白夜城ブログ

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 新年の会議は数日続く。会議に参加しない面々は退屈になって遊び始めた。
 ノイリはルーシアに案内され、人形をたくさん見た。
 レースをたくさん買ってもらった。マルタへのお土産だ。マルタはレースがとってもよく似合うネズミさんだから。
 朝起きて、ティラに髪を整えてもらい、朝食を取るためラクサもと一緒に食堂に向かい、驚いて足を止めた。
 知っている女の子がいた。
「ティーダ様!?」
 そう、エスティーダが廊下を歩いていた。
 ラクサは取り乱して廊下を走った。
「おお、ラクサか。朝から騒がしい」
「なぜここに!?」
「時間があったから、最後の日ぐらいはわらわも参加しようかと。区王の会議に、わらわが出るのは当然であろう」
 ラクサはエスティーダの護衛をする二人を睨み付ける。
「どういうこと」
「ティーダ様の命令には逆らえません」
「……そう」
 ラクサは肩を落とす。簡単に納得してしまった。
「選りに選って四区に来るとは、何を考えておいでです」
「ふん。わらわを間抜けと思うておるか。
 一区ではなかなか出来ぬ話があるからここまで来た。テルゼはおるか」
 ラクサが手で顔を覆い壁に手を突いた。
 手の隙間から、諦めの混じった沈痛な面持ちが覗く。
「テルゼの阿呆と何を企んでおいでですか」
「んん。企んであるのはあやつだけ。わらわは許可を出すだけ。
 ん、ノイリもおるのか。相変わらずじゃな。そなたはずっとそのとぼけたノイリでいるとよい」
 そう言って彼女は再び歩き出す。
「どこに向かっておる」
「みんなで朝食を取るんです」
「ちょうどよい。わらわも邪魔をするか」
 一緒に朝食を食べるのだ。突然三人増えて、料理人は大変である。
 皆が集まる食堂に入ると、やはりぎょっとした顔をする。
「なぜエスティーダ様が!?」
「なんじゃ、あの激痩せチビノイリは!」
 双方が驚いた。
 エスティーダは食事に夢中のヘルドの元へ行くと、翼を引っ張る。
「いてぇ!」
 ばちりと稲光が走り、エスティーダは手を離した。
「本物の天族! こんな物どうしたのじゃ」
「俺が拾ってきた」
 テルゼを挙手する。
「いくらじゃ」
「売りませぇん」
 テルゼの即答にエスティーダはむくれた。
「ティーダ様、この子は我が家で引き取る事になりました、ヘルドと申します」
 ティリスが笑顔でヘルドを紹介した。
「ヘルド、この方は地下で一番偉い一区の女王陛下よ」
「こんなガキが!?」
 ヘルドが思った事を素直に口にしてしまった。
 天族はあまり普通の会話をしないため、無口らしい。ヘルドはたくさん話す事に慣れてしまったようだが、言葉が少なくすむ、湾曲しない表現をする。素直に全部口にしてしまうのだ。
 皆は固まり、エスティーダが顔に不快を表した。
「こら、せめてお子様と言いなさい」
「ティリス、それはガキよりもタチが悪いぞ」
「申し訳ございません。なにぶん、この子は物を知らぬ天族。翼が折れたところを捕まっていたのをテルゼが助け出して間もないものですから」
「そのガキよりも、お子様呼ばわりが気に食わんのじゃ」
「エスティーダ様はまだまだお子様でいらっしゃいます」
 ティリスは言ってほほほと笑う。
「まったく、そなたら姉弟は……」
「ティーダ様は朝食がまだでしたら、ご一緒にいかがですか?」
「ここは自分の城か」
 エスティーダの言葉にティリスは笑う。
「あら、私は王弟と王妹の保護者だもの。ここはもう一つの家に等しいですわ。
 ねぇ、二人とも」
「はい、お姉さま」
 姉弟の素直な返事にティリスは満足げだ。
「ヘルドも増えて、うちは子だくさんだわ」
「だったらさっさと婿をもらえ。お前の弟はまともな王族として過ごすつもりは全くないぞ」
「あら、ティーダ様はうちの弟と親しく話されるの?」
「人を巻き込もうとしておるだけじゃ。
 ジジイどもが反対するであろう、ろくでもない事をな」
 エスティーダは笑い、手早く用意された席に座った。

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2008/10/24   窖のお城   294コメント 2     [編集]

Comment

 

じゅりあ1171     2008/10/25   [編集]     _

テルゼの悪巧みって…??

uri1172     2008/10/25   [編集]     _

激ヤセチビノイリってそのまんま過ぎるw


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