白夜城ブログ

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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

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52

 親戚関係っていうのは難しい。
 ほとんど顔を合わせた事が無くても、他人ではないのが厄介だ。
 いい事もある。知らない人の遺産が入ってくるとか。でも悪い事の方が多いだろう。とくに見ず知らずの親戚は。
 グル君には可哀相だが、こればかりは祈るしかない。
 ハルトが見つけた葬式泥棒は、紐でぐるぐる巻にして、外からカギの掛かる部屋に閉じこめておいたそうだ。古い建物だから、熱射病で死ぬほどは熱くならないだろう。今日は比較的涼しいのだ。
「おかあさん、おしっこ」
 女の子がここんちの長女の手を引っ張っていた。
「もう少し我慢してなさい」
「むぅりぃ。ついてきて」
「一人で行きなさい」
「ここのトイレ怖いからやぁ!」
 子供の尿意なんてそんなもんだ。ちなみにトイレの雰囲気は確かに怖い。
「しぃぃっ。ほらおいで。お姉ちゃんも怖いから一緒についてきてくれる?」
「うん」
 女の子は私の方まで走って来る。
「いいの?」
「はい」
 ちょうどトイレ行きたかったから。
 私は手を引いてトイレまで行く。流石に水洗だが、古びた和式トイレで、下から何か出てきそうで怖い。
 彼女も怖がるからちょっとドアを開けて待ってやる。分かるわぁ、この気持ち。いい年した大人が言ったら恥ずかしいから言わないけど、他人の家のトイレって怖いよね。自分の家のトイレだと落ち着くけど。
 ちびっ子が手を洗って、手を拭いた。
「待っててね」
「うん、待ってるよ」
 とはいえトイレの前が怖いのか、
「いるー?」
「いるよ。いなかったら怖いよ。私どこにいるの」
「そうだねー」
 返事しなかったら君も怖いでしょうに。私は急いでトイレから出ると、ドアの前には女の子がいなかった。ただ、廊下をパタパタ走る音だけが聞こえ、慌ててそれを追った。
「どこ行くの?」
 女の子は来た方とは違う所に向って走ている。私は彼女を追って走るが、すぐにどこに向かっているのか見当がついた。
 案の定、あの子は葬式泥棒のおっさんが閉じこめられている部屋の前に座り込んでいた。
「おじさん、どうして悪い事するの?」
「っせぇ、ガキ! どっか行けよ!」
 子供の純粋さに怯えて、おっさんは威嚇した。情けない……。
「子供に八つ当たりしてんじゃないよ。ほら、おじさん怒ってるから、みんなの所に戻りなさい」
「はーい」
 ちょっと不服そうに、女の子はさっきいた部屋に戻った。ため息が出るよ。
「ちょっとは恥ずかしいって思ってる?」
「なんだてめぇは」
「情けなくない? 借金押しつけて逃げたのに、母親はちゃんと考えてくれてたなんてさ」
「…………」
「一応、黒い服を着てたって事は葬式に出る気ぐらいはあったんでしょ?」
「っ……」
「なんで葬式前にあんな事したの?」
 答えはなかなか返ってこない。
「……あんた、誰だよ」
 答えではなく問いであった。
「桜庭のじじいの孫だよ」
「ジジイの孫が何の用だよ」
「通りかかったから何となく。金の事を全部母親に頼る情けない男が珍しくてねぇ」
「た、頼ってなんか……」
「また借金でもあるの?」
「っ……」
「借金する男なんてサイテー」
「お、俺の借金じゃねぇ……」
「保証人にでもなったの? 保証人になるってのは借金するのと同じだよ。身の丈に合わない事をするのは馬鹿のする事だね」
 本当に、世間もあれだけ保証人にはなるなって風潮なのに。
 おっさんは私の罵倒を聞くと、ついに黙ってしまった。
「なんで一度借金したのに、また借金に関係する事に手を出すの」
「……そ、それはカミさんが」
「結婚してたんだ。で、奥さん何のために借金したの」
「し、しらねーよ。勝手に保証人にされてたんだよっ!」
 …………。
 なんというか、バカだ。馬鹿すぎる。
「それ、お兄さんには言ったの?」
「さっき、借金の事は言った」
「違う。勝手に保証人にされた事」
「……言ってない」
「何かにサインした記憶は?」
「ない」
「じゃあ本当に知らない間に保証人にされて、奥さんは借金残して男とでも逃げたの?」
「…………」
 その通りらしい。だから兄には言いにくかったと。
 馬鹿だ。アホだ。人を見る目なさすぎる。
 まあ、それならとりあえずグル君は大丈夫か。この人がコンビニ強盗でもしなきゃ……ねぇ。
「そんな馬鹿だからつけ込まれるんだよ。もっと世間を知りなよ。小さな子供じゃないんだから」
「ば、馬鹿って」
「勝手に保証人にされたんなら、支払い義務はないよ。そこまですんならそれなりの額でしょ。どうしても自分じゃ無理なら、弁護士に頼めばいいよ。借金払うよりははるかに安いから」
「そ……そうなのか?」
 ほら、馬鹿だ。
「あの馬鹿な行動がそれで無しになる分けじゃないしねぇ。騙されたからって自分が人を騙してどうすんの。やってる事は逃げたクズ女と一緒じゃん」
「…………し、しかたねーだろ、催促されて、子供が怯えてるんだよっ!」
「オレオレ詐欺に引っかかる人が絶えない理由が今分かった」
 今時、子供が怖がるような取りたてなんてブラック過ぎる。
 子供も可哀相に。
「なぁ、出してくれよ。子供をホテルに置いてきてるんだよ」
 ホテル……一番近いホテル。
「子供をラブホテルに置いてきたとか?」
「な、だから」
 本当に……置いてきたのか。
 子供を、そんな所に。私ですら入った事ないのに!
「ふざけるなボケ! ホテルの名前は!?」
「う……兄貴に取り上げられた財布の中に割引券が」
「しばらくそこにいろボケっ!」
 ああ、情けない情けない。子供が可哀相だ。ああ、情けない。
 葬式の間、一目も見る事の出来なかった可愛い孫が、そんな所にいるなんて、ばあちゃんも可哀相だ。
 保護しに行こう。


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7/18発売
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2010/06/07   推定家族   771コメント 5     [編集]

Comment

 

重虎5917     2010/06/07   [編集]     _

最低人間かと思ったら実はただのお馬鹿でしたか(´_ゝ`)

子供も可哀相に・・・

-5918     2010/06/07   [編集]     _

なんとも………
早く子供の為にどうにかしてあげてほしいですねぇ
実はこの人本当の本当に人を見る目がことごとくなかった人なんですねぇ……
哀れだ。

ルカ5919     2010/06/07   [編集]     _

子どもがハルカさん怖がりそう…

れい5920     2010/06/07   [編集]     _

私としては、トイレを怖がるハルカさん、可愛い…
と、とりあえず突っ込んでおきます。だれも突っ込まなさそうだから。
ハルトのツボにはまって、ますます惚れられそうですねぇ。

とーこ5921     2010/06/07   [編集]     _

ハルカはホラー映画好きですが、一人でトイレに行けなくなるタイプです。
一人暮らしの時は、ホラー映画を見る間に見て、夜物音に敏感になって暑くても布団他ぶったりします。
良くある事だと思います。


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