白夜城ブログ

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 部屋にはドレスが並んでいる。
 ノイリのドレスと、女王陛下のドレス。ノイリのドレスはふわふわで、女王陛下のドレスはきらびやか。
 今夜のささやかな夜会と、明後日のお誕生会のドレスを選ぶのだ。明日はパーティの打ち合わせなので、今の内に候補をしぼっておかないといけない。
 マルタが持ってきてくれたドレスを並べ、彼女の口からどんな原型でどんなアレンジをしたのか説明を受けた。
「ノイリのドレスはノイリにしか着られぬな」
「女王陛下の方が背も高くてスタイルがいいですものね」
 ノイリと違ってはっきりとした凹凸があるのだ。あれでは子供服は着られない。
「わらわの昔のドレスはお前にも着られるか」
 黒いドレスをあてがわれ、女王陛下はうんと頷く。
「こういった趣向もそなたには似合うな」
 そうなのだろうか。初めてなので変な感じだ。鏡を見ても、いつもの自分が黒いドレスを身体の前に下げている。子供服だから黒くても大人が着る物よりは甘い雰囲気がある。
「今宵はいっそ、ふわふわドレスではなく、しっとりとしたドリスはどうじゃ。エンダーは驚くぞ。背中は開いているから着られよう」
「エンダー様は喜ぶでしょうか」
「可愛い事には違いない。喜ぶさ。試しに着てみよ」
 ノイリは着ているドレスを脱いで、黒いドレスをマルタに着せてもらう。黒いレースがついていて、いつもとは違う可愛さがあった。やはり女王陛下のために作られたドレスは趣味がいいし素材もいいし縫製もいい。元々つけていた可愛い花やリボンとも相性がよくて、髪を直してもらうと見栄えがもっとよくなった。
「ノイリは何を着ても可愛いねぇ。エンダー様もきっと喜ばれるよ」
「ドレスがとっても可愛いです」
 鏡の前で後ろを向くと、翼はギリギリ出ている。正面を向くとやっぱり可愛い。
「なんだか、大きな着せ替え人形みたいですわ、ティーダ様」
「ニアスはまこと人形好きだったという事か。人形は主が色づけする真っ白な、いくらでも元に戻して上塗りできる存在じゃ。ここは白く塗られた人形を、黒く染めてみるのも面白い」
 女王陛下がにやにやと笑いながらジュエリーボックスをひっくりかえす。
 言葉の通り本当にひっくりかえした。
「陛下!? そんなことをされてはっ」
 マルタがはわはわと慌てた。ここに入る事を許されている使用人はマルタだけだ。他の侍女達は部屋の外で待機させられている。マルタは可愛いからいいのだそうだ。
 だからマルタはどうしていいのか分からなくなっている。彼女は一介の侍女であり、女王陛下にお仕えできるような経験がないのだ。五区の城にいた女性の貴人はラクサだけで、それでは何の経験にもならな。
「よい。この中には私が乱暴をしても傷つかぬ物しか入っておらん。数年前の物じゃ」
 女王陛下は中から黒いリボンやらチョーカーやらを取り出す。
「女王陛下、どうなさるんですか?」
「私の趣味の良さを知らしめるだけじゃ。
 それと、その女王陛下はやめい。ティーダと呼ぶことを許そう」
「ティーダ様?」
 エスティーダ女王陛下は満足そうに頷いた。王族でも愛称で呼ばせるのだ。

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2008/01/25   窖のお城   31コメント 0     [編集]

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