白夜城ブログ

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 四区のお城は、中も薄暗い。
 暗いところが好きな人にとっては、落ち着く環境だ。前が見えないほど暗くはないから、ノイリが歩き回るのに支障はない。
 闇族の女性に案内されて、客室に通される。待っているとすぐにユーリアス達が来た。
「こんにちは、ユーリアス」
「お久し振りです、エンダー殿。ニアス殿にラクサ殿もご健勝のようでなにより」
 彼はいつもよりも着飾っているように感じた。装飾品が多いのだ。エンダー達もいつもよりかは着飾っている。ラクサは男物のような服を着ているが、腕輪や首飾りを付けている。
「弟君達は息災か」
 ニアスの言葉にユーリアスは少しだけ目を泳がせた。
「おかげさまで、テルゼ殿によくなついております。昨日から城の外に連れ出されているようですが」
 ニアスが頭を抱えた。
 テルゼはノイリが一番最初に見た魔族。ニアスの友人で、ティリスの弟。とても変な魔族の青年。
「も、戻ってきていないと?」
「今日戻るとは言われていたのですが……。
 自分から外に出るなど、環境の変化とはこれほど行動範囲を変える物なのかと驚いています」
 あれほど外に怯えていたのに、すっかり開放的になっている。開放的になりすぎではないかと思うほどに。
「心配ではないのですかっ!? あれに連れ出されて!」
「生きて帰ってくれば問題ありません。
 突発的な行動ですから、あの子達に害意がある者がいたとしても、テルゼ殿をどうにか出来る者を動かすのも難しいでしょう。
 テルゼ殿のいる時に、弟たちをどうにかして利を得る者などいないのもあります。
 下手な行動は、他区の介入を許す口実となり、それは彼らにとって一番避けなければならない事です。
 だから、テルゼ殿と遊んでいる分には、安全です」
 つまり、他区の王弟がいるから安全なのだ。
 王弟が連れ出して何かあれば、テルゼに何かあれば責任を取れと、二人だけに危害が加えられれば、責任を取ると口を挟む事が出来る。
「怪我の一つもされてくれたなら、こちらにとっては有利に事が運ぶのですが、並の人物ではそれすらも難しいでしょう。あれでも私の弟ですから」
 ユーリアスはまだ子供なのにとても強いのだ。だから弟のローレンが強くてもおかしくはない。
「本当に、エンダー殿には感謝しなければなりません。あの子達があれほど活発になる日が来るなど、思いもしませんでした」
「うーん。効果が出すぎてすまなかったなぁ」
「いえ、本心です。家に引きこもっているよりはよほどいい。
 あの子達もテルゼ殿がいなければ危険である事は理解しています。危険でない状況があると知ってくれた事が嬉しいのです」
 ユーリアスは本当に嬉しそうだ。こんなに嬉しそうなユーリアスは珍しい。
 彼は苦労しているから、神様のご褒美に違いない。

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2008/08/25   窖のお城   234コメント 2     [編集]

Comment

 

G868   う~ん   2008/08/26   [編集]     _

いいお兄ちゃんだなぁ…

しったら870     2008/08/26   [編集]     _

よかったね、ユーリアス♪


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