白夜城ブログ

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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

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3

 朝、いつものように訓練場に行くと、嫌な男達を見つけた。
 あの王子様とお供の、サディストコンビである。
 不気味なだけの姫様と違って実害があるから皆に怯えられている。
 クーデターでも成功したら真っ先に殺されそうな連中だ。逆に姫様は同情を買って生かされそうな気がする。なにせあの傷である。
 その二人は、私の隣で姫様だぁとか浮かれているゼクセンに目を付けた。ゼクセンはあの王子様を見るのは初めてである。
「なぜ女がいる!?」
「男ですが脱がせますか?」
 いつもの反応にいつもの答え。
「脱がせろ」
 初めての反応に、私はちょっとドキドキした。男の子の服を──女の子のように可愛い美少年の服を無理矢理脱がせる。なかなか体験できないだろう。はりきってしまう。
「こらこらこら、いたたまれないからやめなさい」
 滅多に顔を出さないうちの騎士団長のホーニス様が止めに入ってくれてしまった。白髪交じりでヒゲで温厚そうなナイスミドルである。実はちょっと憧れている。あんな人が父親だったらいいのにな、という憧れだ。たまに人を使いっ走りにするところがなければ完璧なのだが、欠点があった方が人間らしい。でも私にとっては迷惑な欠点だ。
「殿下、彼は男の子ですよ。なあ、みんな」
 こくこくこくと頷く一同。
 シャワールームで彼は全裸になるから。私が目を向けると挙動不審になるから見ないと約束しているけど。
 王子様は私が手を止めるとなぜか舌打ちした。ゼクセンは彼らの嗜虐心をそそるタイプなのかもしれない。
「そういえば王子様、何かご用ですか? 姫様は見ていませんよ」
「グラのことは関係ない。今日から僕はこちらに異動だ」
 うわヤなのが来た。絶対に私たちは虐められる。どうしよう。
 などと考えていると、先輩方がなぜか短剣やらを地面にばらまき始めた。何だろうかこの私に使いなさい的行動は。自分の身は自分で守れということか。しかしそれは死ぬぞ。
「ギルネスト殿下、私は初耳ですが」
 団長が不愉快を隠しきれずに少し棘のある口調で言う。
「今朝決まった。異動の時期に忙しくしていたからな」
 普通は団を変わる事なんてない。
 団は派遣される地方が決まっていて、共闘することもほとんどない。しかもこれから寒くなり、南に派遣される彼が元いた青盾の騎士団はうらやましがられる立場にある。
 そこからわざわざ一番いい時期に移動するとは理解に苦しむ。
「ようやくあの重い盾から解放される」
 シンボルの盾がいやだったようだ。
 私達が所属するのは気候的には中間の白鎧の騎士団。寒いし暑いが、極端ではないので比較的過ごしやすい。
 一番過酷なのは赤剣の騎士団。雪の多い地方のため、穴が見つけにくく、雪かきというよけいな作業も待っている。
 平均すれば白鎧は恵まれているが、どうせなら春になってから異動を希望すればいいだろうに、彼はすっかり白騎士様仕様になっている。
 悔しい事に美形の彼らにはものすごくよく似合う。世間には白騎士様と呼ばれるだけあり、白が基調の制服だ。銀の兜が元となっている紋章は、おそらく青盾よりも似合っているだろう。白鎧には美形が多いと言われるのは、その制服によって実際よりもよく見えるのが原因だとも言われている。白とは一定レベル以下の男をより不細工に見せるが、一定レベル以上の男は美男子に見せる力がある。
 どこぞのマダムのご機嫌取りにかり出されることもあるため、実際に美形はここに入れられる。ゼクセンも文句なく白騎士向きだし、私も女なだけあって顔の作りも小さいし、痩せているが悪い方でもないだろう。たぶん。もう少し太ったら可愛い女の子になれるのだと、自分だけは信じてあげたい。
 さらにこの三つの騎士団を束ねる統括とかもあるらしいけど、そこのシンボルと制服はいまいちと有名で、それを嫌って昇進を嘆く者もいるらしい。私には関係ないからよく知らないけど、王子様にはモロ関係があって、似合わなさそうだ。将来は昇進しなくてはならないだろうから、可哀相に。今だけでも格好いい制服を身に纏うといいさ。
「誰か遊んで欲しい者はいないのか。いないのか。そうか。ではそこの貧弱なお前」
 指を指されなくとも分かるほど、貧弱なのは私しかいない。せっかく似合うと心の中で褒めてやっていたのに、失礼な王子様だ。
「魔術師らしいな。治療術はなかなかの腕前のようだが、他はどれほどか知りたい。相手をしてやる」
 普通の相手なら言葉の通りとも取れる。騎士の中でなら魔術の腕は一番だ。治療術が得意なのだから、おそらくかなり期待されている。昨日のでよけいに期待された。重傷者を癒せるのは、自分たちにとっても命に関わるのだから期待するのは当然である。
 しかしこいつは違うだろう。
「あの、ホーニス様? どうすれば……」
「ん、君の実力が知りたいようだから、何をしても構わないのでは? 基本能力が知りたいようだから、わざわざ慣れない事をするのは、かえって失礼だろう。ルーフェスらしくやるといい」
「じゃあそうします。あ、今日は足が痛むので浮いてますね」
 空を飛べる者は世界でも数少ないだろう。小手先の術は得意だが、他の派手な魔術──火を出すとか光線を出すとかは苦手だ。苦手というか、私は初歩の初歩しか出来ないので、そういう事は王子様の方が確実に上だろう。彼は攻撃魔術の火力だけなら国一番らしい。
 このような戦闘の時にどちらが有利かというと、それはもちろん私である。もしもの時は空に逃げられるからだ。
 はいいが、王子様じっと私の足元を見ている。
「たまにせがまれるのですが、飛びたいのでしたら可能ですが」
「誰がそんなことを言った。空を飛びたければ竜に乗る! いいから剣を構えろ」
「はあ」
 竜に乗れるのだ。竜騎士というのも格好いい。本当にもったいない王子様だ。性格が普通なら完璧なのだが、残念だ。
「では」
 さりげに点々と置かれたナイフやらが浮き上がる。さすがに二人はぎょっとして周囲を見回す。
「なんだこれはっ!」
「剣を構えました。他人が落とした剣は私の剣です」
「ふざけるなっ!」
「これが私の飾らない攻撃手段です。穴を埋めるとき、爆薬を奥に運べて便利ですよ」
 当たり前なのだが、さすがに臆している。炎を出したりする場合、多少の時間がかかる。私のは常に発動しているから、ほとんど時間差がない。
「ギルネスト殿下、彼を相手にするときは、周囲の小石まで拾ってからにした方がよろしいかと」
 団長が親切に教えた。
 まったくもってその通り。もしくは対魔術装備で固めてくるのが有効的だ。その時は上から魔術の干渉を受けていない状態の物を落とせばいいのだが、実戦では落として相手が大けがをする大きな石や刃物がそこらにころころと転がっていることはあまりない。が、今の彼らはそんな事を考えている余裕もないだろう。
「ふ……」
 何かを悟ったのか諦めたのか、王子様は髪をかき上げる。泣きほくろのせいか、その仕草はとってもセクシーだ。きっと女性を取っ替え引っ替えにしているに違いないと思わせる色気がある。姫様も普通だったら、男を手玉にする色っぽいお姉さんだっただろうに、もったいない。
「まあ、魔術師としての実力はそこそこのようだな」
 王子様は取り繕うように言う。大人の男性に対してなんだが、ちょっと可愛い。
「以後、この僕が有意義に使ってやるから覚悟しておけ」
 などと格好付けながら逃げた。
 活躍できるのなら別にいいが、雑用だったらちょっと嫌だな。


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7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

2008/01/19   詐騎士   27コメント 0     [編集]

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