白夜城ブログ

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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

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 一区から帰ってきて、たくさん遊んだ。
 街の子供達ともたくさん遊んだ。
 今日は鬼ごっこをした。獣族や竜族相手だからすぐに捕まって、地面に書かれた円の中にばかり入っていたけど、鬼に捕まらないうちに円を消すと外に出られて、ノイリ救出ごっこが子供達の間で流行った。
 あらかじめ聞いていたエンダーの仕事が終わる時間が迫ると、皆と手を振りお迎えの竜族と一緒に帰る。なぜか迎えはいつも竜族だ。
「今日は楽しかったかい?」
「はい、マウルさん。とても楽しかったです。地上でも、よく小さな子とああいう風に遊んでいました」
 彼らがどうしているのか、気になるがそれはエンダーにも分からない。ノイリがいた場所は四区に掛かる場所。しかも、治安の悪い地域が近くにあるらしい。
「他の区では、どんな遊びがあるんですか?」
「ここと変わらない遊びもあれば、怒鳴り合うだけの変な遊びもあるよ。ちょうどユーリアス様が尋ねておいでだから、聞いてごらん。まあ、四区の王族じゃろくに遊んだ事もなさそうだけれど」
 四区は五区に比べると厳しいところだ。貧富の差があり、犯罪も多く、王族にあまり自由はない。
 ノイリにも自由はなかったから、聞かれて困る事があるのは分かっている。
 地上にいたとき、周りの小さな子供の方が物をよく知っていた。いつも一緒にいた女の子は、自分がすべて知っていれば、ノイリが知る必要はないとすら言っていた。それには意味があり、ノイリよりもノイリの立場をよく知る子だった。
 まだ小さい子なのに、とてもしっかりしていた。ノイリに付き合って、あまり食べない痩せた小さな子。
 思い出して落ち込みそうになったので顔を上げると、知っている『襟』が前方にある店の前に置いてある樽の影に見えた。
「あ、ヘイカーさんのエリだ」
「ちょ……尻尾や耳を隠し忘れる奴は今まで何人も見てきたけど……」
 マウルが少し呆れて呟いた。
 ヘイカーの襟がはみ出ている姿がとてもおかしくて可愛いかった。
「ヘイカーさん、どうしたんですか? お腹が痛いんですか?」
 ノイリは樽の影にいる彼に声を掛けた。
「あ、いや、落とし物を」
「私も探します」
「いや、見つかったからもうよろしい」
 ヘイカーはこほんと咳払いをする。
「ヘイカー様、人の楽しみを奪いに来たんですか? 今日のノイリ当番は俺なんですよ」
「いい年した大人が口を尖らせているのではありません」
「いいんですか、四区王がおみえなんでしょう」
 今日はユーリアスが来ている。いつものように一泊して帰るのだ。
「若いお嬢さんもいらしているから、ノイリを迎えに来たのですよ」
 若い女性。リムメルが思い浮かんだ。
「じゃあ、なんで隠れてたんすか」
「癖です」
 変な癖だ。ヘイカーの種族の習性の可能性もあるので、ノイリは口にしない事にした。
「ユーリアス様が弟君と妹君を連れておいでです」
 弟と妹のことは噂に聞いていたが、まさか四区を出てくるとは思わなかった。
「ユーリアス様のお手伝いですか?」
「いいえ。狙われておいでだからですよ。残してくるのが心配なのでしょう。最近はとくに動きが目立つようになっているそうです」
 驚いてノイリの翼がはねた。
 まだ子供なのに、狙われている。ユーリアスの弱点だから、狙われているのだ。
 ユーリアスは四区を変えようとしていて、変えて欲しくない者にとっては彼が邪魔だから。
「エンダー様は、ユーリアス様と交換条件で技術の支援を決めたのですよ。五区は実りを豊かにする技術の最先端を走っておりますからな」
 ヘイカーは誇らしげに言う。それはノイリも聞いていた。見返りに四区で多く取れる鉱物の輸出を優遇してもらう。
「豊かになるのはいい事なのに、どうして嫌なんですか?」
「全体が豊かになっては、自分に回ってくる豊かさが減るのです。今がいい者にとって、他人の動きは目障りなものなのです」
 独り占めするために、他の人を排除する者がいるのはノイリも知っている。小さな子供でも、独り占めするために暴力を振るう子もいた。
「そんなことで狙われるなんて、可哀相です」
「だから一緒にお慰めいたましょうぞ」
「はい」
 ユーリアスの数少ない大切な者達。ユーリアスは大切な者達のためにこそ、実の親も殺したのだ。
 小さな子では、きっと恐ろしい毎日だ。だから、気晴らしはきっと必要なのだ。

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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
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2008/08/11   窖のお城   221コメント 2     [編集]

Comment

 

G.G.817     2008/08/11   [編集]     _

ヘイカーさんw

そういや、タイトルに「窖のお城」がなかったので、どの作品か一瞬わかりませんでした。できたら修正してもらえると助かります。

G818   る~ちゃんは…   2008/08/12   [編集]     _

>いつも一緒にいた女の子は、自分がすべて知っていれば、ノイリが知る必要はないと言っていた、ノイリよりもノイリの立場をよく知る子だった。まだ小さい子なのに、とてもしっかりしていた。ノイリに付き合って、あまり食べない痩せた小さな子。

…と、思われていたんですね。

今や王子様さえ手玉に取るいっぱしの詐騎士だよ~ン(^^)


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