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「ハルカちゃん、ほんとごめんねぇ。機嫌直して。映画連れてってあげるから。ディナーもごちそうするからぁ」
トキさんがハルカさんのご機嫌取りに、肩をもんで映画のチケットを見せる。
ハルカさん好みのクールでタフな美人が活躍する映画だ。
「別にぃ、二度と来こなけりゃいいんだけどぉ」
ハルカさんはこの前の通称「屑男」と書いて「クズオ」と読むストーカーな詐欺師のご両親が持ってきたお菓子を食べながら言う。
お菓子には罪はないし、お菓子は美味しいからいいのだそうだ。
「トキさん、あの人なんだったんすか? ハルカさんの記憶にはないらしいけど」
「なんか借金があるらしいわよ。そこそこモテるみたいで、貢がれてたんだけど、それもパチンコと競馬で使い込んじゃったらしいわ。
ハルカちゃん、男から避けられるタイプだから、男慣れしていない、簡単に落とせるって脳内変換されてったみたい。化粧をすれば意外と好みだったのもありそうだけど」
まさしく屑男。
最低だ。クズだ。男の風上にも置けない。
「ハルカさんみたいなプライドの高い美人が落とせると思うなんて、信じられない」
「……ハルト君は良い子ねぇ。ハルカちゃんをプライドの高い美人だって。協調性のないだけのハルカちゃんがプライドの高い女なんてっ!」
ハルカさんがトキさんを睨みつけている。
ハルカさんはプライドは高いと思うけど。だからこそ目の前で腹の立つことをされると手を出してしまうタイプだ。自分なら簡単に行動するようなことで、うじうじしているのを見ると腹が立つから手を貸す。
それでけっこう彼女を一方的に慕っていた人はいるらしい。
そのとき、玄関のチャイムが鳴る。
「はーい」
立ち上がろうとすると、トイレに行っていたハルナちゃんが出てくれた。
「きゃぁぁぁぁぁっ」
ハルナちゃんが悲鳴をあげた。
「ハルナっ」
真っ先に動いたのがハルカさんだった。俺たち男はハルカさんに続いて玄関に向かう。
「てめ、屑男っ」
屑男が玄関にいた。
何やら誤解があってどうこうとハルナちゃんの腕をつかんで話している。見た目だけなら穏やかな好青年だからたちが悪い。ハルカさんぐらいばっさりしているから気付いたけど、騙されて流されていたら気づきにくいだろう。
「うちの子になにしてんだテメェっ!」
ハルカさんが屑男の腕に手刀を振り下し、ハルナちゃんを抱き寄せた。
「ハルナちゃん、短縮1」
「うんっ」
ハルナちゃんがリビングの電話に向かおうとしたとき、
「ちょっと、何してるの!?」
女の人が入ってきて、屑男を羽交い締めにした。
よく見れば、屑男に騙されて一緒に来たハルカさんの後輩。
「もう、何考えてるの!? ダメって言ったじゃない!」
美人さんの悲痛な叫び。悲痛だ。なんて非道い男だろう。
「ええと……ええと……何してんの? こいつと親しかったの?」
ハルカさん、名前は覚えてないらしい。
「い、イトコなんですっ。
もう、恥ずかしいっ! 最低っ! お兄ちゃん、持ってって!」
後輩さんのお兄さんらしき人が入ってきて、屑男を連行していった。
身内か。身内だからこそ余計に悲痛。
ひたすら頭を下げる後輩さんが、すごく可哀想でならなかった。
「先輩、ほんっとごめんなさい! お詫びに今度うちのお店でおごるんで!」
「君の家は確か和食のお店だっけ? 煮物が美味しい」
「はい」
ハルカさんは満足そうに頷いた。
買収された。ハルカさんが買収されてしまった。
ハルカさんが良いなら別に良いけどさ……。
名前よりも煮物で相手を認識するのはどうかと思う。
2008/11/24
推定家族
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