白夜城ブログ

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 厳戒態勢のガードマンに見守られながら、ノイリは美術品を見て回った。真面目な顔で立っていた彼らは、ノイリと目が合うと笑ってくれたのでまったく怖くはなかった。
 今いるところには、展示品には石像が多い。
「ここには目玉商品以外が展示されているのですよ」
 作品を見上げていると、ヘイカーが教えてくれた。
「目玉の品はないんですか」
「ノイリも目玉商品扱いだったのですよ。つまり、見目がある者が見れば、高い価値があると思わせるような物……値段をつり上げられそうなタイプの、値段が付けにくい稀少品ですな」
 なるほど、とノイリは納得した。
 天族など出品された前例がないので、値段をつり上げられると睨んだのだ。
「うれしそうですな、どうしましたか」
「エンダー様に気に入っていただけたのが嬉しいんです」
 思わず頬が緩んでしまう。
 こんなにたくさん美しい物が並んでいるのに、他を諦めてノイリを買ってくれたのだ。
「ノイリは本当にエンダー様が好きですな」
「はい。大好きです。ヘイカーさんも大好きです」
 ヘイカーと手を繋ぎ、色々な美術品を見る。
 触れてはいけないが、近くで見るのはいい。もし壊したら弁償だから、けっして転ばないようにと言われた。
「おや、いらっしゃいませヘイカー様」
「ああ、ニト。お久し振りです」
 白ウサギが声をかけてきた。ノイリの担当だった白ウサギだ。
 相変わらずとても可愛くて、目が真っ赤で、ふわふわだ。
「貴女も久しぶりですね、ノイリ。ずいぶんと女性らしくなりましたね。私の言ったとおり、エンダー様は良い主だったでしょう」
「はい」
 前よりもニトが小さく感じた。ノイリの背が伸びたのだ。
「担当した美術品がよい扱いを受けているのは清々しいものです。とくにそれが生き物であるなら」
 買った物を粗雑に扱う者もいる。城下の子供達も、買ったばかりの玩具を無茶苦茶にしたり、人形に落書きをしたりする。
「今日はノイリに似合う装飾品はいかがでございましょう」
「ご冗談を。ノイリの歳に見合う物など売っていないでしょう。
 もちろん将来的にはエンダー様もお考えです」
「確かに。しかし、年頃になった時が楽しみです。さぞ美しく成長する事でしょう」
 白ウサギのニトは、ノイリを見上げて鼻をひくひくさせる。ウサギのこの動きはとても可愛い。ただ、地上でウサギを見た時は、可愛いが食べ物だった。
「以前よりも髪の艶が良くなっていますね。
 私もこの仕事を長くやっていますが、見送った商品がここまで無傷で大切に扱われているのは初めてで、美しい成長を素直に楽しみにしております」
 この白ウサギはウサギ獣族の中でもとくに小さくて可愛い。手をぽんぽん合わせたり、開いたりする様が可愛い。
「ニト、本日は何かよい物はありますか。装飾品は早いですが、よい美術品を見るのに年齢は関係ありませんからな」
「もちろんでございます。ご案内いたします。ノイリ、たっぷりとエンダー様におねだりしてください。美しく役立つ者の特権です」
 おねだりをするなどとんでもないが、何かいい物があったか聞かれた時のために、しっかりと見ておいた方がいい。
「でも、私は何がいいのか分かりません」
「では、私が一つ一つを解説していきましょう。よい物を見極めるには、本物を多く見る事です」
「……んー、難しそうです」
「そのような事はございません。エンダー様のような裕福なお方の側にいれば、自然とよい物を見る事が出来ます」
「はい」
 難しそうだが、それでエンダーが喜ぶのならノイリは頑張るつもりであった。
 どれもすごくて、違いが分からなかったとしても。


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2009/08/01   窖のお城   534コメント 4     [編集]

Comment

 

紫月3398     2009/08/01   [編集]     _

ニトさんかわいいっ!!
ラントちゃんといい、やっぱりウサギ獣族はかわいいですねぇ。一家に一匹ほしい(笑)

-3399     2009/08/02   [編集]     _

更新ありがとうございます!
久しぶりのノイリで嬉しいですヽ(≧▽≦)/

鉄心3400     2009/08/02   [編集]     _

それにしても、このガードマン
メロメロである

社怪人3403   組織の中の獣人と言うだけで…   2009/08/02   [編集]     _

本(獣)人はそれほど悪い奴ではないようだな。
「いい奴」と言うのではなく単に組織に忠実な中堅組織員。


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