白夜城ブログ

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 用意されていたメモ書きとカレー。
『同窓会に行ってくる。サラダは冷蔵庫の中』
 などといういつものメールと大差ないシンプルなメモ書きと、チキンカレーとミモザサラダが準備されていた。
「ハルカさんでも同窓会に行くんだ」
「トキさんが連れて行ってくれたんじゃないかな。ハルカお姉ちゃん、自分じゃ行かないと思うし」
「そっか。自分からは行かないよな。自分だけだったら家でごろごろしてるよな」
 それでこそハルカさんらしい。ハルカさんは家でだらけているのが、じつにハルカさんらしいのだ。
 俺とハルナちゃんは、そんなハルカさんのだらだらぶりで話を弾ませながら夕食の支度をする。カレーを食べ始めると、今日あった出来事などを聞いたり、ハルナちゃんの友人の話を聞いたりした。それによると、俺は下級生からけっこう人気らしい。妹みたいでかわいいのだが、線引きを間違えた子は逆にうっとうしい。なので下手に可愛がれないというジレンマ。
 その点、ハルナちゃんは遠慮なく可愛がれる。可愛いし、おしとやかだし、妹として大満足だ。髪質や顔の輪郭とか目元とかの、似ていると感じやすい部分がとくに似ているから、他人ではなく家族って感じで、誰も冷やかさない。昔から妹に憧れていたから、ハルナちゃんはまさしく俺の理想の家族だ。
 食事が終わるとハルナちゃんが茶碗洗い、俺が風呂掃除をする。ハルカさんは風呂掃除嫌いだから俺らの仕事だ。コタツもそろそろ暑くなってきたから片付けないといけない。しかし最近は土日に雨が降るので、なかなか布団を干せないのだ。梅雨までほっとくなと思うけど、こういうのはずるずると出しっぱなしにしてしまう。ハルカさんがよくごろごろしているからよけいに。
 ほんと、ランニングを着て電気の入っていないコタツで寝ている意味がわからない。
 干すと言えば、現在洗濯物も干しっぱなしだった。洗濯物を取り込み、当たり障りのないものだけたたむ。
 さすがにハルカさんの下着とかはハルナちゃんの前では気が引ける。ハルナちゃんは下着だけは部屋で干しているらしい。ハルカさんは俺に触られても気にもしないみたいだけど。
 ハルナちゃんのは可愛い上下セットの奴みたいだが(ハルカさんと三人の買い物に付き合っただけだ)、ハルカさんは一番身体に合う特定のメーカーが安売りしていると買ってくるらしくて、かわいらしさとか、色気とかはあんまりないけど、やっぱり目の前にあると気になる。
 ハルカさんスタイルだけはいいのだ。ハルカさんには暇と金があるから、色々なトレーニング用の器具がある。スタイル維持のためなら出費は惜しまないようで、高いのもけっこうぽんと買う。それが趣味部屋の片隅においてあり、俺もハルナちゃんも利用している。ハルナちゃんはけっこう熱心だ。物置になっている一階の和室には、また別にいろいろとあり、上に残っているのはお手軽で、ながら運動ができて、有効だったものらしい。
 風呂が溜まるとハルナちゃんが先に入る。女の子が男の後は嫌だろう。いつもはハルカさんが一番風呂で、何やらいろいろと自分で調合したものを風呂にぶち込んでいるが、今日はいないので普通に入浴剤を入れただけ。
 風呂が終わるとリビングで互いに予習復習にいそしみつつ、ハルナちゃんの勉強をついでに見る。他人に教えると、自分の理解も深まるので時間は無駄らにならない。教科書は数年でも内容がけっこう変わるので、ちょっと新鮮な気分になる。
 目が疲れてきた頃、コーヒーを入れてテレビをつける。くだらないバラエティ番組しかやっていないが、くだらないなりにぽーっとすることで疲れが取れる。
 そんな風に時間を過ごし、再び勉強に取りかかった頃、玄関が開く音がした。
「ハルカさんだっ」
 立ち上がり、母親を待っていた幼子達のようにドタバタと玄関まで出迎えると、酔っぱらってへろへろになったトキさんを重そうに支えるハルカさんがいた。
「ちょ、大丈夫?」
「ソファにでも運んで。こいつんち、今は女の人しかいないから、自力で動けるようになるまで寝かせとく」
 トキさん、どんだけ飲んだんだ。どんだけ飲まされたんだ。
 ハルカさんは普段から飲まないし車で行ったからしらふだろう。ハルカさんは流されない人だから。
 俺はハルカさんからトキさんを受け取って、ハルナちゃんと引きずりながらソファに寝かせた。すでに意識はなく、すーかーと寝息を立てている。ごーがーでなくてよかった。
「ハルカさん、楽しかった?」
「最悪だった。こういう技術職だと、タダであれしろこれしろ教えてくれってウザイ。こんな大きな家に住んでるから逆玉狙って声かけてくる馬鹿もいるし」
 ハルカさんはピリピリしている。本当に嫌なことがたくさんあったようだ。
「でも、お金持ちの娘であることは本当だしね。ハルカさんが親の物は親の物って考えてるって知らないと、勘違いが寄ってきそうだね」
「その金持ちの時点で勘違いなの。
 うちは宝くじで当てた金を使って一括払いしただけだってーの」
「…………宝くじって……一等?」
「なんかキャリーオーバーしててすごい金額だったらしいね。正確に知らないけど、余った分はここの固定資産税と老後の介護付きマンション購入資金に消えるんだって。だから私に入ってきたのは、お小遣いの十万だけ。パソコン買ってもうないけどね!」
 ハルカさんはピアスやらなんやら外して机に置き、トキさんがまとめただろう髪をほどく。
「ああ、何か懸賞の当たりが欲しいなら、母さんが帰ってきた時に言うといいよ。かなりの確率で当たるから」
「おばさん、強運の持ち主?」
「懸賞とかはよく当てたよ。ただ、あそこまで高額はもう二度と無いだろうね。おかげで自分の老後だけを心配してればいいから助かるよ」
 若干二十四歳で老後の心配をするのもどうかなぁと思うが、先の見えない世の中だからこそ、蓄えは必要だ。
 ハルカさんの場合、日本円だけじゃなくて色々と蓄えてそうだし、人生計画はきっちりしてそう。

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2008/10/01   推定家族   269コメント 8     [編集]

Comment

 

とーこ1078     2008/10/02   [編集]     _

たまにいますよね、何かに当たりまくる人
うちの母……
ここまで凄くないけれど、10万ぐらい当たって当然的な人
私、3000円でトントンになってはしゃぐ人

さるぼぼってお守りで可愛くて大好きです
しかも宝くじって書いてあった

G1079   一度で良いから…   2008/10/02   [編集]     _

キャリーオーバー4億円。いってみたいなぁ。
と、買いもしないでぼやくアホ>私

買わなければ当たらないけど、買っても当たらないのが宝くじ。

追記
当たれば人生デラックス♪ と売り場で聞こえる度に『外れりゃ人生ベリチープ♪』と返したくなる今日この頃。

ma1080     2008/10/02   [編集]     _

久しぶりのハルカさんが相変わらずなんかかっこよくて嬉しいです。

宝くじ…300円しかあたらず。まだ競馬の方が当たります。今は買わずにいつも一億あったら何しようかと想像だけして楽しんでます。

ma1081     2008/10/02   [編集]     _

さるぼぼ・・・。
顔を書き足したくなるのは私だけ?

-1082   管理人のみ閲覧できます   2008/10/02   [編集]     _

このコメントは管理人のみ閲覧できます

-1083     2008/10/02   [編集]     _

>ランニングを着て電気の入っていないコタツで寝ている
気持ちはわかる。とてもよくわかる。

-1084   管理人のみ閲覧できます   2008/10/03   [編集]     _

このコメントは管理人のみ閲覧できます

1088     2008/10/04   [編集]     _

自分の姉がそうだなぁ。ただ何でも当たり過ぎて今裁判員制度のやつに選ばれそうで大変そう。運が良すぎるのも考え物。


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