白夜城ブログ

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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

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 ノイリは薄暗い外を見ることなく昼食を取り、再び会議が始まったので王族の弟妹達と一緒に控えていた。
「このお城は、本当に窓がないです」
 暗族に高さは関係ない。竜族も壁ぐらい登れるが、飛ぶのと違い時間が掛かる。
「窓がない代わりに穴があるんだ。それも王族の部屋はにはない。毒の空気を流し込まれたら終わりだから。闇族は竜族に比べて毒に弱い。この部屋は広いから空気穴はあるけどね」
 ローレンが天井の方を指さした。本物の小動物なら通れそうだが、魔物には無理だ。
「地上だと、換気は簡単なんでしょうね。勝手にあんな風が吹くなんて」
 ルーシアの言葉で、ノイリは地下には風がないという事実を改めて認識した。
 地下のような所では風がないのが当たり前の事すぎて、考えた事もなかった。
 多くの魔物達が風を知らないのだと、考えた事もなかった。
「風があると洗濯物がよく乾いていいです。遠慮無く火をたけるから燻製も簡単にできます」
 地下では燻製がとても高い。だから保存食は塩漬けが主流だ。地下はなかなか換気されないから湿気も溜まりやすく干物も専用の部屋を作らなければならない。燻製はもっと地上近くでないと出来ない。
「そうそう。地上はいろんな食い物があるよな」
 テルゼは腕を組んで言う。彼はよく地上に行くから、地上通なのだ。
「食い物と女の子だけは地上の方が恵まれてる。家畜の肉の味も地下とは違うし、海に行けば魚も色々いる」
 彼は何かを思い出して幸せそうな顔をした。彼は今まで色んな美味しい物を食べてきたのだ。
「魔族や闇族は見た目も似てるから、昔は俺達も地上にいたってのも本当なんだろうな。味覚も近いし」
 テルゼの言葉でノイリ驚いた。
「昔は上にいたんですか?」
 魔物はずっと地下にいるのだと思っていた。
「始めから地下にこんな国を作れるかよ。地族や竜族ならともかく。獣族だって元々は上か、上の方で暮らしてたんだよ。
 闇族もそうだが、だんだんと下に潜っていったらしい。それに魔族が手を貸したらこうなったんだ」
 動物は地面に穴を掘って巣にするものが多い。コウモリは窖で過ごし夜になると出てくる。
「どうして地下に潜ったのかな?」
「地上は安定しないだろ。地上は病も多い。人間も多い。
 記録には残っていないが、魔族だけに感染する病が原因じゃないかとも言われてる。今完全に外で暮らすのなんて、人間か動物か天族みたいに空を飛んでいる奴ぐらいだろ」
 知らなかった。
「地下に潜ったのはどれぐらい前の事なんですか?」
「さあ。でも、一区王がまだ五代目だから、千年ぐらいじゃないか?」
「歴史は残っていないんですか?」
「ああ。石版に書かれてたんだけど、ずいぶん前に壊されたんだ。反乱があったんだとさ。
 それ以来、紙の本になったらしい。どうせ壊れてしまうなら、守りやすい方が良い。本なら耐火を施せば潰れても無事だったりするからな」
「でも、紙は植物です」
 植物なら、地上よりも紙の価値が上がるのではないか。
「食べられる実がなる植物を紙にするんだ。元々は五区と六区の境目辺りで育てられるようになった物で、ノイリも食べた事があるぞ。小さい赤い実。あれを取り終わったら紙にするんだ。ああいうのは獣族が好きだから、一石二鳥だろ」
 ノイリは思い出して頷く。
 地下にも色々あるのだ。食べ物や住んでいる人達が違うだけではない。
 語るテルゼを見て、ローレン達が熱のこもった視線を向けた。
「テルゼはどうしてそんなに他区の事に詳しいの?」
「知りたいと思うからだ。ローレンは知りたくないか? 他区の事、地上の事。俺は北の魔族の事も知りたいな」
 テルゼは奔放だ。暇さえあれば色んなところに行っている。だからとても物知り。
「あーあ、ガキはいいよなぁ。俺は魔族ってだけであのティーダ様の婿候補扱いで一区に縛られるんだ」
「それならガキじゃなくて、魔族以外はだろ?」
「んなことはない。ニアスも一区にいるじゃないか。婿候補じゃないだけで」
 テルゼはゲラゲラと笑う引き合いに出されたニアスは顔をしかめる。
「俺、婿候補失格だから、ティーダと悪巧みしてるんだぁ」
 ニアスは不機嫌な顔のまま、ちらとラクサを見た。彼女は肩をすくめて見せる。
「ティーダ様は危なくないわ」
「ならいい。今死なれたら困るからな」
 悪巧みとはなんだろう。
 聞いても秘密なのだろう。
 だからニアスも聞かない。ノイリも聞かない事にした。
「上手くいったら、ノイリにも良い物たくさん持ってきてやるからな」
 良い物が手に入る何かなのだ。聞き出すのではなく、聞いた言葉から想像していくことが大切だ。
 教えてもらえずとも、気づけるようにノイリはなりたかった。

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2008/10/15   窖のお城   285コメント 1     [編集]

Comment

 

ケイ8666   上手くいったら   2011/10/15   [編集]     _

上手くいったら、テルゼがるーちゃんを持ってきましたね。


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