白夜城ブログ

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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

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6 5の後
「あはは、ロバスがはまってる姿を見たんだ。驚いたでしょ、悪魔のくせにへんなところだけ神経質で」
 ウル様の執務室にお茶をお届けすると、調子はどうかと話しかけられたので、今朝見たものを伝えたところ、彼はケラケラと腹を抱えて笑った。
「あれはあれで、上手く誘導すれば助かるのですよ。上手く誘導するのが難しいのですが」
 ウル様宛ての手紙の封を切っていたじいやさんが言う。ウル様はその手紙を片っ端から仕分けしていた。ゴミ扱いの手紙の方が多く、大切な手紙の山は一番少ない。最近は手紙のやりとりが多く、普段はここまで大変ではないらしい。彼は病が流行ると予言したため、その対策に追われているのだ。ベルさんはそのおかげで世界が平和だとすら言っているが、私はそうとは言えないと感じている。脅迫めいた事をしてでも、物資を手に入れているのだから。
 もちろん、世界平和など、私が気にする事ではない。
「見かけても邪魔じゃなかったらほっとくといいよ。あれは自己満足だからね。じいやみたいに誘導できるぐらいの度胸と話術があれば、利用するもいいし」
 彼は癖のある赤毛を指先に絡めながら言う。
 ロバスさんのあれは、じいやさんがそそのかした結果なんだ……。
 今日のは失敗の部類だったようだが。
「人間ってさ、悪魔っていうのはすごい生き物って思ってるけど、実像は想像されているのとはかなり違うんだよ」
「はい」
 確かに『すごい』には違いないが、何かが人間とはずれている。だから人間の『すごい』とはズレてくる。しかし『すごい』事には変わりない。私にはとても真似が出来ない。
 悩む私を見て、ウル様は手紙の山を指でさした。
「たとえばさ、この未開封の手紙」
 ウル様は一通手にして、光にすかした。
「ロバスならこの状態ですべての手紙の内容を把握し、暗記できる。賢いし凄いって思うでしょ?」
「はい。それが本当なら、うらやましい限りです」
 じいやさんのしていることも無駄になるだろう。いらないと思われる手紙は、ロバスさんが捨ててしまえばいいのだ。私が医学書を必死で暗記したのも無駄な努力のようにすら感じる。
「でもね、中身を理解してなかったら意味ないよ。手紙って言うのは、言葉の裏を読まなきゃ意味がないけど、悪魔は額面通りにしか捉えられない。戯れ言のような中にも大切な事が書かれていることがあるけど、悪魔は気づけない。自分中心だから」
 中身を理解していない。
 手紙に書かれた皮肉とか、暗号めいた手紙とか、そういう意味……かな?
「たとえばね、この部屋にあるすべての本の、一字一句違わずに覚えても、結局は人間はどうしてこんな理屈をこねるんだろうとか考えるんだよ。こんな数字のパズルを解いて楽しいのかとか、考えるんだよ。数学なら計算なら瞬時に出来るけど、応用問題とか苦手なダメダメちゃん達なの、悪魔っていうのは。もちろん適当に話を合わせる事は出来るけど、空気を読めない、他人の気持ちが分からない、分かった気になっている」
 応用が出来ない。
 私の中の胸のもやもやが瞬時にして晴れた。
「ああ……まさにそんな雰囲気ですね」
「悪魔全般、そんな感じなんだよ」
「種族的なんですか?」
「そう。たまに数学大好きって悪魔がいたとしても、ただのパズル的な数学オタク。自分で何かを発見するまでには至らない。答えが今存在する問題しか解けない。
 自分が考えるのがめんどいって思った瞬間投げ出すの。だから悪魔は人間を取り込むんだよ。魔術師や優れた人間を魔道士とか呼ばれる使役にして、その知識を取り込み、他の子にも分けてさらに肥え太る。
 ボクとちょっと似ているかな」
 悪魔に限界はないけれど、と付け加えて、彼はお茶を飲んだ。
「ああ、でも、悪魔にも能力以外で優れた所もあるんだよ」
「あの力があれば十分凄いと思うんですけれど」
 ウル様は笑われる。
「力なんて、寄せ集めればいい。ボクの爪の先ほどの力しかない神子でも、寄せ集まればロバス程度の悪魔なら狩れるから」
 程度というが、彼は悪魔の中では上位の存在だ。神殿の神子に従う程度の低い悪魔とは違う。
「見る目がいいんだよ、あいつらは」
「彼は見目があるんですか?」
「そう。目がいいんだ。耳が良いんだ。鼻がいいんだ。それらで良い物を見つけるのが得意だよ。良い物、良い人を探して掻っ攫う。悪魔が目をつけて欲しがる物は本当によい物。
 買い物に連れて行ってご覧。ボクは骨董品を買う時、彼がいいと言った物を買うよ。
 それの何割かは別の場所で10倍で売れるから。よい物だけど今は無名の物もある。でも、後に価値を持つかも知れない。だからうちの地下には色んな物が置いてある。ボクは長生きする予定だから、困る事はない。良い物は飾って楽しいしね」
 ウル様はくすくすと笑い、もう一口お茶を飲んだ。
「ようは悪魔ばかと鋏は使いようなんだよ」
ウル様は支配者だ。他人を使うために存在する。
 ロバスさんのような存在は、そんなお方のために在るかのように思えて、苦笑した。
 私は彼がまるで世界の王で在るように感じている。今はまだ、外見通りの子供相手に。
 彼は王になる事も出来るのに、地方領主で満足しているような子供相手でありながら、それに違和感が無く、戸惑いもないのが不思議だ。
 彼は肩書きが何であれ、王は王。そう思わせる不思議な方だ。
 

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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

2008/10/06   おまけ   274コメント 3     [編集]

Comment

 

G1095   悪魔って…   2008/10/06   [編集]     _

まぁ言ったら有機的コンピューターみたいなもんですか?

とーこ1096     2008/10/09   [編集]     _

そんな感じですかね
力が強ければ強いほど、この傾向が強く、フレア父はまさにそのタイプ。

G1102   ソレって…   2008/10/09   [編集]     _

文字通りの「アタマのいいバカ」ですねw


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