白夜城ブログ

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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

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 私は紛れもなく女だけど、女物の服は数年ぶりに着る気がする。しかも大人の着る服だ。丈はちょうどいいので、胸にたっくさん詰め物をして、腰に補正下着を着けて、女官に化粧をぬったくってもらい、満足して鏡の前に立っていた。
「殿下ご覧下さい。私たちの手にかかれば殿方だってこの通り」
「ルーさんは元々お顔が小さくて癖のない綺麗な顔をしていらっしゃるから、思った以上の出来ですわ」
 皆が喜んでくれるので、女らしくなった私も喜んだ。
 駆け付けてきた姫様も手放しで褒めてくださる。
 ああ、自分ってちゃんと女の子だったんだと、心の中だけで浮かれた。
 外面はルーフェス様を真似たいつもの私だ。元々話し方とかは男っぽいというか、性格が似たような感じなので何の苦労も気遣いもないのだが、私的にはルーフェス様を真似たつもりの態度で微笑む。けっして、にやけているのではない。にっこりと笑っているのに、何か胸に一物あるような微笑みである。
「王子様、私の女装はどうです。私、綺麗ですか?」
「気色悪いからしなをつくるな。やり直し」
「ひどっ」
 女官に縋り付いてさめざめと泣く。女官は背中をさすって慰めてくれる。
 そう言われると思っていたけどね。あたしゃあ、どーせぶりっこしても気色悪い女ですよ。けっ!
「るーちゃん、こんなに可愛くなったのにダメなんですか!?」
 ゼクセンは可愛いなぁ。ゼクセンは本当に可愛い。私よりも小さいし、なでなでしたくなる。可愛い。
 王子様は私の顔を見て、腰を見て、再び顔を見る。腰は我ながら細すぎるので布を巻いて太くしたのだが、違和感があっただろうか。元々くびれはないが、それでも苦労して少年らしいラインにしたのに。
「まあ……不可でないのは認めてやるが、健康的になりすぎだ。僕らが求めているのは不健康そうな売れ残り娼婦だと言っている。全員が痩せた陰鬱なタイプだ。顔を明るくしてどうするんだ。趣旨を忘れるな」
 なるほど。綺麗になるために、化粧でいつもよりも健康的に見えるのだ。
「じゃあ、シャドーを入れましょう。こうやってこけているようにして、くまをつくれば少しは……」
 女官がささっと手入れされると、一瞬にして少し不健康になった。女官達の腕のなんと素晴らしいことか。
「まあ……それなら。
 もっと少しブスになると思っていたけど、腕がよすぎるのも考え物だな」
 いやいやマジで化粧すごい。これは世の女性が化粧を塗りたくり、人前で化粧を取らない気持ちもよく分かる。楽しいわ。
「本当に素晴らしい技術ですね。それに、パットって思ったよりもさわり心地いいですね。ゼクセン、ほらほら」
「ええっ、いい、いいよっ」
 触らせようとすると首を左右にぶんぶん振る。偽乳なのに。
「もう少し詰めてもいいんじゃないか」
 ニース様が口を挟んでくる。かなり詰めているのだが、まだ詰めろと言うのかこの人は。
「ニース様はやっぱり胸の大きな女性が好みなんですか?」
「詰め物と分かるでかい胸は下品だろう」
「私を下品な偽乳にしたいんですか。
 姫様のは本物ですよね。比べると、さすがに見た目から本物とは雲泥の差ですよね。何にしても天然は有り難がられるものです」
 私は心配して付き添ってくれている姫様と自分を見比べた。彼女は胸を隠して少し後ずさる。羨ましいそれを見て、うっかり自分が男だという事を忘れそうになった。
「ニース様も、男の私を姫様と比べないで下さいねぇ。高いレベルの方と比べても意味ないですよ。姫様はニースさまがお好みなスタイルの持ち主ですから」
「グラは関係ないだろうっ!」
「ええ、分かってます。胸の大きな女性が好みなんですね」
「だから、なぜそうなるっ!? 女などどうでもいいだろうっ!」
 王子様の浮いた話はかなり大袈裟なのをよく聞くが、ニース様にその手の話はない。王子様のは顔のエロさからある事ない事言われているだけだが、ニース様は悪い性格の割には《女性》関係の噂をほとんど聞かない。せいぜい、最近姫様の事で噂されるだけ。それは私という原因がある。
「…………女性はどうでもいい」
 私はずりずり後ずさり、姫様の耳元に顔を寄せた。
「姫様、あの噂はまさか本当なんですか?」
「さあ。でも四六時中一緒よ。一緒のベッドに寝ていたこともあるって聞いたわ。でも私はあの二人のことなんてほとんど知らないから、肯定も否定も出来ないのよ」
 それはそうだろう。彼女は王族だがホーン達と同じ宿舎で寝泊まりしているのだ。大人達は二人を離して育てただろうし、たまに嫌味を言い合う程度の仲である。噂の真相など知るはずもない。
「ちょっと待て、噂とは何だ」
「いえいえいえ、偏見はないんです」
 私はじりじりと後退しながら目を逸らす。
「待て、今の会話はおかしくないか。僕たちにどんな噂があるって言うんだ!?」
 王子様が恐い。目がとても怖い。
「わ、私は知りませんっ! 知りませんっ!
 あ、そうだ! 女性らしく振る舞うために、侍女の皆さんの観察に参りますごきげんようっ」
 なんか狼狽してわめきながら追いかけてくるが、もちろん飛べる私に追いつけるはずもなく逃げ切って、先ほどの発言を新人侍女は見た! とばかりに噂好きの女性達に紛れて吹き込んでおいた。
 女装がこんなところで役に立つとは。
 ああ、楽しい。くせになりそうだ。

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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

2008/01/29   詐騎士   34コメント 0     [編集]

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