白夜城ブログ

3


 迎えてくれた可愛らしい少女二人は、見慣れぬ子供を見て目を輝かせた。
「新しい子ですか! 可愛い!」
「黒髪同士で親子みたいですねぇ」
 親子呼ばわりしたロゼは、アディスに抱き上げられてすごまれた。
「せめて兄弟と言いなさい」
「はぁい。アーネス様お久し振りです。最近来てくださらなくて寂しかった」
「雪でなかなか外に出られなくてね。冬場に翼を広げるのは苦痛なんだよ」
「ああ……」
 モリィを竜だと思っている彼女達は、訳知り顔で頷いた。
 カランは酒場をキョロキョロと見回す。
「こういう店に来たのは初めて?」
「うん」
 フレアに問われ、カランは頷いた。
「この子はうちの子になるんですか?」
「いえ、預かっているだけです。カラン、ロゼとシファです。分からない事があれば彼女たちに遠慮無く聞きなさい」
 カランはしばし二人を見つめた後、こくりと頷いた。
「皆、聞きなさい」
 従業員達も手を止め、アディスに向き直る。
「この子はカランです。この子の背後には、決して黙って近づかないよう通達しなさい」
「え? どういう事ですか?」
 シファの問いに、アディスは肩をすくめた。
「手癖がなかなか治らなくて、背後に立つと切られたり、骨を折られますよ」
 まるで子供が指をしゃぶって困る程度の気軽さで言うアディス。
「き、切るんですか?」
「特殊な育ちでね。やたらと強いので気をつけるように」
「はい」
 アディスはカランの手を引いて、奥へと向かう。もう片方の手をフレアが掴み、下手に動けないようにしていた。
 後から付いて行こうとした聖良だが、少女二人に袖を引かれて足を止めた。
「ね、ねぇ、何なのあの子」
 アディスの言い方は奇妙であった。そう思うのも仕方がない。
「頼まれたんですよ、育てろって」
「誰に」
「聞かない方がいいですよ。どうしても知りたいというなら教えますけど」
「えー、知りたぁい」
 ロゼに甘えるように抱きつかれ、聖良は腕を組んだ。他の従業員達も好奇心から意識を向けている。
「後悔しますよ」
「しないよぉ」
 知りたがったら教えればいいと言われている。だから問題はない。預かっているのがアーネスなら。
 聖良は二人だけに聞こえるよう、声を潜めた。
「神子ってわかりますか?」
「まさか……神殿が魔術を?」
「まさか。一人だけ神殿から外れている神子を知っていますか。堕落、背徳、闇の魔王、最強の神子のウル」
 二人の顔が引きつった。
 アディスの弟子、博識の二人は事態をそれだけで理解した。
「脅されて、断れなかったんですよ。神殿だったら怖くもないので断っています」
「そ……そうよねぇ」
 二人はカランが消えた先をチラと見た。
「本当に後ろに立つと切られますから。今はスプーンを持たせていますけど、何も持たせないと情緒不安定になります」
 そのような血筋であるとしか言いようのない悪癖である。周りが注意するしかない。
「とってもいい子ですけど、それとこれとは別なので。育ちが複雑で、すり込まれてるんです」
「わ、分かったわ。伝達しておく」
「あと、教科書も用意してください」
「わかったわ」
 それだけ言うと、聖良は皆を追いかけた。


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2010/02/06   下書き   678コメント 0     [編集]

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