白夜城ブログ

36

 最近、ハルカさんが
「うざい」
 と言って携帯電話を切ることが多い。不機嫌そうなので何も聞かない事にしているが、今日に限っては
「くんじゃねー」
 くんじゃねって何だろう、などとぽけーとしていたら、玄関のチャイムが鳴った。
 廊下にいたらしきハルナちゃんが、はーいと言って玄関にかけていくの音を聞いて、ハルカさんがはっと顔を上げて立ち上がった。
「ハルナちゃん、待って」
 リビングから出て追うが、時は既に遅く、ハルナちゃんは玄関のドアを開けて知らない男に声をかけられていた。
「橘川の妹? 可愛いねぇ」
「うちの子に気安く声をかけるなっ!」
 ハルカさんが怒気を含む声で言うが、男はへらへらと笑って勝手に靴を脱ぐ。うしろにはぞろぞろと知らない大人達がついてきている。
「橘川先輩、こんにちは!」
 可愛い女の人がハルカさんにあいさつする。
「こんにちは、はいいけど、何なの、この団体は。早朝いきなり電話で来るとか無茶言って、断ってるのにこの人数で乗り込んでくるって何っ!?」
「ええっ!?」
 その他大勢は驚いて騒ぎ始めた。
「ちょっと、どういう事!?」
「まさか、説明もせずに乗り込んだのか!?」
 責められる主犯の男。俺はハルナちゃんをリビングに逃がし、もしもの時は警察を呼ぶようにと言っておく。騒がしい玄関に戻ると、男が問い詰められていた。そのほかは常識的な人達のようだから、警察沙汰までにはならないだろうけど用心は必要だ。
「えっと、後輩。これは何の団体さん?」
 見たところ被害者は五人もいる。知り合いばかりだとしても、ハルカさんは相手の名前も忘れているだろう。他人に等しい相手が詰めかけてきて、非常に迷惑だ。
「ええと、投資のプロが色々と教えてくれるって。本当に何も聞いてなかったんですか?」
「聞いてないって言うか、かかってきた電話はほとんど『うざい』って切ってた。同窓会で会ってからしつこくて、受信拒否したのに、それでも別の番号からかかってくるし」
「マジですか!? ちょっと、軽くストーカー入ってるじゃないですか!」
「よくわかんないけど、それ回収して。私がタダで教えるはずないでしょ」
 ハルカさんは腰に手を当て胸を張って言う。
「そういえば、もうお金払いました!」
 後半の言葉に、ハルカさんが愕然として加害者を見た。
「お前は詐欺師かっ。警察に突き出してしまえっ!」
 ハルカさんは激怒し男の人の膝を蹴る。
「と、とにかく回収するんで! 先輩のことだからメアドは変えてませんよね。後で連絡します。失礼しました」
 突然やって来た連中は、詐欺とか警察という言葉にビビって帰って行った。
 詳細は、後輩さんから来るだろう。
「ハルカさんが同窓会で散々だった理由がよくわかったよ」
 そりゃあ、あんなのがいたら怒るだろ。
 ハルカさんはポケットの携帯電話を手にして、履歴からトキさんに電話をかける。
「おい、コラ。今あの半ストーカーが、ストーカーの上詐欺師だと判明したぞ」
『ええ!?』
「責任持って対処するように。さっきの団体の中に、元デブの元委員長いたから、話しはあっちから聞け。私は二度と関わらん」
 それだけ言ってハルカさんは電話を切った。
「あんな男の口車に乗ってのこのこやってくるなんて、ホント信じられない。あれだけ突き放した姿を見てて、何があったら心変わりしたと思えるんだっ!?」
 ハルカさんは自分から動かない女だ。もちろん、身内のことは言われずとも動くし、アコちゃんのためならじいちゃんと殴り合いだってするだろう。
 他人でも、道ばたで困っている子供やお年寄りがいたら声をかける、心根の優しい人だ。
 でも、ほっといても自分でどうにかできる相手にはとことん冷たいのがハルカさん。
 それを、同級生なら知っていてもおかしくないのに。ある意味強烈な人だから、印象には残っているだろうに。
「ああ、むしゃくしゃする! ハルト、ハルナ! お昼は食べに行くよ! 買い物してやる!」
 ハルカさんはイライラしながら、いつもよりしっかりと戸締まりを確認した。
 ホームセキュリティには入っているし、ビデオついてるから、まあ滅多なことはないと思うけど、あんな事の後だと不安になるもんだ。金持ちだと思い込んでる人もいるらしいし。

backmenunext
誤字の報告はこのフォームからお願いします


魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

2008/10/03   推定家族   271コメント 5     [編集]

Comment

 

G1085   なるほど   2008/10/04   [編集]     _

同窓会で再会したトンデモ男がやって来た訳ですね。
しかも詐欺までやってる…サイテーやな。

マナ1086     2008/10/04   [編集]     _

ハルカさん強い……惚れなおしたよ姐さん。
あの男が逆玉狙ってる男? ハルカさんの好みの対極にいそうだけど。

しったら1087     2008/10/04   [編集]     _

勘違い(半ストーカー&詐欺)男ですか。。。迷惑な。。。ハルカさんだから毅然とした対応できてるけど、気弱な人ならどんなことになるか!
ま、ハルカさんだから「一波乱ありそうですなぁ」と楽しみにしていられるんだけどね♪

あれっくす1089     2008/10/05   [編集]     _

少女漫画では人気のある「強引な俺様男」ですね

とーこ1093     2008/10/05   [編集]     _

少女漫画だからこそですね。
現実ではたぶんDVに走るタイプで、それに騙されるマゾだと思う。
いや、少女漫画でもDV男と別れられないマゾ女が多い気がする。


Pass:   非公開:    

.

最新記事のRSS

.

更新履歴 カテゴリ コメント

.

.

拍手

.

リンク

.



.

.

.