白夜城ブログ

6

 ニアスはぐったりとしてベッドに仰向けになった。
 疲れた。
 ノイリが悪いわけではないが、町中に出ると拐かされないか冷や冷やしっぱなしだった。
 エンダーはノイリに構いたかったようだが、たまに来たため有力者回りをしなければいけなかった。
 おかげでノイリ他、売ったら高そうな連中の面倒を見なければならなくなった。エンダーがいれば専用の車を出せるが、それはエンダーが使うので出せない。この都は人口も多いので、車を走らせるには手続きやら許可がいるのだ。ニアスではどうしようもなく、だから徒歩で出かけたのだ。
 それほど治安は悪くないのだが、やはり人の出入りも激しく、犯罪者も多い。
 大人数だったら城の中でじっとしているのが一番なのだが、外食に行きたいとリズィが言い、ノイリが期待に満ちた瞳を向けてくる。ノイリはともかく、リズィは理解してやっているからタチが悪い。いや、理解せずにやっている方が手に負えないのかもしれない。
 だめだとは言えず、仕方なくいつもの同僚二人を連れて街に出た。
 珍しいノイリは当然として、毛艶のいい獣族達にも視線は集まる。猫はともかく、ネズミで綺麗なのは珍しいのだ。
 同僚達がいてくれて助かったが、全員分おごるはめになり出費が痛かった。
 シャワーでも浴びるかと起き上がった時、ドアがノックされて力なく入れと声をかける。
「あ、ニアス様、この子ニアス様んところの子ですよね」
 妖族の青年が、涙の跡があるノイリの背を押して中に入れる。
「ニアス様っ」
 呆然としていると、ノイリがしがみついてきた。
「顔のこわーいおじさん達に脅えて泣いてましたよ。俺のことは脅えなかったから連れてきました。ダメですよ、こんな可愛い子をこんな夜中にうろつかせたら」
「うろっ……いや、まあ、礼を言う」
 うろつかせたわけではない。
 上等な客室をあてがい、マルタが眠らせたはずだ。
「……ノイリ、どうしてこんな夜中に」
「ひッ……ひっく……、め……めが……ふぅ……ひっ」
 泣き出してしまい、背を撫でてあやす。
「めが、さめ、たら……知らないところで……一人で」
「そうかそうか、怖かったのか」
 抱き上げてあやすと、ぎゅっとしがみついてくる。
「マルタはカルティのところか。いつも一人で眠れているから、大丈夫だと思ったんだな」
 しばらくすると眠くなったのか、ノイリは腕の中で寝息を立て始めた。
 そこまで見ていた妖族の男は、安堵した様子でテーブルにノイリのポシェットを置く。
「すまなかった。感謝する」
「いいんですよ。明日みんなに自慢できますから」
 妖族の男はケラケラと笑う。彼は痩せ型で目つきの鋭い、典型的な妖族だ。見方によっては可愛いと言えなくもない。だからノイリでも平気だったのだろう。
「でも、そこまで懐かれていると可愛くて仕方がないでしょうねぇ」
「それは、まあ……」
 自分の物でもないのに、可愛くて仕方がないのは本当だ。
「じゃあ、俺は行きますね。お休みノイリちゃん」
 すやすやと眠るノイリにて手を振って、顔見知り程度の男は部屋を出た。ああいう男に見つけてもらえて幸いだったが、もし変な奴らだったらと思うとぞっとした。
 明日起きたらたっぷり説教しなくてはいけない。ここは五区の城ではないのだから。

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2007/10/12   窖のお城   48コメント 0     [編集]

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