のまま、マントに隠れているが、背中には翼があり、とても可愛い。
「ちょ、何をしてるんですか! 絞めますよ」
 聖良はディの背中で暴れるアディスを見上げ、手を伸ばした。
「私も、私も」
「はいはい。ご指名ですよー」
 ディの背中から下ろされたアディスは、聖良よりも小さく、不完全な人の形で、とても微笑ましかった。
「可愛い」
 思わず抱きつくと、アディスは大人しく受け入れる。
「だからいやだったのに」
「どうしてですか。可愛いのに」
「私は男です。好きな女性の前に、こんな不完全な姿を見せるなど……」
 大袈裟ではなく、冗談でもなく、唇を尖らせて素で洩らした彼の言葉に聖良は戸惑った。
「か、完璧な姿はどうでもいいんです」
 深く考える前に、聖良はそう言いきった。
「この可愛らしいバランスがいいんです。アディスだと分かっているのに抱きしめたいほど愛らしいんです」
「私のアイデンティティ全否定しないでください。完璧を目指している男なんですから」
「完璧な人は、家でごろごろしません」
「手厳しいですね……。
 怪我はありませんか。何か嫌な事をされませんでしたか?」
 アディスは鋭い爪がついた指で聖良の頬に触れた。氷のように冷たい手だ。ただでさえ体温が低いのに、地下だから冷えてしまったのだろう。
「見つめられ続けただけです」
「ああ、私がもっと早く駆けつけていればっ」
「私が怖がったらお人形さんも見えない所まで下げてくれたし、仮面も外してくれたので、そこまで怖くはなかったですよ。この廊下が一番怖いです」
「そうですね。帰りましょう」
 アディスが聖良の手を取り微笑んだが、すぐに顔を顰めて見上げた。
 聖良が振り返れば、人形師が二人へと迫っていた。
「お兄様、私怒ってるのよ! どうしてモリィをさらっていくの!?」
 フレアの抗議など耳にも貸さず、人形師はアディスとセーラを見下ろした。
「可愛い」
 アディスと聖良の頭をなでる。聖良は抗議しようかと手を上げたが、すぐに思い直した。
「人形師さん、可愛いと思うなら、たまには男の子の友達を作りましょうよ」
 こんな姿を見られてしまったのだから、最早隠すだけ無駄だ。
「ちょっ!? 何言って!?」
「黙ってて」
 聖良がぴしゃり言えば、口を閉ざす。
「これはアーネスか。実力の割に情報がないから不思議な男だと思っていたが……」
 アディスはぷいと顔を逸らした。
「子供は大人の男と違って可愛いな。また今度遊びに来るといい」
「いや、その……」
 アディスは目を逸らし、全身から来たくないと言いたそうな雰囲気を放っていた。
「この先長いんですから、お友達にぐらいなってあげましょうよ。じゃないと女の子がまた犠牲になるんですよ」
「そんなのエルフの美女でもさらってこればいいのに」
「エルフでも劣化が早いそうです」
「…………そうですか」
 アディスはため息をついた。そしてカランを見た。
「人形師、この子に何か面白い魔導具をこのカランに見せてもらえませんか」
「魔導具? 人形達は魔導具の一種だが」
 それを聞いたとたん、カランが興味深げに人形に触れ、スカートをめくろうとしてフレアに止められた。
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2010/06/22   下書き   787コメント 4     [編集]

Comment

 

とーこ6016     2010/06/22   [編集]     _

人形師に友達を作ってもらおう作戦です。
本人達の承諾などいりません。
なれ合ってしまえば儲け物です。

-6020     2010/06/24   [編集]     _

カ、可愛い!!竜肌に背中に翼なんて可愛さの極みですね♪セーラに膝抱っこさせて下さい!!ちっちゃい子がちっちゃい子を抱いてるとか堪らなく可愛いですよね。

ろい6024     2010/06/24   [編集]     _

セーラと人形師にショターなフラグが!!

青色吐息ファン6026   わー!   2010/06/24   [編集]     _

先日web拍手を送ったものです、もし急かしてしまったようでしたらすみません…!

肉体的には完全にそうなのだと思いますが、アディスはどんどん人間から竜に近付いてますね。
可愛さにキュンキュンしていたのですが、最後のカランのジョブにやられてしまいました。
人形師似友達が出来て、フレアと聖良の心配事が減ると良いですね…!


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