白夜城ブログ

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「女王陛下のお誕生日に、歌って欲しいんだそうです。今日はお出かけしているそうなので、明日お会いするんです」
えへへと笑うノイリは可愛い。今日はまさしく天上の天使がモチーフだろう。人間達の信仰らしいがだが、その姿が美しいからこそ人気があるのはニアスにも理解できた。
 真っ白なドレスに飾りの布が幾十にも下がって、動く度にふわふわと浮く。
 兄はこの子のドレスにお金をかけることを楽しみにしていそうだ。女王陛下に会わせるつもりなのだからかなりの金がかかっているだろう。
 これだけ気合いを入れているのに、あの気まぐれ女王は自分で呼びつけた約束の日に外出しているようで、このドレスが無駄になった。明日は別のドレスを用意しているはずだ。もったいない。
「ノイリちゃんますます可愛くなって。女の子は大きくなるのが早いよね」
 鼻の下を伸ばすのは、当然テルゼだ。ノイリもそろそろこれから隔離しないと危険な年頃になってきた気がする。子供など気がつけば身体の方は大人になっているものだ。油断は禁物。
「…………」
 気付けばノイリの顔から笑顔が消えていた。原因を考え、今までの思考パターンから答えを予測する。
「太ったという意味じゃないぞ。女らしくなったという意味だ。お前はいいかげん大きくなったとかいう言葉に反応するな。子供は大きくなるものだ」
「は、はい」
 ノイリの顔に笑顔が戻る。本当に可愛らしい。
 正月休みの時に渡そうと思っていた、可愛らしい小物を後でやろう。慣れぬところで緊張しているだろうから、気が紛れるかも知れない。
「ニアス……お前もそんな穏やかな顔を」
「扱きの鬼と呼ばれるお前が」
 なぜか後ろをついてくる、獣族と闇族の同僚達。先ほど叩きのめしたばかりなのだが、獣族だけありぴんぴんしている。
「何の用だ。なぜついてくる」
「いやいや、あまりにも珍しくってさ」
 闇族の男がからからと笑う。
「ユーリアス様達以外の闇族の方は始めて見ます。純血の方ですよね? 獣族の方は、ヨルヘイル様みたいです」
「ユーリアスとはかなり遠いけど親戚のカティーセだ。よろしく、お嬢さん」
 同じ闇族でも、真面目でお堅いユーリアスと違いこれは不真面目だ。
 可愛らしい女の子が相手なので、かなり猫を被っている。数年したら態度はもっとあからさまになるだろう。父が娘を必要以上に心配する様を見ると過保護だと思っていたが、これに近い心境なのかも知れない。
「アロンだよ。ヨルヘイル様とは近い系統の獣族だから、魔族型から見れば似てるかもね」
 アロンは誰に対してもこうだ。身分も実力も上であるニアスにも、同期だからと態度は同じ。さすがに目上には丁寧語を使うが、気分的には敬われているようには思えないだろう。
「しかし、噂には聞いていたが……五区王は本当に入れ込んでいるんだな」
 ノイリがきょとんとするものだから、ドレスの事だと言ってやる。
「ラクサ様のドレスをマルタが改造してくれたんです」
 ここに裁縫好きの、本当は娘が欲しかった女がいた。息子が可愛いもので女の子のように着飾らせようとしていたが、息子の方は心の底から服などどうでもよく、動きやすさを求めて可愛い服を汚した。
 そんな見た目だけは可愛い息子に、度々嘆いていた。
「マルタはそんな小さな手なのに器用だな」
「それぐらいしか取り柄がありませんからねぇ」
 澄ました様子だが、髭がぴくぴくしている。親子なだけありカルティと同じ反応だ。これが女ウケするのだ。現にノイリが引っ張りたそうにそれを目で追っている。
 カルティを見たらさぞ喜ぶことだろう。彼は本当に女子供のウケがいい。

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2007/09/08   窖のお城   55コメント 0     [編集]

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