白夜城ブログ

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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

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 授業が終わり、部室に向かう途中のことだった。
 この前うちに来ていたハルトお兄ちゃんのお友達の女の人が手を振っていた。確か小森さん。綺麗な人だけど、お料理が下手だと思われる人。
「な……何でしょうか?」
 目が怖いけど、ハルトお兄ちゃんのお友達だから頑張って顔を上げた。
「こんにちはハルナちゃん。この前はお邪魔しました」
 礼儀正しいのだが、後ろ手に何かを持っている。鞄以外の何かだと思う。それがとても気になった。
「あのね、これ、川崎君に渡して欲しいの」
 と、いかにも手作りです、なラッピング。
「えと……どうして私に?」
「ここ数日、川崎君となかなか会えなくて」
 数日……ってことは、日曜日に作ったのだろうか。今はもう木曜日だけど。
「それ、何ですか?」
「マフィンなの。川崎君好きかなぁって」
 四日前に作った、ただの紙に包まれたマフィン……
「前はチョコレート入れて食べて貰えなかったから、今度は普通のなの」
「チョコレート?」
「川崎君、チョコレートアレルギーなのよ。甘さ控えめに作ったから、川崎君でも大丈夫」
 うそだ。
 この前、ハルカお姉ちゃんが作ったガトーショコラ食べてたから間違いなく嘘だ。あれは私も食べたけど、間違いなくチョコレートだった。
 チョコレートということは、バレンタイン。バレンタインとは天国と地獄を意味すると言ってもいい表裏一体の行事だとカズマお兄ちゃんが言っていた。ハルカお姉ちゃんの弟のカズマお兄ちゃんは、ハルトお兄ちゃんタイプの格好いい人だから、チョコレートはたくさんもらっていたんだと思う。
 小森さんの発言とハルトお兄ちゃんの日頃の様子から予測すると、お兄ちゃんはチョコと甘い物がダメってバレンタインから逃げていたんだと思う。ハルトお兄ちゃんはすごくもてるみたいだし。
 格好良いから当然だけど、ハルカお姉ちゃんはそれも考え物だと言っていた。つまり、こういう事なんだと思う。
 でもどうしよう。受け取ったらきっと感想を聞かれるのはお兄ちゃん。下手に受け取って、この人の料理が本当に不味いから逃げていたのだとしたら、私が持ち帰ろうものなら恨まれそう……。
 この前のお隣さんのことで、お兄ちゃんの気持ちはよぉく理解できるつもりだった。
 世の中、不味くても我慢すれば食べられるとかいうレベルじゃない料理があるって、思い知ったから。
「あの、私は困ります」
「どうして? 渡してくれるだけでいいの」
 あああうぅぅう。
 どうしようどうしようどうしよう。
「あ、あの、それ作ったのいつですか?」
「日曜日だよ」
 やっぱり……
「お兄ちゃんおなかが弱いから、古いのはちょっと」
「古くないよ、大袈裟ねぇ。夏じゃないんだし大丈夫!」
 なんてポジティブな人なんだろう。この保管方法だと絶対に乾いているだろうに……。
 男の人も大変なんだ。
「ま、とにかく渡しておいて!」
 口が開いていた手提げにねじ込まれ、あたふたしている間に小森さんは去っていった。
 見た目は大人しそうな人なのに……。
 キララ先輩は少し派手で苦手な人かとも思っていたけど、見た目だけで中身は女の子らしい人だった。高校に入った時、ダサいと苛められないか怖かったんだって。この学校は成績さえよければ身なりには寛容だから、多少の毛染めも化粧も、事前に知らされる頭髪検査の日以外は何も言われない。
 本当に、人間は外見ではない。外見で人間性が分かるのは、汚らしい人だけだろう。お風呂入っていないから臭いとか。
「…………」
 自分一人ではどうしようもないので、携帯電話を取り出す。こういう時に頼るのは一人しかいない。
『何?』
 ハルカお姉ちゃんの後ろから、音楽が聞こえる。この音楽は近所のスーパーだ。
「この前うちに来た小森先輩が、ハルトお兄ちゃんにって、日曜に作ったお菓子を押しつけられちゃった……」
『は? 弁当の子?』
「そう。お兄ちゃん、チョコレートアレルギーだって嘘ついてるみたいだから、たぶんもらいたくないんだと思うけど、これどうしよう……」
『中身は?』
「マフィンって言ってた」
『持って帰ってきて』
「持って帰ってもいいの?」
『私、そういうの対処得意だから。トキのときもやってたんだよ』
 トキさんは、お姉ちゃんのお友達の美容師さん。素敵なおば様とか、若くて綺麗な人とか、おしゃれな人がたくさん来る予約制のお店の店長さん。面白くて格好いいから、学生時代はきっともてたんだろうなぁ……。
「わかった。持って帰るね」
 何をするつもりか知らないけど、お姉ちゃんならきっといいようにしてくれる。少なくとも私よりは。

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2007/11/19   推定家族   43コメント 0     [編集]

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