白夜城ブログ

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 朝起きたらニアスと並んで眠っていた。
 竜族の男の人は、やはりとても筋肉質だ。エンダーも昔はこうだったのだと思うと、やはりよいお嫁さんが来て欲しい。
 眠そうに欠伸した後、ノイリに背を向けさせてから着替え、パジャマ姿のノイリを抱き上げて部屋にまで連れて行ってくれた。
 部屋に戻るとおろおろしたマルタがいて、ニアスに何度も頭を下げていた。エンダーの部屋に行くと書き置きしていたのに、先に寄った部屋にはいなかったから慌てたそうだ。ノイリはマルタに抱きついて謝った。
 ニアスの肌は少し冷たいけど、マルタは毛皮に覆われているから温かい。
「マルタ、ノイリを風呂に入れてやってくれ。俺の部屋で寝たから、臭うとか言われたらまずいし」
「ニアス様は臭くありませんよぉ。不潔な獣族とは違うんですから」
 獣族は毛があるので、手を抜くとすぐに臭うようになるらしい。かといって毎日風呂に入るのは手入れが大変なのだそうだ。体毛が多いと乾きにくいから。
 五区の街の子も、洗いたてとそうでないのはよく分かる。それでも毎日ぬれタオルで拭いているから、汚い獣族とは匂いが雲泥の差らしい。
「あと、昨日は言わなかったがノイリ、例え兄貴のところにでも夜中に男のところにはもう行くなよ。身の危険を感じたとか、そういう理由がないと。いつまでも小さな子供じゃないんだからな」
 昨日、リズィにも同じような事を言われたのを思い出す。
「はしたない……ですか?」
「そう思う連中もいるから。昼間、マルタを連れてなら大丈夫だ。
 ほら、そろそろ用意をしないと、いつお呼びがかかるかわからないだろう。陛下を待たせてはまずい」
「ヘイカーさん?」
「女王陛下だ」
 よく似た名前だ。ややこしい。
「うんと着飾って、陛下をぎゃふんと言わせてこい」
「ぎゃふ?」
 ニアスの言うことは時々意味が分からない。
 ニアスは仕事に行くと言って部屋を出て行き、ノイリはマルタに連れられ浴場に行く。全身を洗われて、いい匂いのオイルを手足にすり込まれ、髪を乾かされて爪の形を整えられる。
 マルタはお風呂の湿気が嫌いだから、自分が身体を洗う日以外は、ノイリが自分でやるか竜族にされていたのだが、今日は綺麗な魔族の人達にされて変な気分だった。
 羽を引っ張られるのは、ちょっと困惑した。羽は水を弾くから、少し動かすだけで乾くのに。
 でもブラシをかけてもらうのは好きだ。
 綺麗になると部屋に戻り、用意してあった衣装と小物を選んでもらう。
 やはり白いドレスがいいだろうと、昨日よりは装飾の少ない、シンプルなラインの背中と肩が出るドレスを着る。
 そのかわり、装飾品でたくさん飾る。髪は結い上げて、紐と造花で飾る。垂れている髪と紐が絡んで可愛い。
 翼の骨のところにも飾りをつけて、動くとしゃらりと揺れて華やかだ。でも指輪などはつけない。子供らしさがないかららしい。大人と子供では、飾り方が違うのだ。
 大人になったら石のついた指輪やネックレスを買ってくれるそうだ。
 ノイリは派手な装飾品はなくてもいいが、着飾るとエンダーが褒めてくれるから好きだった。
「ノイリ、お茶でも飲むかい。小腹が空いたでしょう」
「うん」
 いい匂いのお茶と、可愛い形のクッキー。太らない砂糖が使われているので、普通の三倍は食べられるらしい。でも、もちろん普通に食べる。少し変わっているが、これはこれで美味しい。
 クッキーのクズで服を汚さないようにハンカチを当てながら食べ、お茶をこぼさないように飲む。
 部屋に窓はない。
 窓のある部屋は眺めはいいが、侵入されやすく危険なのだそうだ。人間の世界と違って、空を飛べたり、壁を登ったり出来る種族が多いから。だから殺し屋は闇族か竜族が多いらしい。
 一番向かないのは魔族なのだそうだ。彼らには翼も壁を登る腕力もない、一番脆弱な種族だ。
 魔術の巧みさが彼らの強さなのだという。
「マルタ、昨日の本の続きを読むね」
「休憩を取りながら読むんだよ」
 こくりと頷くと、ハンカチをゴミ箱の上で綺麗にしてからポシェットにしまって、ゆっくりと本を読んだ。

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2007/10/21   窖のお城   51コメント 0     [編集]

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