白夜城ブログ

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「街に行きますか」
 アディスの呟きに、皆は顔を上げた。
「どうしてです?」
「今夜、確かフレアが来るような事を言っていました。
 冬服はありますが、春物がそろそろ必要でしょう。
 それに教材が欲しいですね。セーラと違い、本格的に学ばせるわけですから」
「なるほど。どちらで?」
「箱庭ですよ。さすがにあちらには……」
 アディスはため息をついた。ここ数日は銀髪のアディスの姿にはなっていない。今の彼にとっては、どちらの姿も同じである。他の面々にとっても見慣れないだけで中身がアディスである事に代わりはないため、誰も何も言わない。アディスはこういうものであると皆が思っているからだ。
「じゃあ、私着替えてきますね」
 寝室で聖良はモリィの姿になり、可愛らしい枯れ葉色のワンピースを身につけた。金髪を三つ編みにまとめて、手袋と帽子とバッグを持ちリビングに戻る。
「……着替えで、身体まで変わる」
 カランがぽそりと洩らした。
「これは特殊だから気にしたらだめだよ」
 ユイに諭され、カランは頷いた。
「僕たちは行けないから、セーラ……モリィ達の言う事を聞くんだよ。あと危ないから刃物禁止」
「…………」
 カランがまっすぐユイを見つめた。
 カランもミラと同じで、刃物を持たないと精神不安定になる。
「ふぉ……スプーンで我慢しようね」
 カランは頷き、スプーンを受け取る。
 聖良には理解しがたい光景である。
「ついでにカランの服をたくさん用意させましょう。せっかく可愛い顔をしているんです。気品に満ちた魔戦士を目指しましょう」
 アディスがカランの頭を撫で、楽しげに言った。彼は教えるのが趣味である。教えがいのある生徒が可愛くて仕方がないのだ。
「ハーティも準備をしておきなさい。一緒に可愛い服でも買いましょう。貴女の服は地味すぎます」
「は……はい」
 ハーティは頬を赤く染めて笑みを浮かべた。彼女はアディスからの贈り物であるなら、あめ玉の一つでも喜ぶが、それが可愛らしくなるための服であればその内心の喜びは一入である。
「セーラは可愛い春物のワンピースでも買いましょうか。真っ白なワンピースに、可愛らしい帽子と日傘」
「白いワンピースはどうせ一日で汚れるから嫌です」
「よそ行きですよ。どうせ使い物にならなくなるなら、私の趣味で選びます」
「……変な服じゃなきゃ別にいいんですけど」
 使い物にならなくなるのが前提で有る事には触れず、聖良は諦めて認めた。
 彼は幼い子供に変な服を着せて喜ぶタイプの変態ではない。
 可愛い可愛いとひたすら見て、触れて愛でる変態だ。
「カラン、欲しい物があったら言いなさい。武器以外は買ってあげます」
「じゃあいらない」
 ミラとそっくりな少年を見て、皆はため息をついた。
 彼はまだ子供である。まともに育て直せる範囲だ。
「玩具も買いませんか?」
「ああ、遊びを教えるのは悪くありませんね」
「カードなら知的ですし、みんなで遊べますよ」
「色々買いましょう。色々」
「はい」
 カランを普通の子供にはできずとも、普通の大人を装える人間に。
 そのためには、様々な事を経験させねばならない。
 その第一歩は、他人と交流を持つ事。次に他人と遊ぶ事である。
 
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2010/01/31   下書き   673コメント 4     [編集]

Comment

 

とーこ5263     2010/01/31   [編集]     _

今回は久々の箱庭編です。

-5265     2010/01/31   [編集]     _

カランはミラと違った18歳になれるか!?
楽しみですね♪

ポンのママ5267   白夜城好きです!   2010/02/01   [編集]     _

お初です♪ よろしくお願いしますm(_ _)m

所詮は、朱色の軍団ではないかと…(汗)
何にしても、セーラ好き(かな?)が増えるのは大歓迎♪

ハル5268     2010/02/01   [編集]     _

そういえば、カードでキュウリを切ってるマジシャンいませんでしたっけ?うーん、テレビでみたような?


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