白夜城ブログ

6 (中二時代)


 真琴が告白すると宣言した翌日。
 通学路で出会った真琴の頬が心なしか腫れていて、不機嫌で、殺気立っていた。
「ど、どうしたの?」
「…………ふられた」
「…………ふら……れた」
 真琴がこの夜の終わりかというような、暗く、重く、陰鬱な声を絞り出すようにして言った。
「ふ、振った!?」
 ハルカちゃんが、この真琴を!? 僕の目から見ても、ハルカちゃんには勿体ないいい男なのに!
「それがなんでそんな……」
 明らかに殴られたように頬を腫らしてるの?
「これは、俺が悪いんだ。ちゃんと調べてから行けばよかったのに……」
「調べてからって?」
「橘川……」
 真琴は言葉を詰まらせ、息を吐いた。あまり眠っていないのだろう。目の下にはくまがある。
「橘川をからかうために告白した奴がいたんだって……それと同類だと思われて、クズとかいっぺん死ねとか……」
 頬が腫れているのは、本気で殴られたからだろう。
 こういう時、僕はなんて言えばいいんだろうか。
 クズとか、死ねとか、好きな相手に言われたら、僕なら立ち直れない。
 ハルカちゃんは直接関わったから犯人を知っているだろう。なら何かしている可能性がある。
「真琴……」
 悪いのはクズと本来言われるべき奴らだ。ハルカちゃんも悪くはない。いきなりこの真琴に告白をされれば、誰だって信じられない。信じられなくなる事をされてそれほど時間も経っていないだろう。なら、仕方がない。真琴もそれを分かっている。
「その時泣きながらとかじゃなくて、本当にゴミを見るみたいな目で……」
 う……ハルカちゃんらしい。
「痺れた」
 真琴はまるでのろけるかのように、恍然と目を蕩かせて言った。
 殴られて、ゴミみたいに見られて、彼は惚れ直したと。
「…………真琴、マゾっぽいから」
「そんなんじゃねーよ」
 どこまで強い女が好きなんだ。僕が仮に女の子だとしても、真琴の好みではないらしい。僕にはあんな風に出来ない。さすがに泣くよ。
「ま、橘川の反応はともかくさ、トキ……」
「う、うん」
「俺、潰すよ」
「へ?」
 何を。
「今までは人の話は聞いててから行動してた橘川をあんな風にさせたんだ。本当に俺達が思っているよりも非道い事を……そんな非道い事する奴」
 真琴はくっと笑った。
「生かしてなんておけないよな」
 …………いや、あの。
「い、生かしてって……」
 僕は思わず身を引いた。
 くっと笑う彼のいつもは快活な目に、暗い情念が浮かんでいた。
 彼はいつも明るく爽やかだが、怒る時は怒る。それこそ、ハルカちゃんのように、徹底的に叩きつぶすような、そんな怒り方をする。
 僕はそれを見ていられず、目を逸らした。
 真琴が誤解を解こうとすれば、ハルカちゃんは警戒する。そうすると、ますます真琴が傷つく事になる。
 だから
「ぼ、僕が一回話してみるよ。落ち着いて。ね? 本人の意向を聞こうよ」
 やるのは、ちゃんと調べてからじゃないとね。
 先延ばしにしていた話し合いを、そろそろした方がいい。性別は違うけど、僕はハルカちゃんの友達なんだから。



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2010/06/16   推定家族   781コメント 4     [編集]

Comment

 

からす5995     2010/06/17   [編集]     _

真琴君ンンンッ!!??

なんだろ、この悲劇なのか喜劇なのか分からない中学時代・・・
楽しすぎますww

-5997     2010/06/17   [編集]     _

なんかもう真琴君がマゾにしか見えない(笑
おもしろすぎるっっ

うに5998     2010/06/17   [編集]     _

青春ですね。分かります。
向かう先がアレな感じがwww

鮫。5999     2010/06/17   [編集]     _

真琴くん最高♪
ハルカさんと組んだら敵なしですね(笑)
+ストッパーのトキで三人で結婚しちゃえばいいと思います。
ハルトくんは三人の子供ポジションでいんじゃないかな(笑)


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