白夜城ブログ

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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

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 いつもの談話室では、カランが興味津々と置物に触れていた。珍しい物ばかりが置いてあるため、手にとってはひっくり返して眺めている。
「どうですか。秘密基地という感じで恰好いいでしょう」
「わからない」
 カランは素直に首を傾げた。秘密基地は子供心に憧れ、大人になっても童心を呼び起こす単語である。
 アディスはふっと笑う。
「秘密基地が珍しくないということですか」
「うん」
「なるほど。では今度、珍しい所に連れていってあげましょう。人形屋敷なんか珍しいのでは?」
「うん」
 無責任な発言をするアディスの耳を、フレアが引っ張った。
「勝手に人の家の訪問を決めないで頂戴」
「いいでしょう。どうせ人形師は暇なんです。男の子だから余計な心配もありません」
「そうだけど、普通子供に見せる?」
「これから見ていく物に比べれば、綺麗なものでしょう」
「少なくとも、綺麗には綺麗だけど」
 フレアはため息をついて肩をすくめた。
「また今度ね。確認してからにしないと」
「ええ、また今度の機会。カラン、お茶が冷めますよ」
 カランはアディスに言われて椅子に座り、出された茶を観察し、少し舐めて時間をおいてから一口飲む。
「毒なんて入っていませんよ。普通に飲みなさい」
「うん」
 そうしていると、セーラがやって来た。アディスの隣に座り、彼女もお茶を飲んだ。
「それを飲んだら今夜は寝ましょう。明日はカランの買い物です」
「何を買うの?」
「日用品です。服、靴下、肌着、他に気に入った物は武器以外ならなんでも」
「どこで買うの?」
「色んな店で」
 ミラとの会話よりは、会話になっている。だが、話し方は離れて育ったとは思えないほどよく似ている。
 それを見てセーラが笑うと、カランはそれに気付いてじっと見た。
「カランは何か欲しい物はないんですか?」
「別に」
「好きな色は?」
「くすんだ色」
「どうしてですか?」
「暗いと見えない」
 セーラは腕を組んだ。思考が普通ではない。
 しかし、普通ではない相手を丸め込んでしまうのは、セーラが得意とする所だ。
「カランにこそ、真っ白な服を買いましょう」
「それは素晴らしい案です」
 意識改革を目指す方向にセーラは決めたようであった。
「春らしく萌葱色とか、爽やかにブルーとか」
 カランは首を傾げた。
「目立つ?」
「目立つ服に慣れましょう」
「どうして?」
「社会生活には必要なんです。君のご主人様だって、すごく派手な格好しているでしょう」
「ウル様は守られる方だよ」
 セーラは困ったアディスを見た。アディスはくすりと笑い、カランを指さした。
「そのウルさんに見合う恰好をする事も、闇に紛れるのと同じほど大切です。人の中であれば人に紛れる。そのためには、ごく普通の人間の真似を出来なければなりません。
 執事のまねごとも、あの悪魔より完璧に出来るように教えましょう。私は何事も完璧でなければ気がすまない質なんですよ」
 笑うアディスを見て、カランはこくりと頷いた。
「そういう場合は『はい』とでも返事をした方がいい。『うん』では品がない。あと『お願いします』とか、何でもいいから続けましょう。あまり短い言葉ばかりでは、愛想がありません」
「……はい……お願いします」
 カランは言葉に困ったように黙った。
「まずはおしゃべりの練習ですね。モリィは相手が黙っていても察してしまうから、他の人間達とたくさん話をしましょう」
「はい。たくさん話す」
 カランは襲いかかったり背後から近づかなければ、大人しくて素直な少年である。
 命令には絶対服従、とも言い換えが可能なため、そこをセーラは直したがっている。
 自衛以外の自発的な欲望といった、当たり前の物が彼にはない。
 それを自覚し、抑える術を知らずに大人になるのは不幸だ。それらを教えるのが大人の役割である。

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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
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2010/02/11   下書き   681コメント 2     [編集]

Comment

 

-5313     2010/02/12   [編集]     _

セーラは先生に向いてますね。カランはどうにか普通になれるのでしょうか。つーか周り既に普通じゃないし。

とーこ5318     2010/02/13   [編集]     _

普通を装える子にはなれても、今更普通の子になるのは無理ですねぇ。
周りが普通の人いないので。
聖良も普通の子とは言い難いですし。


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