白夜城ブログ

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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

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ガートルード の番外編です
4

 イレーネがマディアスの部屋に入ると、リーンハルトが土下座をしている姿が目に入った。
 可能性をいくつか考えて、ため息をつく。
「マディアス。リーンを許してあげて」
「僕ですら何も聞いていないのに、お前は何を口一番に」
「何かマディアスが理不尽な事で怒ったのでなくて?」
「いきなり土下座されて戸惑っているところだ。失礼な」
 イレーネは、まあ、と唇を押さえた。
 ついに結婚の許しを得るつもりなのだろうか。
「許してあげたら?」
「まだ何も聞いていないと言っている」
「ガーティのことでしょう。結婚させてあげなさいな」
 二人はお似合いだ。リーンハルトほど彼女を愛していて、マディアスに認められるほどの立派な男はそういない。ただ一人、許される可能性のある者だ。
「いえ、結婚ではなく……イレーネ様の前では、ちょっと」
「何、わたくしには言えない事を相談しようというの?」
「いえ、その……」
 顔を上げて視線を逸らすリーンハルト。
 それだけ協力してやっているのに、この態度は何だろうか。
「リーン、いいから今ここで言ってみろ。それによって考える」
 彼は視線を泳がせる。そのまま立ち上がり、定位置の椅子に腰掛けた。
「知りませんよ。
 この前、パーティに招待されたじゃないですか」
 彼は拗ねた子供のように話し始めた。いじけた感じで、もじもじと。
「あそこの庭の片隅で……」
 頬がわずかに赤い。照れを隠すように指を何度も組み替える。
「ガーティと一緒に、男女の……その、あれを目撃しまして」
「あれとは、どれほどの」
「暗かったし、すぐに引き返したので私はよく覚えていませんが……まあ、確信を持って」
 もじもじもするし、イレーネの前で話したがらない理由も理解した。そして、彼がウブなのも。
「ヤっている最中をガーティと目撃したのが何か?」
「っ……そのような言葉っ!」
 彼はイレーネを気にして抗議をした。
 彼は純情だ。恋に一途で純情な青年は、女性であるイレーネの前で男女について語るのに羞恥を覚えている。
「男のくせにまどろっこしいいい方をしないで下さい。で、それがどうして土下座に繋がるのですか?」
 イレーネは彼が話しやすいように軽く言う。
 リーンハルトはうつむいて息を吐く。
「その、なんというか、あの物知らずは子供でも多少に知識を持っているだろうあれを見て、あれは何をしていたのだとか、何とか」
 つまり、ガートルードは何も理解していなかったと。
「実践して教えたのですか」
「まさか! マディアス様も恐ろしいですが、そんな卑怯な事はしません!」
 真面目な男だ。本当に愛しているのが分かる。これほど愛されるガートルードがうらやましい。
「ただ、私の口からはとても教える事が出来ず、かといってこのまま放置するのもなんですし、かといって相談できそうな身内と言えば、ろくな事を吹き込まないだろうから恐ろしく」
 それには頷けるとこがあった。
 が、今まで彼が土下座していたマディアスこそ、一番相談すべきではない相手である。
「それで、イレーネ様の教育係としてついていた女性がいたでしょう。あの人をガーティにつけていただけたらと。彼女なら、上手く教えてくれそうですから」
 マディアスではなく、教師を借りる許可をもらいたかったのだ、さすがに彼もマディアスとのつき合いが長いだけあり、マディアスに頼る事が出来ないのは承知していたのだ。
「お前、それぐらいで土下座したのか」
「性教育など必要ないと切り捨てていた方に頼むのだから、土下座ぐらいしますよ。余計な知識は与えるなと、仰っていたではないですか」
 マディアスが気まずげに視線を逸らした。
「マディアス、ちょっといいかしら」
 今思えば、イレーネもその手の教育を受けた覚えはない。
「あなた、心の底から私たちを結婚させる気はないということ?」
「そんなことはない」
「普通、王族ともなれば、性教育ってとても大切なんじゃないかしら」
「よそはよそ、うちはうち。この国の教育方針だ」
「国じゃないでしょう。あなた個人でしょう。
 もういいわ。話にならない。リーン、わたくしが許します。いい機会です。教師をつけましょう。午前中は一般常識を教えます」
 リーンハルトはイレーネへと深々と頭を垂れた。マディアスは不機嫌だったが、イレーネが睨むと何も言わなかった。本人も少しは気にしていると、彼の残り少ない良心を信じた。


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2008/10/17   おまけ   287コメント 6     [編集]

Comment

 

とーこ1123     2008/10/17   [編集]     _

この話、とっくに出していたと思ったのに、なぜかどこにもなかったので、ガートルードです。
リーンの片思いは当分続きます。
弟子でもそのうちモルヴァル組を出してあげたいです。

-1129     2008/10/18   [編集]     _

リーンさん、なんて正攻法なんだ。ここまでされれば、流石に認めずにはいられんですね。保護者以上ですー。まさしく育成…。

G1132   まぁなんちゅうか一言で言ったら…   2008/10/18   [編集]     _

初々しい。

傍から見てるほうが赤面しちゃいますです(^^;;

えま1133     2008/10/18   [編集]     _

イレーネ様の性知識はどれぐらいのレベルなのか気になりました。
自分で調べて耳年増っぽい感じですが(笑)

うなぎ1136     2008/10/18   [編集]     _

そこから入らなきゃいけないって・・・
ほんと、一から育てなおしなんですね

とーこ1139     2008/10/18   [編集]     _

イレーネは若い女の子が持つ一般常識程度の知識です。
この後、どうせならと一緒に授業を受けてマディアスを不機嫌させました。


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