白夜城ブログ

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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

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最近弟子の催促が多いので、書けている部分はちまちま出していこうかと。
でもなかなか進まないんです。ごめんなさい。

1

 冬の寒々しい森の中。
 魔物とキメラ達が地面を探り、ディオルは陣を敷き探査する。
 シアはそれを見守る。
 この件に関して、シアは手を貸せない。適性の違いだ。
 だからシアは二人の食事の世話をする。
「エリア様、お芋が焼けました」
「ん、ありがとう」
 彼は焼けた芋を受け取ると、丁寧に皮を剥き、ふぅふぅと息を吹きかけてかじり付く。
 ディオルが探査のためにはキメラが必要だと言って実家に帰ったところ、見つかってついてこられてしまったのだ。
 シアはジークさえ来なければ、誰がいようとかまわなかった。
 気むずかしい少年だが、相手をするのは経験になる。
「いかがですか」
「美味しい」
「キノコ汁もどうぞ」
「ありがとう」
 ディオルはまだ探査をしているつもりらしい。一度途切れると、再び同じほど集中するのは難しい。今はそっとしておく事にした。
「エリキサみつかるかな?」
 暖を取っていたキメラが、離れたところで座り込んでいるディオルを見て呟いた。
「エリキサが見つかったらね、聞きたい事がいっぱいあるんだ」
「そうですか。答えが聞けるといいですね」
 撫でると、普通の動物のように喉を鳴らす。
 色々と混じっているが、可愛らしいキメラだ。
「コロム、あんまりシアさんの邪魔すんなよ」
「してないよ。お料理終わったもん」
 キメラの知能を人間に頼ったせいで、ディオルのキメラは個性豊かだ。半分ほどは自分が何者であったか忘れているが、半分ほどは覚えているらしい。
 もう一匹の白い大猫は、覚えている方のキメラで、コロムの方は忘れているキメラだ。
 二匹とも可愛いが、得体は知れているが犯罪者の記憶があるキメラと、性格も子供のようで可愛いが得体の知れないキメラというのが、本当に可愛いのかとシアは疑問に思っては首を振った。
 意味のない事だ。
「あら、エリアス様の魔物がこちらを見て倒れていますが」
「また餌やってなかったんじゃないっすか」
 本の中では飢えないとはいえ、稀少な魔物に餌をやらないのに飼うというのは、少しばかり無責任だ。
「おいで」
 シアが声をかけると、のそりと起き上がった。
 芋を見せると、走ってきた。
「お食べ」
 一匹にあげると、他の魔物も集まってきた。
「エリアス様、餌ぐらいあげてくださいな」
「飢餓感って、いい刺激になるんですよ」
「どれもこれも、絶滅寸前の希少種なのですから、優しくしてあげてください。餓死したり、飢えのせい力を出せずに死んでしまったら、うっかりではすみません」
「そうですね。何事もほどほどというのは大切です。一度にこれだけ出す事は今までなかったので、想定外でした。
 お前達、腹が減ったのなら山菜でも食べていなさい」
 草を食べていろとは、ひどい飼い主だ。今は冬場で、獲物も食べられる草もあまりない。
「君たち、うるさい」
 ディオルが不機嫌そうにマントについた土を払いながらこちらに来た。とうとう集中力が切れてしまったようだ。
「お腹すいた」
「どうぞ」
 温かい汁と焼いた芋を差し出す。彼には頑張ってもらわなければならない。人に見つからぬように隠れて眠る知識の獣を見つけ出すのだ。一つ見落とせばそれで終わり。
「空洞があった。午後からはそれがどことつながっているか探るから、探査系が得意な魔物以外はウザイからしまって」
「では、戻りなさい」
 エリアスはほとんどの魔物をその一言で本の中に戻す。保護し、保存する事は必要だ。しかし、本の持ち主となった少年の性格は、魔物達にとって不幸であった。あの本を扱える者は少ない。あの本が誰が何のために作ったのか、それすら分からないのだ。影の中に空間を作るのとは違い、完全な保存が可能な正体不明の本。
「面倒だから、穴でも開けて近道をしたらどうですか」
 エリアスが短絡的な事を言い、ディオルは彼を冷めきった目で見た。
「で、何かヤバイものが封印されてたらどうする? 世界を壊しかねないような物を封印するような人達が、どこに何を封印したのを忘れるような世の中だよ。そういうのにわざわざ出口を作ってやる事になるんだ。僕は責任が取れない事はしたくない。
 正規の入り口を見て、それっぽかったら保留して、覚えがないか聞いて回るのが安全策だと思うけどね」
 エリアスはふくれた。まどろこしい方法が性に合わないようだ。
 子供ながらに待つ事も出来るディオルのようなタイプが少数派なので仕方がない。
「君は根っから研究者には向かないタイプだね。ジークの方がよっぽど向いている」
 ジークは昔から、細々した作業が好きで、変な趣味を持たせてはいけないと、空いている時間すら武器の手入れどころか、武器の制作をするようにさせていた。その結果、鍛冶にのめり込みかけて両親を慌てさせたものだ。
「お兄さまは、のめり込みやすいタイプなんです。お父様にそれをすべて潰されてきたので、邪魔をされないで好きな事が出来る今を満喫していらっしゃるのだと思います」
「ああ、確かにそんな感じだね。カロンにもいいように使われているよ」
 何でもこなすジークは、便利で使い勝手がいいはずだ。待つ事も出来るし、ぎりぎりまで耐える事も出来る。
「でも、あまりよくない趣味にのめり込みそうなら止めて下さいませ」
「僕ほどの悪趣味な男にそれを言うだけ無駄だと思うけど」
 エリアスは研究に興味を持っていないので、ジークが何をしているかも知らなさそうだとシアは思った。
 ディオルは汁に口をつけて、熱かったのか舌を出し、ふぅふぅと息を吹きかけて再び口をつける。食事する様子は普通の子供と大差ない。
 あっという間に平らげると、彼は再び元の位置で探査を始めた。
 闇雲な探査と違い、目的あっての探査である。今までよりは幾分か気が楽で、今までよりも集中を要する。

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2010/02/07   下書き   679コメント 0     [編集]

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