白夜城ブログ

1.5

 ばあちゃんが死んだ。
 父さんも母さんも、俺がガキの頃に死んで、ばあちゃんは俺にとってたった一人の家族だった。
 この世の終わりってぐらい絶望して、悲しくて泣いてたら知らないおばさん達が来た。母さんのお姉さん達、つまりは伯母さん達で、俺を引き取ってくれるって。言われてみれば小さな頃に会った事があるような気もした。母さんに少し似た、綺麗な人達だ。
 どうしてばあちゃんが死んだのを知ったのか聞いてみたら、ばあちゃんが友達に、自分に何かあったら連絡してくれるように頼んでたんだって。
 葬式の手配とかしてもらって、終わったら今まで住んでいた家から引っ越しの準備も手伝ってもらった。
 すごくデカい家でちょっとびびった。しかもここは高級住宅街なはず。ばあちゃんちはもう住めないんじゃってぐらいボロかったから、この落差に愕然となった。世の中不公平だな。母さんは駆け落ちしたってぐらいだから、金持ちのお嬢さんじゃないかと思ってたけど……。
 今の俺には財産だけはあるけどさ。両親の遺産に、ばあちゃんの遺産。
 相続税とかの手続きは伯母さんがばあちゃんの遺言通りにやってくれるって。
 何にしても、もうあの家は人の手に渡って、取り壊される。
 俺の家はここになる。
 この家には伯母さんの娘さん、つまり俺の従姉もいると聞いて、ちょっと楽しみにしていた。前から姉が欲しかったから。
 だが当人を見て、俺は少しだけガッカリした。
 高級そうな家なのに、三時にもなってパジャマ代わりっぽい安いスウェット姿の女の人が住んでいたのだから、ちょっとガッカリする。
 お嬢様が住んでいて欲しかった。
 家の中で何を着ていようと、本人の勝手だけどさ。
 従姉のハルカさんは、伯母さんに何も聞いていなかったらしく、俺を引き取ると聞いて驚いた。そりゃあ驚くよな。
「はぁ……でこのイトコがうちに住むと」
「そうよ。どうせ暇なんだから、面倒見てあげてね」
「暇ってほど暇じゃないし。でも、母さんどうするの? 母さんだけ日本にいるの?」
 日本にいるとはなんだろう。
「え、私は戻るわよ。あの人、一人だと生きていられないもの」
「んなの、現地でお手伝いさんでも雇わせればいいでしょ」
「男は誘惑に弱いのよ」
「あのねぇ……。
 じゃあ、私とこの子と二人で暮らせって?」
 え……ちょ……マジで?
 親戚とはいえ、若い女の人と二人きり?
「一人で暮らすより安全でしょ。最近はこの辺りも物騒だそうじゃない」
 そう言う問題じゃないし。
「だからセキュリティに安くない金払ってるんでしょ」
 そういえば、玄関の所にカメラがあった。こんな所に家があれば、当たり前なんだろうなぁ。
「この子はとってもいい子だから大丈夫」
「べつにいいけどさ……せいぜい洗濯と食事の支度してやるぐらいでいいでしょ」
「まあ、そうなるけど……もう少し言い方があるでしょう」
 ため息をついて、ハルカさんは俺をちらと見た。
 俺は年上の女の人に受けのいい笑顔を見せたが、彼女は鼻で笑った。少し傷ついた。苦手かも知れない。
「別にいいけど。学校はいつから? 近いから自転車で行けるわね」
 俺は学校の制服を着ている。
「月曜から……です」
「そう。弁当はいるの?」
「あ、はい」
「アレルギーは?」
「な、ないです」
「どうしても食べられない物は?」
「らっきょう……ぐらいかな?」
「そ」
 弁当を作ってくれるとは思わなかった。思ったより家庭的でいい人なんだな。
 恐い人じゃなくて良かった。


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2009/10/24   推定家族   620コメント 3     [編集]

Comment

 

とーこ4631     2009/10/24   [編集]     _

修正していたら、ボツにした初期のハルト視点が出てきたので、掲載してみる事にしました。
ハルカはよくだらしのない聖良っぽいと言われるけど、身の上はハルトの方が近いんですよね。

ji4632     2009/10/24   [編集]     _

甘え上手と甘え下手の両極端ですね。環境の違いが性格にあらわれてる?

ハルカさんは・・・ナチュラルに我が道を貫き通してるのがいい!

-4633   管理人のみ閲覧できます   2009/10/24   [編集]     _

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