白夜城ブログ

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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

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19

 おばさんが帰ってきた。おじさんは仕事で戻れないらしくて、一人で。
 土産にはよく分からない置物をもらった。ハルカさんがゴミ箱に捨てようとするのを必死で止めたので、なぜか俺の手の中にある。捨てたくなるのもよく分かる、呪われそうな木彫りの土産物。でも、確かもっと先進国に行っているはずなのに、なぜこんな観光地的なアジアン土産なのだろう。
「もう旅行の土産はいいって言ってんのにさぁ。この家のどこにこんなのが置ける雰囲気の場所があると思ってるの。うちは洋風家具で揃えてるでしょ。しかも自分で揃えたんでしょ」
「ほら、シアタールームにでも。お人形置いてあるじゃない」
「あれは食玩だって。全然違うしっ! 販促物だからタダだしっ!」
 あれはハルカさんの趣味部屋ではなく、シアタールーム扱いなのか。
 捨てるのがもったいないと、食玩をため込む人と、嫌がられるような土産物を溜め込む人、後者は相手に悪くて捨てられないので、なりたくないのは後者だ。ハルカさんはこの手の土産物に関して、沸点を超えたらしくて捨てようとしていた。食玩も飽きたら売るか捨てるかしているらしいし、ため込まないのは立派だと思う。
「買ってくるなら食べ物にしてよ。まだ使い道があるから。もちろん菓子でなく、臭くない奴。チョコは絶対にいらない!」
「だからハルカちゃんにはこれね」
 缶詰を取り出して渡した。ハルカさんの顔が引きつっている。
「そういえばハルト君、ちょっと見ない間に背が伸びたわねぇ。服は着られる?」
「この前、ハルカさんに買ってもらいました。普段は制服だから大丈夫です」
「そーお? でもハルカちゃんケチでしょ。おばさんがもっと格好いいの買ってあげようか?」
「いえ、そんな」
 母親にもケチだと思われているようだ。さすがはハルカさん。
 でも何で睨んでくるんだろう。
「それよりも今は参考書とかの方が。友達の見てるんだけど、答えも書き込んであったりするし……」
「そっか。受験生だもんね。どこの大学受けるの? ハルカちゃんと違って頭がいいから応援のしがいがあるわぁ」
「とくにどこがいいってのはないんですけど」
「お医者さんになるとか」
「いや、お金かかりますし、人の命あずかるのは……」
「知り合いにお医者様がいるともしもの時に安心できるんだけどねぇ。あ、じゃあ弁護士は?」
「ドロドロしたのはもう嫌です……」
「そ、そうね」
 これがやりたいという目標がないと、とりあえず大学に行くかという目標になる。
「英語なら教えてあげられるけど」
「俺、紙の上でなら英語得意です。しゃべれませんけど」
 受験に必要なのは中途半端な英語力ではない。紙の上の問題を解く能力。他は聞き取りできればいいのだ。
「フランス語も多少は出来るのよ」
「ハイハイすごいねすごいね。でも受験に関係ないでしょ」
 ハルカさんの妥当な突っ込み。さらにフランス語を中途半端に教えられてもちょっと困る。
「あぁ……でも、私の知っているような大学に入ったら何でもいうこと聞いてあげようか」
 ハルカさんが気軽に笑いながら言う。
「何でも?」
「ポルシェ買ってとか言われたら無理だけどね。近場の海外旅行ぐらいに行くお金なら出してあげるよ」
 つまりあまりにも高すぎる物は却下。卒業旅行代ぐらいなら良しと。
「じゃあ、結婚してとか言ったらいいの?」
「あはは、私の知ってる大学入れたらねぇ」
「ハルカさん、学歴とかぜんぜん興味なさそうだから、ホント有名どころだけっぽいよねぇ。
 でも頑張ろうかなぁ」
「…………車は中古だからね」
 ちょっと真剣な顔をして言う。
「いやいや、免許も取ってないのに、いくら俺でもそんなの欲しがらないよ」
 常識外れなおねだりはしたことがないのに、ひどいことを言う。免許を取るのにもかなりお金がいるのに。
「二人とも、ちょっと見ない間にずいぶんとうち解けて……お母さんなんだか寂しいっ!」
 なぜか伯母さんが拗ねた。大人の女の人が拗ねる姿は、ちょっと可愛い。
「じゃあ、ここに住めば?」
「嫌よ。パパと一緒がいいのっ!」
「じゃあ寂しくないじゃん。父さんが寂しがる前に戻ってあげてね」
「そうね。そうするわ。その前に食料買い込まなくちゃ。やっぱり美味しい梅干しが恋しくなるのよねぇ」
 夫婦仲はとてもいいようだ。いつか誰かと結婚したら、こんな仲のよい夫婦になってみたいものだ。
 そう言ったら、きっとハルカさんは呆れたような目を向けるだろうけど、やっぱり幸せな家庭って憧れる。

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2007/10/25   推定家族   52コメント 0     [編集]

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