白夜城ブログ

9

 目には目を歯には歯を。
 それが我が家のモットーだ。
 食事中、再び作戦会議が開かれた。
「問題は児玉なんだよねぇ」
 私は箸を片手に呟いた。
「恋する男の子って何するか分からないものねぇ。どうしようもなくバカになっちゃうのよ」
「そんな腐った女にどうやったら惚れられるんだろう。わっかんないなぁ」
 母と弟がそれぞれ好きな事を言う。
「顔じゃない。寸胴でくびれがないドラム缶体型だけど、顔だけは可愛いから」
 児玉には腹も立つし、もしも私に直接危害を加えるならあの男だろう。だから厄介なのだ。
「そうそう姉ちゃん、トキさんは関係ないみたいだから許してやりなよ。本当に心配してるよ。たまたま交友関係が被ってただけだろ」
「そんな事はどうでもいい。私は今、鈴木をどうするかしか考える余裕はない」
 正直ホントどうでもいい。
 人が証拠のデータを編集しているのにわざわざ来て、邪魔をしてくれたんだ。
 もちろん中身を弄ったりはしない。元データはちゃんととってあるけど、前後が長いから抜き出して、すぐに証拠を見せられるようにしていただけだ。
「今はあの懲りない女をどうぶっ潰すかよ。男を使うとか、女の風上にも置けないクソ女をどう料理するかよ」
「証拠はあるんだから、警察に出せばいいじゃない」
 母さんが当たり前の事のように言った。
 確かに証拠はある。たまたま私の体操服がズタズタにされていた日、たまたまスイッチを入れっぱなしにしていたボイスレコーダー。それを文章化して本人に渡してやった事もある。
 それ以来、本人は大人しくなったが、本人以外が何かと動くようになった。
 私のその当時友人だった子を、私を無視するように取り込んだり。漫画とかで見た事あるけど、本当にいるとは思わなかった。ある意味、鈴木の悪役っぷりはすごい。普通はそんなに出来ないよ。
 ま、現在は元友達だ。オタク仲間にもハブられぎみになっているらしい。保身のために人を切り捨てる奴は、それを見ていた人に切り捨てられるもんである。そういうのソエさんが嫌いそうだから、ま、そんなもんだろ。
 ソエさんはいい人だし分かりやすい人だが、布教活動の激しい所がちょっと苦手だ。
「警察って嫌がられない? 未成年相手だと相手にしてもらえないと思うけど」
 なんか誕生日が早いと忘れられる~だとか騒いでたから、誕生日は来ているはずだ。それでもまだ14歳。
「さすがにそれは最終手段だろ」
 極端な母と打って変わって、冷静な弟が言った。
「まずはやめなきゃ訴える事を本人とその周りに伝えろよ。器物損壊って親告罪だけど、刑事告訴だよ。さすがに刑事事件に巻き込まれたくないだろ、そのバカ男も。確かバカ男との会話もあるんだろ」
「うん。命令されて、引き受けてる所はばっちり聞こえる。私を襲った時の録音もあるよ。
 でも……なんでそんなに詳しいの。弁護士狙ってる?」
「友達んチの車が傷つけられて調べたんだよ。そいつんちパソコンないらしいからさ。
 近所の人が目撃してたから犯人は近所の高校生が蹴ってたってのが分かってたから、訴えられたくなければ修理費払えって。
 ごねたらしいけど、訴えると言って訴えなかったら脅迫になるから、払わなかったら本当に訴えるってのを強調してもらったら、素直に払ったって」
 なるほどなるほど。しかしなんて怖い小学生だ。私も見習おう。
「じゃあ、まずは脅迫紛いの事をして、やめなかったら告訴って事で」
「そうね。そうしましょう。
 これだけ証拠があれば、相手が未成年、面倒くさいって理由じゃ警察だって受理しないわけにはいかないのよ。理由を説明する義務があるから。
 それでもダメなら弁護士に頼むわ。うちはお金だけなら余ってるから。ねえ、あなた」
 ビールを飲んでいた父さんは、グラスを置いて頷いた。
「そうだね。普通はお金と時間が掛かりますよって考え直す説得するみたいだけど、うちは資金面についてはあぶく銭があるからね。ハルカちゃんのためならいくら使っても惜しくないよ。父さんは頑張るよ」
「いや、くじ当てたの母さん」
 父さんが何を頑張るんだ。
「う……弁護士の事とか。
 よく深刻なストーカー被害があるのに不受理になる事で問題になる事が多いけど、知っているかい。警察は告訴を受理しなければならないんだよ。悪いのはマスコミだね。警察の言う民事不介入とやらが、まるで正しいように宣伝しているんだ。
 面倒くさい仕事をやりたくないから突っぱねているけど、内容証明で強く処罰して欲しいって告訴状を送れば、最低限は動かざるを得ないんだよ。
 うちの会社の女の子もそうやって警察を動かした事があるんだ。社内のアイドルだから、みんな協力してね、仕事でもあんなに協力し合っている姿は見た事無かったな。その時に頼ったうちの会社の顧問弁護士さんが頼りになるから、安心して良いよ」
 こういうコネは、大人ならではだ。
「ふーん。じゃあ早速明日に脅してくるよ」
「ああ。何だったら母さんも連れて行くかい」
「いいよ。この時点ではまだ子供の喧嘩だから」
 抵抗したら、大人にバトンタッチするけどね。

backmenunext


図解裁判・訴訟のしくみがわかる事典改訂新版

誤字の報告はこのフォームからお願いします


魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

2010/06/20   推定家族   785コメント 5     [編集]

Comment

 

とーこ6010     2010/06/20   [編集]     _

最近はストーカー殺人で警察がバッシングされる事が多いから、都会では民事不介入って追い返す事が少なくなったらしいです。
これはあくまでも過去話です。
あと、被害届を出すのと告訴は別物です。
被害届は握りつぶせますが、告訴は出来ません。
不安なら内容証明で送って、さらに不安なら行政書士さんに頼みましょう。
キモいからと、証拠を捨てたらいけません。
私もすんごい捨てたかったけど、友人に止められて、引っ越すまではとっといた。

確か引っ越して落ち着いた後に、このサイト作った気がする。開放感の余りハイテンションだった。

しったら6011     2010/06/20   [編集]     _

とーこさん、ストーカー被害にあってたんですね。。。過去のことになってよかったですね!

-6012     2010/06/21   [編集]     _

ものすごくためになります

6013     2010/06/21   [編集]     _

これは知らなかった。真剣に読みました。

とーこ6014     2010/06/21   [編集]     _

被害届と告訴の違いとか、意外と知らない人が多いみたいなんですよね
マスコミは叩くだけで、どうすればいいのか教えないんですよね
警察が教えないのは、面倒くさいからだろうけど、マスコミは何でそういう特集組まないんだろうかと思います


Pass:   非公開:    

.

最新記事のRSS

.

更新履歴 カテゴリ コメント

.

.

拍手

.

リンク

.



.

.

.