白夜城ブログ

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 ノイリと同じほど痩せている闇族の子供達。闇族は天族ほどではないが痩せている。彼らは痩せているが、闇族としては平均的な体格だ。
 見た目は子供らしい子供。しかしにこりとも笑わず、暗い目をしている。
 五区の子供達のような生気がない。
 怯えてはいないが、警戒しているのは誰が見ても明らかだ。
「ルーシア、ローレン、見た事がないからと、ノイリに警戒する事はない。馬鹿らしいから」
 ユーリアスが小さな姉弟を諭す。
「ここの方々は、少なくとも無抵抗の者を顔色一つ変えずに殺しはしない。四区の者とは違う」
「そうでしょうとも」
 姉のルーシアが小さな声で言う。
「隣接しているのにこれほど体制に差があるのは、とてもおかしな事だけれど」
「本当に、明るくて綺麗な国」
「明るいわね。四区はこれほど明るくできないわ」
 他の場所はもっと暗かった。ただの住民の好みではなく、この街が特別なのだ。一区の都はここと同じほど明るかったから、特別な街の一つなのだ。
 四区は貧富の差が激しいとユーリアスに聞いていた。コアトロが一番お金持ちで、国も操っていたと。
 だから傀儡の父を殺した。何も知らぬ振りをして、ただ残虐な子供として。
「お菓子、とっても美味しいです。食べてみてください」
 二人の緊張をほぐそうと、美味しいお菓子をすすめた。小さな闇族達は顔を見合わせ、長兄を見た。
「食べても構わないし、食べなくてもいい。これから畑に行って試食もさせていただくから、ほどほどにな」
 ユーリアスは菓子を一つ口に含んで、姉弟達に笑みを向けた。二人はそれを見て顔をしかめる。
「申し訳ありません。毒味役がいて当たり前の生活をしているものですから」
 ユーリアスがエンダーに謝罪する。
 毒味役がいるなど、悲しい事だ。
「わかっておるよ。今の四区ではしかたがない。
 ルーシア、ローレン、わしのために出される物は、信頼できる者しか触れておらん。勘の良い者が揃っているから、四区の者が紛れ込む事は出来ぬ。安心してお食べなさい」
 二人は顔を見合わせて同じように笑う。
「いただきます」
 二人は菓子を一つ口にし、二つ目を手に取ろうか迷っていた。
「遠慮することはないぞ」
 それでも二人は迷っていた。口に合わなかったのを、無理をして食べようとしているようにも見えた。
 それを見てユーリアスがエンダーへと問う。
「エンダー殿、これはノイリ用の菓子ですか」
「ああ。女性向きのだ。ノイリでも四つは食べられる」
「じゃあ、お前達も安心して食べるといい。あまり太らない菓子だ。天族は太ると死んでしまうからな。お前達よりも慎重に体重制限をしている。倍食べても大丈夫だ。もちろん、これから美味い果実も食べる事になるから控えておいた方が良いけれどな」
 姉弟は嬉しそうにもう一つだけ菓子を食べた。
 闇族は痩せた空を飛ぶ種族だ。太りすぎては飛べなくなるのは容易に想像できる。命を狙われていては、それが命取りだ。
 ノイリも安心して美味しい物を食べられる喜びは知っている。
 二人の顔に浮かんだわずかな喜びの色が、ノイリは我が事のように嬉しかった。
 美味しい物は大切な生き甲斐だ。

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2008/08/13   窖のお城   223コメント 4     [編集]

Comment

 

-821     2008/08/14   [編集]     _

ユーリアスさま、いいお兄ちゃんだな☆

G822   むぅ…   2008/08/14   [編集]     _

かなり剣呑な生活送ってきたんだな…このコ達

迷い仔猫823     2008/08/14   [編集]     _

ううん。同族が居るみたいで嬉しいんだろうな。
でも食事に気をつけなければいけないなんて・・・不幸だ。
毒見役が居るってことは、美味しいものを好きなだけ食べられないってことだし。

しったら824     2008/08/15   [編集]     _

ユーリアスはヘタレなイメージだったから、
いいお兄ちゃんぶりが新鮮だ(^^)


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