白夜城ブログ

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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

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 夜の祭りは華やかだ。色とりどりの夜店に、食べ物に、ゲームに、着飾った人々。盆踊りはもう少し後だが、人が多くなるので子供達を連れて近づかせるのは不安がある。田舎の神社で行われる祭りだから、さすがに花火はない。一体何の祭りだかは知らないぐらいだ。
 メロちゃんはきょろきょろしながら、夜店を見ることに夢中になっている。子供だからか、やはり本当は珍しいのか。とにかく私は彼女とはぐれないよう、しっかりと手を握っていた。握った手をふりほどこうともしないし、逆にぎゅっと引っ付いてくる。
 亜子ちゃんも連れてきたけど、今はハルトが抱っこしている。
「ハルカさん、綿菓子屋さんだよ。亜子ちゃんの綿菓子どれがいいかな?」
 亜子ちゃんには綿菓子でも食べさせておいてくれと言われている。ただ棒は持たせちゃダメと念押しされた。
 ハルトは絶対に怪我などさせてたまるかといった表情で、亜子ちゃんを抱きしめて、亜子ちゃんに袋を見せた。
「きてー」
「これがいい? おじさん、これちょうだい」
 私は500円玉をポケットから取り出した。5000円札は、ばあちゃんの500円玉貯金で両替してもらったのだ。
 私と手をつなぐメロちゃんは、指をくわえてその様子を見ていた。だが自分も欲しいとは言わない。
「メロちゃんも欲しい?」
 試しに聞いてみるが、ふるふると首を横に振る。
 袋が可愛いから見てるだけかもしれないし、遠慮しているのかもしれないし、欲しい物が他にあって我慢しているのかもしれない。だとしたら、我慢できるところは立派だ。分け合えばばいいのに、袋ほしさに泣き叫ぶ子供とかは苦手だから、とても好ましい。
 とは言ってもまだこの子の事はよく分からないし、ここは帰りも通るから後でもう一度聞いてみよう。行きに買う必要はない。
 ハルトが少し開いた所に亜子ちゃんをおろして、袋を開けて中身をちぎり取って渡す。
「おいしい?」
「うん、おいち」
 亜子ちゃんの笑顔を見て、だらしなく笑うハルト。亜子ちゃんは袋に手を入れて、綿菓子をちぎると、はいと言ってハルナに差し出した。
「わぁ、ありがとう」
 亜子ちゃんは次にメロちゃんに綿菓子を差し出す。メロちゃんはキョロキョロした後、恐る恐る綿菓子を受け取った。しばし観察した後、亜子ちゃんを見習って口に含む。
「あまーい」
 喜ぶイトコの姿を見て、グル君が微笑んだ。
「人形焼きも食べる?」
「……にんぎょうやき?」
「カステラみたいなやつ」
「かすてら?」
 まあ、食べない家庭は食べないしね。
「ほら、ここで売ってるやつだよ」
 グル君はメロちゃんを抱き上げて、キャラクター物の人形焼きを焼いているところを見せた。
 メロちゃんには珍しいらしく、食い入るように見つめる。
「なんか見るのに夢中だね。亜子ちゃんも見る?」
「うん」
 子供にとっては楽しい光景だろう。大人が見てもけっこう楽しいんだから。二人のおちびさんは、食い入るようにその様子を見た。
「おじさん、これ一つちょうだい」
 私は中サイズの袋を買うと、抱き上げられたままのメロちゃんに一つ渡した。袋を持たせて転んだら大変だから、基本は一つずつ。
「かわいー」
「がぶっと食べちゃって。こう、かぶっと」
 可愛いさのあまりずっと持っていそうだったから、私は自分で一つ取り出してがぶっとかじり付く。
 メロちゃんはそれを見てがぶっと頭から食べた。
「おいしい。あまいねー」
「美味しいか。ありがとねー」
 屋台のおじさんが、子供の喜ぶ姿を見て相好を崩す。
 亜子ちゃんも手を伸ばすから一つあげる。
 食べさせすぎるのも良くないから、一つだけ。
 グル君が抱き上げるのに疲れたのか、メロちゃんを下におろしたから、残りはグル君に任せた。
「メロちゃん、もっと食べる?」
「うん」
「あ、他にも買うから、あんまり食べさせないでね」
「うん、分かってるよ」
 さて、次はどうしようかな。
「私チョコバナナ食べたい。メロちゃんチョコバナナ好き?」
「チョコレートはすき。バナナもすき」
 チョコバナナも食べた事はないのか。私はあの組み合わせは大好きなのだ。もうホント美味しい。
「ねぇねぇ、おねーちゃん。どうしてこんなに色々くれるの?」
 初めてあった他人が、いろいろと買ってくれるのが変なのだろう。私だって理解していなかったらおかしく思っていたに違いない。
「お父さんは忙しいし、メロちゃんが退屈しないように、お小遣いをもらえたからだよ。みんなで食べると美味しいからね」
「ママはいつも一人で食べてたよ」
 私たちは顔を見合わせた。
 お祭りは珍しくないと言っていた。じゃあ何が珍しい?
「お祭りに来たとき、ママに買ってもらえなかったの?」
「うん」
「ママは何してたの?」
「みんなとお酒のむの」
 …………子供がいて、酒だけ?
「パパは?」
「おしごと」
「ママって、普段何してた?」
「うーん……おともだちといたり、おさけ飲んでたの」
「メロちゃん、ご飯食べさせてもらってた?」
 この子めっちゃ細いんだけど……。
「うん。ラーメンつくれるよ」
「い……いつもラーメン?」
 しかも自分で……。
「ううん。やきそばとパスタもあるの」
 どうせ冷凍とかレトルトとかカップだろう。
「ネグレクトはしていないみたいだけど……近い事はしてたのかな」
「父さんに言っとくよ。ほっとけない」
 グル君の将来どころか、小さな女の子の将来もめちゃくちゃにしそうだからなぁ、この子の両親。
 まあ、グル君のお父さんはしっかりした人だから他人の私がこれ以上心配する必要もないだろうけど……大変だろうな。


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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
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2010/06/13   推定家族   778コメント 6     [編集]

Comment

 

takk5964     2010/06/13   [編集]     _

とりあえずメロちゃんおいくつで?自分料理らしきものができるようになったの小学校高学年ぐらいになってからだったんですが。見た目は5歳児なんですよね。虐待のせいで育ちが遅いのか。歳にあわないほど器用なのか。

とーこ5965     2010/06/13   [編集]     _

幼稚園児がポットから湯を入れたり、レンチンしています。それぐらいなら私も出来たような記憶があります。

あいね5969     2010/06/14   [編集]     _

 ウチの兄は小学3年生ぐらいで超カンタンな料理してました。卵焼きやゆで卵やベーコン炒めなんか。ウチの母は小学校高学年の調理実習が始まるまで包丁と火を一切扱わせない方針だったようなので、おそらく独学………。幼くても飢えたらガンバりますよね、人間って………。

すずめ5970     2010/06/14   [編集]     _

小学2年生でうさぎりんごとか、途中で皮が切れないように梨だの柿だのをむいたりはできましたねえ。
「自分で皮がむけたら勝手に食べてもよし」という我が家ルールがあったので。食い意地が(笑)
包丁初めて持ったのいつだったか記憶にありません(^^;)

ネグレクト気味だとレンチンとかはともかく、自分で料理するって発想が出てくるのが遅くなりそうですねえ……親がまともに料理してる姿をあまり見てなさそうで(>_<)

きょん5971     2010/06/14   [編集]     _

幼稚園くらいから我が家の教育方針で包丁とかは握らされてました。

けど、幼い子ってやっぱり親を見て育つものですし、こういう子の親もレトルトばっか食べてるんですかねぇ……。

照葉5973     2010/06/15   [編集]     _

私は幼稚園の頃、母が身体を悪くして寝込んでたんで、レンチンやお湯沸かすぐらいはやってた覚えがあります。
教えてもらったからですが、茹で卵も作れたし、梨もむけました。
あと、トースターは大活躍。


…あんまり関係ないけど、ひとりでできるもんのまいちゃんを思い出しました。


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