白夜城ブログ

6 魔女の弟子2部後ぐらいの嵌められたマディアス観察1
あの作戦決行翌日です。
 マディアスはため息をつく。
 それはそうだろう。可愛がっていた、娘のように扱っていた大切なイレーネを、欲望のままに押し倒したのだから。
 しかも、様子を見に行ったエヴァリーンが驚くほどイレーネが悲惨な状態だったらしい。
 全身傷だらけで、殺されてしまったのではと恐れたほどに。
 だから今はエヴァリーンはイレーネに付きっきりで看病している。可哀相なイレーネ。なにもこんな男を好きにならなくてもいいではないかと悲しくなった。
「最悪だ……」
 マディアスは机に突っ伏している。酒に逃げようとしたが、酒で失敗したんでしょうと言うとやめた。
「何もそんな言い方はないのでは? イレーネ様が聞いたら傷つかれますよ」
「最悪なのは自分だ」
 おぼろげに記憶はあるらしい。記憶があるからこそ彼にとっては最悪なのだ。忘れていたらそれはそれで最低だ。
「そうですね。信じていた養父だったのに、酒が入っただけでケダモノになるとは。しかも男はケダモノと言い続けた本人。
 いくら飲み慣れない酒だったとはいえ……」
 突っ伏したまま頭を抱えてぴくぴくしている。
 主の滅多に見られない反応は楽しいが、苛めすぎてイレーネ様との仲を壊しては元も子もない。彼女の恋を応援すると決めたのだから。
「可哀相なイレーネ様。せめて初めては優しくして欲しいと思っていたでしょうに」
 本人もまさかあんな目に合うとは思っていなかったはずだ。
「ああああああああああああっ」
 頭を抱えて、かきむしり、
「もう、合わせる顔もない」
「合わせなければ余計に傷つかれますよ。
 事が終わったらそっぽを向くなんて、身体が目当ての男の態度そのものです」
「そんなわけがっ」
 マディアスは身体目当ての部分に反応して怒りを露わにする。しかし怒りを持っているのはディートリヒの方だと思ってか、すぐに黙った。
 ディートリヒはイレーネの事を心から可愛いと思っているし、エヴァリーンと供にそれを隠さず生活している。
 彼女を育てたのはマディアスではなくエヴァリーンと彼と教師達なのだ。今ではマディアスよりも信頼され、マディアスには内緒で遊園地の経営したいという事も真っ先に相談された。
 マディアスに対する反抗もあり彼には内緒だったとはいえ、彼女は可愛くて仕方がない存在だ。歴代の女王の中で一番可愛い。
「イレーネ様はご自分の容姿にコンプレックスをお持ちです」
「あれだけの身体がありながら、理解できん」
 昔は痩せていたのに、今ではすっかり豊満だ。ああいう身体がマディアス好みだと、彼は知っている。
「だからですよ。イレーネ様のお顔立ちは基本的に純朴な少女です。美女を期待して寄ってきた男ががっかりして目を向ける先はあの身体ですからね。
 その上、マディアス様に避けられたら男嫌いが深刻になるのは間違いありません」
 まさか、あんな小娘にはめられたとは考えもしないだろう。まず、イレーネが彼にそのような目を向けていた事が彼には青天の霹靂である。
「っくぅ……どうしするか」
「どうするって、責任を取るしかありません」
「責任!?」
「取らないつもりなんですか?
 次は優しくしてあげて下さい」
「次!?」
「当たり前です。見ず知らずの相手ならともかく、傷つけるだけ傷つけてごめんなさいは、一番最悪ですよ。並の女性なら辛くて家を出ますね」
「家出!?」
 あれが罠でなければ、その可能性もあったが、しっかりイレーネが画策した『罠』である。悲しい事に、愛ゆえに。
「マディアス様の愛が信じられなくなる前──今夜にでも今度は優しく」
「いくらなんでも今夜は早いだろう!」
 拒否はしない。やる気はあるらしい。しめたものだ。
「何をおっしゃるんです。時間がたてば立つほど泥沼です。
 必要なのは愛の言葉と泥沼の快楽! 甘い言葉でお慰めして、イレーネ様をマディアス様の虜にしてしまえばいいだけです」
「あのなっ!」
「お嫌ですか。でしたら俺がその役目を引き受けますが。
 イレーネ様の事は歴代女王の中でも一番気に入っていますから」
「ふざけるなっ!」
 他人に手を出されるのは嫌だというのは相変わらず。
「では、エヴァにそれとなく伝えておきましょう」
 イレーネが喜ぶ顔が目に浮かび、主へ笑みを向け部屋を出た。
 追って止めないので、覚悟は出来たようである。

back | menu | next

誤字の報告はこのフォームからお願いします


魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

2008/10/26   おまけ   296コメント 8     [編集]

Comment

 

-1179     2008/10/26   [編集]     _

良くやった!!
何て面白い展開に!

-1180     2008/10/26   [編集]     _

よっしゃぁ!!
きたこれ、待っててともよ。てか、マディアスお前(爆笑)

OKA1181     2008/10/26   [編集]     _

マディアス……
酒は怖いなー(゚∀゚;)

うなぎ1182     2008/10/26   [編集]     _

年寄りでも酒でそんなに酔うのか……
アーリアの「恋の矢を持つ女」の異名は本当だったんだ。
イレーネ頑張ったなぁw

G1183   うあ…   2008/10/27   [編集]     _

女は怖い…
怖いから余計に…

1184     2008/10/27   [編集]     _

イレーネ大好きだから幸せになって欲しいです。

-1185     2008/10/27   [編集]     _

イレーネ、本当に本当にマディアスでいいのかー!

うなぎ1186     2008/10/28   [編集]     _

酒に何か入ってたんでしょうか?

例えば………イレーネの愛………とか(爆


Pass:   非公開:    

.

最新記事のRSS

.

更新履歴 カテゴリ コメント

.

.

拍手

.

リンク

.



.

.

.