白夜城ブログ

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
誤字の報告はこのフォームからお願いします


魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

--/--/--   スポンサー広告     [編集]

17


 家に帰ると、ハルカさんが赤ん坊を抱いていた。
「お帰り。紹介するね。長女の亜子ちゃん。別れた元旦那のところにいるスイートハニー」
 足の小指を椅子の足にぶつけた。
 痛い。痛いがそれどころではない。
「ハルカさん、バージンじゃなかったのっ!?」
 ずっとそう信じていたのに裏切られた。なんかすごいショックだ。
「なんでそこにつっこむ!? 違うでしょ!」
 ハルカさんが意味わかんないと首を振る。
 よく考えてみればやっぱりありえない。ハルカさんなりの意味不明なジョークに違いない。立ち直った。ハルカさんはやっぱり男に興味のない人だ。信じていたハルカさんが正しい。そうに違いない。
「まったく、どんな目で人を見てるんだか」
 亜子ちゃんの腕を操りぶんぶん振り回して抗議する。ちっさくて可愛いが、小さすぎて壊れそうで怖い。
「だ、誰、その子」
「亜子ちゃん。従兄の拓郎にーちゃんの長女。今はちょっと買い物に出てるけど、もうすぐ帰ってくるよ」
「オレのことで説得に来たの?」
「いや、君を見に来たんだよ。じいちゃん頑固すぎて、長男のおじさんの言うことも聞かないから。
 かといって、長男のおじさんはじいちゃんを見捨てられないしね。
 で、同居している息子の拓郎にーちゃん夫婦が来たの。羽伸ばしかねて。奥さんはあのじいちゃんから解放されてすっごい生き生きしているよ」
 同居人から見てもそういう扱いなんだ、じいさん。世間体を気にして向こうに引き取られていたら、きっと苛められて過ごしたのだろう。ハルカさんでよかった。
 亜子ちゃんの小さな手を突いていると、玄関で物音がして、リビングのドアが開いた。
「ただいまぁ、って、おお、ハルト君!」
 帰ってきた拓郎さんとやらが、亜子ちゃんのおむつを持って突進してきた。買い物とはこれの事だったらしい。
「いい面構えだなぁ」
「すっごい格好いいね。ハルカちゃんいいなぁ、いいなぁ。私もこんな弟ほしぃ。ハルカちゃん弟多くていいなぁ」
 二人ともハルカさんと同い年ぐらいの夫婦だ。テンションが高いような気がするのは、開放感のためかもしれない。
「こんな可愛い娘がいるのに何言ってるんですか。私も娘は欲しいのに」
 亜子ちゃんを抱きしめてすりすりする。生後何ヶ月かなんてわかんないけど、赤ちゃん用のせんべいが置いてあるから、半年ぐらいは過ぎてそうだ。
「あげないよぉ。ハルカちゃんも、そろそろ彼氏を作って作っちゃえばいいのよぉ」
「いやいや。それは私には向かないっすよ。やだなぁ」
 本当にハルカさんは結婚も彼氏を作ることも考えていないようだ。ハルカさんらしいと言えばそうだが、それはそれで心配である。
「亜子ちゃんいい子にしてた?」
「せんべいあげたらずっとごきげんだったよ」
「おせんべいもらったの。良かったわねぇ」
 言われてみれば先ほどから握りしめている。食べているというより、遊んでいる。
「亜子ちゃん、ほら、ハルトお兄ちゃんよぉ。格好いいよぉ。そういえば、昔のおじいちゃんに似てるね」
 おじいちゃんとは、うちの母親と縁を切り、関わるなと言っているあの祖父のことだろうか。方向は違うけど、なんかハルカさんに似ている気がしなくもないあの頑固ジジイのことだろうか。
「そーいや昔の写真に似てる似てる」
「俺、ばーちゃんじゃなくて、じーちゃんに似てるのか?」
「そだよ。母さん達が父親似だから。昔の写真はすっごい格好良かったんだよ、あのクソジジイ」
 なんか、ものすごく複雑な心境なんですが。
「カメラカメラ。ハルト君、亜子ちゃん抱いて。はい、チーズ」
 亜子ちゃんを腕に抱いて写真を撮られる。
 これもなんか、ものすごく──ものすごくものすごくものすごぉく複雑な気持ちだ。
 自分、今まではばーちゃんだけだったけど、実は親戚けっこういたんだな、と思い知らされた。
 ちょっと嬉しい。

back menu next

誤字の報告はこのフォームからお願いします


魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

2007/10/13   推定家族   49コメント 0     [編集]

Comment

 

Pass:   非公開:    

.

最新記事のRSS

.

更新履歴 カテゴリ コメント

.

.

拍手

.

リンク

.



.

.

.

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。