白夜城ブログ

7


 その夜、イトコ殿の友人達は帰ったが、私の友人は帰らなかった。
「このカニとカキはこいつが持ってきたのだから感謝するように」
 私は鍋でぐつぐつと煮えるそれらと野菜を、器にわんさか盛ってイトコ殿に渡す。
「親戚が送ってきただけよ。地方にたくさんいるから、色々と集まるのよね。遊びに来たときに泊まらせてもらおうって魂胆から。まあ、こっちも泊まらせてもらうけどね」
 田舎の人たちはそういうところはマメだ。私にはそんな親戚がいないから、いつも彼の田舎のお裾分けをもらうばかりである。
「前から思ってたんだけど、なんで二人知り合いなの? ハルカさん、行きつけの店の店員と仲良くなるタイプじゃないのに」
「幼稚園から一緒なの。うちの弟目当てに去年までこの家に通われてたし、今は私が店に行くから……腐れ縁?」
「ハルカちゃんって、友達にも一切自分から連絡しないものだから、私ぐらいよ、付き合いあるの。店をたたんだらこの友情も自然消滅しそうねぇ」
 金にもならないのにメールとか返すの面倒だし、疲れるから外に出るのも面倒だし、自分から疲れるようなことしないし。
「あ、米はもらいに行くかも。新米だけってのは、通販でしか買えないし、買うと送料とかかかるから高いんだよ」
 価値があることのためなら労力は惜しまない。歩いてでも取りに行く。車があるのに取りに行かないはずがない。
「……何よ。私の価値って米だけ?」
「あと、はちみつ」
 混ぜ物でないはちみつはおいしい。あれはいい。
「ハルト君、漫画と食べること以外に興味ないのよ、この子」
「ああ、だから料理だけはするのか」
 掃除は苦手なだけだ。洗濯物を畳むのも苦手。庭の手入れも苦手。美的感覚がないのだ。部屋を飾ろうと思っても変になる。可愛い小物は好きでも、生かしきれないというか、並べるだけであまり見栄えが良くない。
「稼ぎもあるから心配なのはゴミ屋敷にならないかだけだけど、ハルトくんがゴミ捨てしてくれてるみたいで助かったわぁ」
 イトコ君の顔が引きつる。
「助かったと言われるぐらいゴミをためるんすか?」
「そんなにためないよ。腐るものはディスポーザー行きで、あんまりゴミたまらないから。
 ゴミの回収が朝はやいから面倒なんだよね。ゴミのために毎週早起きなんて馬鹿らしい」
「え、週?」
 週どころか、月に一度出せばいい方だった。このイトコが来たときは、母が綺麗にしていった直後である。
「そういえば、ハルト君のお友達もおしゃれな子だったわねぇ。近所に住んでるんだったら、うちの店に連れてらっしゃい。特別料金でやってあげるから」
「……機会があったら」
 嫌がるだろうと思っているのだろう。彼は女性には面白いと人気である。
「こんなおねえ言葉だけど、べつにこいつはオカマじゃないからね」
「え、そうなの?」
「こいつはただのおねえ言葉のバイ。
 だから女装もしない。なんか専門学校入ってから毒されてこうなっただけ。あ、でもフリルとかは好きだね」
 性別よりも顔や性格を重視しているので、性別がまず一番になる連中とは大きく異なるのだけど、気に入られている身としては違いを感じなかったらしく、イトコが引いている。
「そんな言い方だと怯えるでしょう。私は犯罪者じゃないんだから。男も好きっていうと、そこを勘違いする人が多いのよねぇ。
 とくに未成年の男の子なんて、手を出したらどうなることか。きっとマスコミに面白おかしく叩かれるのよ」
「あの人はいつかやると思ってましたって、誰かが言うね、きっと。あんた遊んでるから」
 髪を切りに行く長くはない間で、毎回のように恋人の名前が変わっている。昔からそうだった。
「や、でも、見た目は格好いいし、叩かれるとは限らないんじゃ」
 イトコ殿は必死に考えてフォローする。
 この子は変なところで気を遣う。確かにニューハーフにでもなれば、私よりはずっと美人になりそうな顔をしているけど。
 つい二人でにやけて見つめていると、イトコ殿は気まずそうにカニの殻にかじりついた。
 食べ方が下手なところはやはりお子様である。

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2007/08/18   推定家族   65コメント 2     [編集]

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-1   管理人のみ閲覧できます   2008/03/06   [編集]     _

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