白夜城ブログ

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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

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 チャイムが鳴り、玄関を開けると米子ちゃんがいた。
「こんにちはっ」
「こんにちは、今日はどうしたの?」
 米子ちゃんは前からあがり症気味だが、今日は一段と緊張しているように見える。
「あの、草餅を作ったんです。川崎君が食べたいって言ってたので。この前借りたタオルのお礼にと思って。お口に合うか分かりませんが……」
 だから緊張しているのか。ハルトもなんて渋いリクエストを……。
「あ、悪いねぇ。けっこうあるね。ちょうどお茶入れようと思ってたから一緒に飲んでく?」
「いいんですか?」
「うん。ハルトのクラスメイトも来てるよ」
「そうなんですか。じゃあおじゃましようかな」
 米子ちゃんにスリッパを用意して、二階におやつだから来いと声をかける。持って行くのが一番なのだが、めんどいし気晴らしも兼ねて彼らがくればいいのだ。
 男子はお米ちゃんだぁとかいいながらいまだにコタツ布団をかぶったテーブルの周りに座り、男の子の中に一人だけ混じっている女の子は、米子ちゃんを見て、顔をしかめて座った。嫌な感じの子だ。ああいう彼女は作って欲しくない。
「あ、草餅。お米ちゃんが作ったの?」
「うん。草餅は初めてだけど、おばあちゃんがついててくれたからけっこう美味しく作れたと思うの」
「お米ちゃん、意外と家庭的だね」
 つい先日のショックがあるためか、常識内のもらい物を見て喜ぶハルト。
「あっ、キララ先輩」
 降りてきたハルナちゃんが、米子ちゃんを見て呟いた。
「知り合いだったの?」
「部活が同じなんですよ。手芸部」
 米子ちゃん、本当に家庭的だ。ハルナは見た目からして手芸やりそうだけど、米子ちゃんは意外だ。タッパに入った草餅に楊枝を刺すと、男の子達が手を伸ばす。
「美味しい。美味しいお米ちゃん。お米ちゃんは良いお嫁さんになれるよ!」
 ハルトが感激している。前回がひどかったから、若いのにすごいとか思っているのだ。
「ど、どうしたの? なんか大げさだね。ハルカさんの料理美味しいのに」
 過剰に感動するハルトを見て、米子ちゃんちょっと引いている。褒められなくても嫌だが、褒められすぎると気まずくなる人間がいるが、彼女はそれだろう。私も褒められすぎると引くし、そんな程度の食生活しか出来ない相手に同情する。
「この前さ、うちのお嫁に行ったお隣の娘さんが作った、とてもじゃないけど食べられない肉じゃがを口にしてから、食べられる物を作れる人を尊敬するようになったみたいでさ。ハルナが作ったごく普通のチャーハンにも感動してたから。喜ぶと言うより、感動だね」
 いちいち感動しているのだ。面倒くさい男である。
「食べられない……肉じゃが?」
 米子ちゃんが困惑する。肉じゃがを食べられないほど失敗する過程が理解できないのだろう。だって私にも理解できないから。
「私は今回の食べてないからよく分からないけど、毎回すごい味だよ。あれを食べさせるのは暴力並にひどいね。旦那さんが食べないと逆ギレして実家に帰ってきて、結果的になんでかうちで試食会するからきついんだよねぇ。しばらくはハルトがいるから助かるなぁ」
 ハルトが震えている。よっぼどひどかったらしい。あれは歴代の中でもひどかった。今までも弟が吐きそうにはなったけど、あそこまでなったことはない。発酵物各種と魚だったから無理もない。
「聞いた聞いた。すごかったらしいっすね。
 料理と言えば、小森も料理出来ないだろ。いつもパンだし」
 一番よく遊びに来るハルトの友人が女の子に言う。
「料理ぐらい、できるよっ」
 あの微妙な反応は不安があるっぽい。なんか友人の一人が目を剥いているし。
「じゃあ、自分で作った弁当持ってきてみろよぉ」
 目を剥いていた子が明らかに首を横に振っている。
「わかった。じゃあ、川崎君に作ってくるね」
「いらない」
 ハルトは顔を強ばらせて拒否した。即答だった。
「俺、ハルカさんの弁当が生き甲斐だから。もうハルカさんにお嫁になって欲しいぐらい好きだからいい」
 逃げるための手段にされるのは気に食わないが、変なモノ食べさせられて食事不信になっても困る。この草餅だって、見た目と匂いが普通だったから、不味くとも食べられないこともないと踏んで食べているのだ。しかも友人の一人が食べて普通に噛みしめているのを見てから口にしていた。今でも十分不信気味になっている。
「ひどいなぁ。美味しいよ?」
 絶対に口から出任せだ。
「俺に作ってるんじゃなくて、自分に作ってくればいいだろ。なんで俺に作ってくるんだよ。夕飯の残り物を弁当箱に詰めるの楽しみなんだからな。好きな物を多く詰められるだろ」
 たしかに面倒だから自分で詰めろとは言っている。その減り具合で、彼の好みのバランスが分かっている。
「ハルカさん、有名大学入ったら結婚してくれるって言ったし!」
 どこまで利用して逃げるんだお前。確かにそこまで言えば普通は諦めるが、それ以上にマイナスもあるだろうに。
 もてる男というのは、もてない女が思っている以上に大変なものらしい。

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2007/11/08   推定家族   42コメント 0     [編集]

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